印刷物をもっと「つくる」「使う」「残す」ことを支援する、ブライター・レイターのブログです。

2024年4月1日月曜日

ブライター・レイター、コスパ・タイパ・サステナビリティの高い印刷物をご提案するAIを開発!

 注)必ず最後までお読みください

2024年4月1日、ブライター・レイターは、コスパ・タイパそしてサステナビリティの高い印刷物のデザインや仕様、使い方などを生成・ご提案するAI『印刷LLM(英語名:PrintingLLM)』を開発したことを発表します。

「デジタルマーケティングの効果・成果をもっと高めたい」「お客さまにより良い『体験』を提供したい」「コミュニティをもっと盛り上げたい」「人手不足を解消したい」「ステークホルダーとの一体感をもっと高めたい「コミュニケーション活動のサステナビリティを高めたい」といったことは、印刷物を活用することで実現できます。

しかし、こうしたことを「相談したい相手がなかなか捕まらない」「そもそも、誰と相談すれば良いか分からない」という方もたくさんいらっしゃるかと思います。ブライター・レイターはこの度、そうした方々向けに『印刷LLM』を開発いたしました。

印刷LLMは、マーケティングやコミュニケーションの目的や対象、期待されている成果、ご予算などを対話を通じてお伺いすることで、その目的の達成に適した、コスパ・タイパ・サステナビリティの高い印刷物のデザインや仕様、使い方などを生成・ご提案するAIで、24時間・365日、いつでもどこからでも使うことができます。

ご提案内容にご納得いただければ、印刷MMLからそのままご発注いただくことも可能です。もっと詳しくご相談したいという方には、最適な印刷会社様などパートナー企業様にお繋ぎいたします。

印刷会社様にも、ぜひご利用いただきたいと考えています。印刷LLMは、印刷会社様の強みを活かしたご提案内容についてご相談に乗ったり、Webサイトやアプリなどと連携することでネット上での営業力を高めたりといった、御社印刷サービスの価値をさらに高めるためにご活用いただけます。

現在は、チラシやポスター、DMといった種類を対象としていますが、今後はパンフレットやカタログ、雑誌、書籍などにも対象を広げていく計画です。また、様々な言語にも対応することで、グローバルな展開も視野に入れています。

現在、パートナー様と一緒に生成するご提案の精度を高めています。サービス開始時期が見えましたら改めて発表いたしますので、楽しみにお待ちいただければ幸いです。ただ、4月1日の発表ですので、実現できない可能性も十分に考えられます。ご理解のほど、何卒よろしくお願いいたします!


【ブライター・レイターについて】

ブライター・レイターは、印刷物をもっと「つくる」「使う」「残す」お手伝いをするコンサルティング会社です。代表 山下潤一郎は、印刷市場動向や新しい印刷ビジネス機会をご紹介する『印刷市場案内人』としても活躍しています。


2024年3月6日水曜日

ブライター・レイター『テーラーメイド型 drupa2024 視察ツアー!』のご案内

今年5月28日〜6月7日の11日間、世界最大の国際印刷機材展 drupa2024がドイツ・デュッセルドルフで開催されます。2016年から8年ぶりのリアル開催となるdrupa2024では、インクジェット機やAIを含むファクトリー・オートメーション、サステナビリティといった最新の印刷機材やシステム、考え方などが紹介されます。

ブライター・レイターは今回、「コロナ禍で大きく変容した印刷市場の今、そしてこれからを自分の目で確かめたい」皆さま向けに、以下のような『テイラーメイド型 drupa2024 視察ツアー!』を企画いたしました。ぜひご参加ください!


【対 象】

  • 会社あるいは個人でdrupaに行かれる印刷会社の方。
  • 自社ブース以外の展示をしっかり視察したい出展企業の方、など


【日 程】

  • 2024年6月2日(日)〜 5日(水):
    • 上記期間のうち、ご都合のよろしい日にご参加ください。
    • 1日だけの参加も可能、4日間フル参加も大歓迎!


【会 場】


【ツアーの特徴】

  • あなたのご都合・ご興味に合わせてdrupa会場をしっかり視察できるテーラーメイド型!
    • 1日だけでも4日間ずっとでもOK!日程もテーラーメイドで!!
  • ガイドは 印刷市場案内人 ブライター・レイター 山下 潤一郎!
  • コロナ禍で大きく変わった印刷市場の「今」と「これから」が分かります!
  • 現地(drupa会場)集合・現地解散!
  • 開催前の直前見どころレポート・ツアー後の報告レポート付き!
  • 最大5名/日 の少人数制!


【こんなあなたにピッタリ!】

  • 印刷市場の最新動向と今後の展開を知りたい!
  • 印刷の仕組みを「スマート化」するポイントを知りたい!
  • 専門家のガイド付きでdrupa会場をしっかり視察したい!
  • 飛行機やホテルは自分で手配したい!


【ツアー内容(予定)】

  • あなたのご都合・ご興味にあわせて、デジタル印刷機材・資材ブース、ソフトウェア・ソリューション関連ブース、サステナビリティ関連ブースなどを中心に視察します:
    • あわせて、IoTやAIなど新技術関連ブースもできるだけ視察。
    • 事前にご興味のある分野などお教えください。
  • 毎日、drupa会場に10時集合、drupa会場で17時解散:
    • 昼休みは1時間程度を予定。その他休憩時間は適宜取ります。
  • ただし、ツアー内容は展示内容などにより適宜見直します:
    • 早めにご相談いただけましたら、ご希望にあわせたアレンジも可能です。


【料 金: 10万円/日(お一人さま、税別)】

  • 料金に含まれるもの:
    • ツアーガイド料(10時〜17時)
    • ツアー時に使用する無線通信機材レンタル料
    • drupa2024 開催前 直前見どころレポート・報告レポート
  • 料金に含まれないもの:
    • 現地までの交通費(飛行機代、電車代、など)
    • 現地での宿泊費、食費
    • drupa入場料(各自で事前にお申し込みください)
    • ツアー中の事故などに対する保険料、など


【お申し込み締め切り】

  • 2024年5月31日(金)
  • 料金のお支払い:お申込み後2週間以内:
    • お支払いいただけない場合、キャンセルとさせていただきます。


【注意事項】

  • ツアーの日程や内容は変更することがあります。最新の状況はお問い合わせください。
  • 諸般の事情によりツアーが中止になることがあります。ご了承の上、お申し込みください。


お問い合わせからこちらからお願いいたします。皆さまのご参加、心よりお待ちしております! 

Copyright: Messe Düsseldorf/ctillmann


2024年1月4日木曜日

【2024年 提言】生成AIで印刷DXを進めよう!

明けましておめでとうございます。
旧年中も大変お世話になりました。本年も何卒よろしくお願いいたします。

また、この度の能登半島地震により亡くなられた方々に深く哀悼の意を表するとともに、被災された皆さまに心よりお見舞い申し上げます。

さて、昨年大きな話題となった「生成AI」、今年はそれを印刷DXに積極的に活用していくことをオススメします!

今年も、次々と新しい生成AIそして生成AIを活用したサービスが開発・提供されるでしょう。その多くは無料で試すことができ、大きな投資なしで導入することも可能になりそうです。できることもどんどん増えます。皆さんが注目されている制作部門に加えて、例えば、MISや営業管理システムなどと連携することで、営業やマーケティング、管理部門など、様々な部署のDXを進めることもできるでしょう。

現在、多くの企業が「生成AI」や「業務効率向上/DX」といった言葉に興味を持っています。そのため、皆さまが蓄積した生成AIの活用ノウハウを提供することで、既存顧客との関係を深めたり新規顧客を開拓したりすることもできるようになります。

その際、印刷物を提供するお仕事とは違った切り口から顧客企業の課題などを把握できることから、新しいサービス機会を見つけることもできます。また、生成AIの勉強会やその活用を支援するサービス、さらには生成AIにはこだわらない形で顧客の課題を解決するサービスなど、新しい収益源をつくることもできます。

生成AIに関する著作権や個人情報・企業秘密などに関する懸念・議論を追っていると、過去約20年間のインターネットをめぐる懸念や議論を思い出します。その間、インターネットでは様々な新しいサービスが立ち上がり、印刷ビジネスを含めて広く利用されるようになりました。生成AIもこの先、現在のインターネットのように、広く活発に使われるようになるかも知れません。

生成AIは、まだ使われ始めたばかりの新しい技術です。今なら、顧客や競合に先駆けて、生成AIについての理解を深めたりその活用ノウハウを蓄積することができそうです。

ブライター・レイターも、印刷会社さま向けの『生成AI勉強会』を企画しています。その勉強会では、生成AIの最新動向を紹介したり、生成AIを使ったDX手法を試したり共有したりする予定です。詳細が決まり次第ご案内しますので、少々お待ちいただければと思います。

今年も印刷需要の減少が見込まれるなど、厳しい市場環境が続きそうです。しかし、生成AIで印刷DXそして顧客のDXを進めることで、厳しい市場環境にマケズ、売上・利益を伸ばしましょう!ブライター・レイターとしても、全力で貢献する所存です。改めて、本年も何卒よろしくお願いいたします!


注)上記画像は、画像生成AI「Midjourney」で作成したものです。プロンプトは "two beautiful dragons, one is green and another is white, they are dancing together pleasantly" (2頭の美しいドラゴン、1頭は緑色でもう1頭は白、彼らは一緒に楽しくダンスしている)でした。

2023年10月19日木曜日

印刷業界視点からの Canon EXPO 2023 の楽しみ方!

2023年10月19日・20日の2日間、Canon EXPOが開催されています(会場:パシフィコ横浜ノース)。これは、「キヤノンの事業・製品・技術の実力および総合力を示す」こと、また「次のフェーズにおける、経営ビジョン、事業・製品・技術の方向性を示す」ことを目的とするイベントです。

Canon EXPOは通常5年に1度のペースで開催されますが、コロナ禍を受けて前回(2015年)から8年ぶりの開催となりました。18日に開催されたオープニングセレモニーには、御手洗代表取締役会長兼社長 CEO はじめ、同社CFO・CTO、中国・米国・欧州・日本など世界各地の統括会社 社長が揃って出席し、同社として非常に注力しているイベントであることが伺えます。



印刷(プリンティング)は、メディカル、イメージング、インダストリアルと並ぶキヤノンの4つの産業別グループのひとつで、今回のCanon EXPOでも以下のような来年発売予定の印刷機や研究・開発中の印刷関連技術などが紹介されていました:

  1. varioPRINT iX1700:商業印刷向けB3/ A4サイズ対応枚葉水性インクジェット印刷機
  2. Label Stream LS2000:産業印刷向け水性インクジェットラベル印刷機
  3. Super Color Management、など


1. varioPRINT iX1700:

varioPRINT iX1700は、ラテックスインクを採用した商業印刷向けB3/ A4サイズ対応枚葉水性インクジェット機で、解像度 2400 x 1200dpi、印刷速度 170枚/分(A4サイズ)・73枚/分(B3サイズ)となっています。

インク層が薄く用紙の風合いを生かせるラテックスインクや高解像度のプリントヘッドで高い表現力を実現できることから、商業印刷市場をメインターゲットとしています。また、最初は4色機としてのスタートですが、ヘッドが設置されている部分を見るとまだスペースがあることから、多色化の可能性もありそうです。

ところで、この機種はヘッドが設置されている部分の筐体が透明になっていて、中を覗き込めるようになっています。また、ジョブの内容などを入力・確認する操作用ディスプレイが付いていません。こうした進化が、操作性・作業性・生産性・働き方などにどんな影響を及ぼすのか(あるいは、及ぼさないのか)にも注目したいと思います。

なお、こちらのデジタル印刷機の発売日は2024年4月、想定価格は5,000万円(税別)、インク代など運用に関わるコストは未定とのことです。



2. Label Stream LS2000:

Label Stream LS2000は、varioPRINT iX1700と同じくラテックスインクを採用した解像度 2400 x 1200dpiのデジタル印刷機で、こちらはラベル市場をターゲットにしています。最大印刷速度は40m/分、最大印刷幅 340mm、CMYK+ホワイトの5色機です。色数については、こちらもインクジェットヘッド部分にはスペースがあって、今後の多色化も期待されます。

今月初め(10月3日〜10月6日)に開催された日本包装産業展 JAPAN PACK 2023でも、様々な環境に優しいラベル用基材が紹介されていました。そうした基材をLabel Stream LS2000で印刷することで、印刷会社は「より環境に優しいラベル」を生産することができるようになります。

こちらの機種は2024年8月発売、想定価格 5,000万円(税別)の予定です。


3. Super Color Management (SCM):

Canon EXPO 会場では、開発中の基盤要素技術 Super Color Management(SCM)も紹介されていました。SCMは、「人の目でみた時に感じる色」を再現する技術で、異なる出力機で異なる用紙に印刷しても、全て「同じだと感じる色」を再現できます。

会場には、様々な用紙を様々なプリンターで出力したものを組み合わせて1つのイメージにしたサンプルが展示されていました。また、その場でデザインしたチラシやカードを異なる用紙・異なるプリンターで出力して色が合っていると「感じる」デモも行われました。

この技術、印刷物だけでなく、Webサイトに掲載された商品の色を実際のものと「同じだと感じる」ように合わせたり、メタバース間でロゴの色を合わせたりなど、デジタルの分野も含めていろいろ使えそうです。どんどん妄想が広がります(笑)。実装される日が楽しみです。



他にも以下のような、印刷業界の皆さんの参考になる様々な展示がありました:

  • マーケティングコラテラルのデザイン制作支援ツール CAG (Collateral Auto Generator)
  • 印刷現場の可視化ソリューション
  • プリンター保守業務のDXソリューション
  • MREAL:現実空間にバーチャルのCGデータを実寸大に重畳する技術(Mixed Reality)、など
MREALは、実際にデジタル印刷機の開発にも使われているそうです。ご興味のある方はぜひそのあたりもお伺いしてください(私は時間がなくてお伺いできませんでした・・・)。

会場には、実際にその製品・技術を開発した技術者の方々も説明員としていらっしゃいますので、普段なかなか分からない機械や技術の中だったり裏側だったりのお話も色々お伺いできます。お時間がある方は、会場に足を運ぶことをオススメします。私も、次回がとても楽しみです (^ ^)

2023年9月19日火曜日

ジョン・レノンの手書き修正付きリリース . . . ジョン・レノン「ロックン・ロール」

 ロックンロールは絶対に死なない。なぜかって?とってもたくさんの人がそれを愛してるからさ - ジョン・レノン

1975年、ジョン・レノンは1950年代〜60年代初頭のロックンロールの名曲をカバーしたアルバム「ロックン・ロール(ROCK 'N' ROLL)」を発表しました。先の文章は、その発表時に配布されたニュース・リリースの冒頭に書かれていたものです。


このリリースは、ジョンが自ら書いたもの。ロックンロールそしてロックミュージシャンへの熱い思いが全編通して感じられます。また、ジョンのステージを1回だけしか見ることができなかった母親の思い出にも、胸を打たれます。

しかもこのリリース、ジョンが修正した手書きのメモが(タイプライターで打ち直されることなく)そのままプリントされています。そのお陰で、「あ、(偉大なアーチストのリストに)ボ・ディドリーを入れ忘れてた!」と慌てて追加した場面も目に浮かびます(笑)。文末の手書きサイン&自画像もとても良い感じです。


さて、この手書きのメモがリリースに残されたのは意図的なことだったのでしょうか?おそらく、「修正する時間がなかった」というのが理由だったのでは、と思われます。もともと4月発売の予定だったのが、急に2月へと前倒しになったようなので。

ただ、手書きメモが残されたことで、ジョンの文章の上手さと相まって、このリリースにはジョンの(雲の上のスーパースターな感じではなく)すぐ隣にいそうな人間っぽさが感じられます。特にロック好きには、すごい親密さも感じられるでしょう(笑)。

多くの場合、企業が発表するリリースには発売日や価格といった客観的な事実や、その製品・サービスの狙いみたいなものが書かれていると思います。しかし、この「ロックン・ロール」のリリースを見ると、もっと「エモい」リリースもつくれることがわかります。広報宣伝の皆さん、ぜひもっともっとリリースを進化させましょう!

いやぁ、プリントって本当にいいものですね!

2023年9月12日火曜日

壁に貼れる家具! . . . メゾン マルタン マルジェラ ウォールステッカー

今から30年くらい前、ミッドセンチュリー家具がブームになり、東京・中目黒や表参道などにオシャレな家具屋さんがたくさんできました。ちょうどその頃に社会人になったせいか、(プリントに加えて)家具にも興味も持っていたりします。一時期、家具のコレクションも考えましたが、部屋が狭いのですぐにその考えは捨て去りました(笑)。

ところで、フランスのファッションブランド メゾン マルタン マルジェラ(現在はメゾン マルジェラに変更)は2010年、『ドア』がプリントされたウォールステッカー(壁に貼れるステッカー)を発表しました。図柄は3種類で、どれもサイズは実物大。壁に貼ると、あたかもそこにドアがあるような「騙し絵(トロンプルイユ, Trompe-l'œil)」的なデザインです。素材は、壁に何度も貼ったり剥がしたりできるものになっています。

こちらの写真はそのウォールステッカーのひとつで、サイズは210cm x 84cmほど。2010年のミラノサローネ国際家具見本市で展示された際の記事を見ると、壁に自然に溶け込んでいるように見えます。また、ドア以外にもプリントされた「暖炉」などを見ることもできて、貼れる家具の様々な可能性を感じられます。



東京を拠点とするデザインスタジオ YOY がデザインした「キャンバス」という椅子もあります。これは、イスの絵がプリントされた伸縮性の高い布で木とアルミでできたキャンバス型のイスで、スツール、アームチェア、ソファの3種類があるとのこと。私も欲しいのですが、残念ながら持っていません・・・

プリントされた家具は、家具なのにそれほど保管するのに場所を取りません。ウォールステッカーはくるくるっと丸めて保管できますし、「キャンバス」も厚さ40mmです。販売する時の在庫スペースも、比較的少なくて済みそうです。


こうしたアイテムは、多くのショップや印刷会社などがプリントではなく「家具」を販売/製作できることを示しています。しかも、オリジナルの魅力的な「家具」を販売/製作することで、過度な価格競争からも脱却できます。もちろん家具以外にも、アイデア次第で販売/製作できるアイテムの幅もぐっと増やせます。ぜひ、色々挑戦してみましょう!

いやぁ、プリントって本当にいいものですね!


2023年9月5日火曜日

『漆塗り』というオーセンティックな加工 . . . 谷崎潤一郎「春琴抄」

文豪 谷崎潤一郎氏は、皆さんもご存知の通り、本の装丁にもとてもこだわる人でした。今回ご紹介する「春琴抄」(昭和8年, 1933年)もそのひとつ。特徴的なのは、ボール紙に漆を塗ってある表紙。見返しには贅沢に「鳥の子水揉紙」が使われていますが、漆塗りの表紙を楽しめるように、表紙の3分の1くらいにだけ見返し紙が貼られています。


「春琴抄」には『朱漆』バージョンと『黒漆』バージョンの2種類がありますが、朱漆バージョンは試作品で数十部程度しか発行されていないと言われています。表紙の題字は、写真が悪くて銀色に見えますが、蒔絵技法による金箔文字。この文字は、谷崎氏三度目の、そして最後の妻となる根津松子さんの手によるものです。


ところで、訪日外国人観光客向けのアイテムを開発・販売されている方もいらっしゃるかと思います。こうしたアイテムに「漆塗り」という加工をするのはいかがでしょう?「春琴抄」の事例からも分かるように、写真集やご朱印帳などのプリント/印刷物にも「漆塗り」加工することはできます。

漆塗りは、「玉虫厨子@法隆寺」「八橋蒔絵螺鈿硯箱(尾形光琳作)」など数々の日本の文化財にも使われている、とても「オーセンティック(authentic)」な手法です。日本観光のお土産としてぴったりです。

なお、今回写真でご紹介した「春琴抄」は、「朱漆」「黒漆」の両バージョンとも日本近代文学館が発行した復刻版です(朱漆版 1984年, 黒漆版 1974年)。復刻版といっても、複数のオリジナルの初版本を丁寧に研究し、帙や背なども含めて素材・手法などをできるだけ忠実に再現したもので、とてもステキな出来だと思います。


復刻版は今でも古書店などで入手することができ、しかも(こんなに手が込んでいるのに)あまり高い値段はついていませんので、機会があったら実際に手に取ってみてください。「漆塗りされた本も良いなぁ」とうっとりできること請け合いです(笑)

いやぁ、プリントって本当にいいものですね!