印刷物をもっと「つくる」「使う」「残す」ことを支援する、ブライター・レイターのブログです。

2012年7月6日金曜日

書籍が電子化する時代の印刷会社の売上・利益拡大ポイント

昨日(7月5日)、東京ビッグサイトに「東京国際ブックフェア」と「国際電子出版 Expo」に行ってきました。iPadが日本国内でも発売された2010年にはまだ抽象的だったり使いにくそうに感じられた「電子書籍向けサービス」も、今回は具体的で「これなら使えるかも」という印象のものになっていました。ブログのタイトルには「書籍」と書きましたが、会場では雑誌や新聞の電子化、また電子化された雑誌・新聞をより魅力的にするためのサービスも数多く紹介されていました。

こうした状況の中、印刷会社が売上・利益を伸ばすために必要な取組みは何でしょう?広い会場を歩き回ることを通じて、「カスタマイズ」や「パーソナライズ」によって「個」のニーズを満たす以下の様なものが見えてきました:
  1. 原稿用データをデジタルコンテンツとして管理・活用するサービス
  2. 書籍印刷の小ロット・短納期対応力を高めたサービス
  3. 「モノ」としての魅力を高めた書籍を提供するサービス
  4. 書籍やデジタルコンテンツの販売促進サービス
これまでは、「印刷用データを電子書籍向けに変換する」というサービスの可能性も印刷会社にはあるのでは、という議論も行われてきたかと思います。しかし、今回の展示会を見るとこうしたツールがかなり揃ってきていることから、「データの変換」は出版社(あるいは新聞社)の側でも可能になっているように思います。つまり、印刷会社が「付加価値の高いサービス」として提供するのは難しくなってきているように感じました。

その一方で、「原稿用データをデジタルコンテンツとして管理・活用する」という事業機会が印刷会社に見えてきたようにも思います。電子書籍や電子新聞を紙媒体と同じようにスマホ・タブレットに表示するだけではなく、例えば廣済堂出版の NewsMediaStand (ニュースメディアスタンド)のように、読みたい新聞記事を長押しするとその記事を抽出した記事画面が表示されて読み易くなったり、大日本印刷(DNP)ブースのDNP電子新聞スタンドで展示されていたNewspaperDirectのように新聞記事を音読してくれたりする、アクセシビリティを高めるサービスが紹介されていました。

また、DNPブースでは「チェックインマガジン」として、カフェや電車内、空港、スタジアムなど「場所」を切り口として記事=デジタルデジタルコンテンツをまとめて雑誌のように提供するサービスコンセプトを紹介していました。この「場所」に時間や季節、自分の興味のあることなどの切り口をさらに加えてコンテンツを提供することができれば、ユーザー/読者にとって、また印刷会社の顧客にとって、さらに魅力のあるサービスになると思います。

こうした、コンテンツの制作に加えて管理・活用を支援するサービスを印刷会社が提供できれば、非常に付加価値の高いものとすることができると考えます。この時、印刷会社が持つ組版や編集のスキルを使うことで、IT系の会社との競合においても優位性のあるサービスを構築・提供できると思われます。

・・・と、「1. 原稿用データをデジタルコンテンツとして管理・活用するサービス」に触れただけなのに、すっかり長くなってしまいました。申し訳ありません。2〜4については、次回の記事でご説明したいと思います。引き続き、よろしくお願いいたします!