印刷物をもっと「つくる」「使う」「残す」ことを支援する、ブライター・レイターのブログです。

2014年6月9日月曜日

『クオリティー企業』という方向性

6月8日(日)の日本経済新聞に一橋大学教授 楠木建氏のとても面白いインタビュー記事が掲載されていましたが、皆さんは読まれましたでしょうか?この記事によれば、楠木教授は企業を2つに分類しています。

ひとつめは、「外部環境のオポチュニティー、つまり追い風をつかまえて成長するのがうまい」オポチュニティー企業。人口が増え、経済成長が著しい新興国で伸びている企業がそれにあたります。そして、もうひとつは「風は追わずに、優れた戦略で会社の中から独自の価値をつくり出す」クオリティー企業。こちらは、風を待つのではなく自分たちでエンジンをつくるタイプです。

ところで、こちらのブログ記事でも触れましたが、これまでの取材から日米の印刷会社は顧客に対して「新しさ」を訴求する傾向が強く、英国の印刷会社は「顧客にとってどんな意味や価値があるのか」を訴求する傾向が強いことが分かりました。楠木氏流の言い方を借りれば、日米の印刷会社はオポチュニティー企業型、英国の印刷会社はクオリティー企業型のような印象を受けます。

しかし、楠木氏は記事の中で、「米国はオポチュニティー大国。長いこと先進国としてやっているが、永遠の若者だ。移民政策によって人口が増えている点が大きく、特殊な国。日本がまねをしようと思っても難しい。」と述べています。とすると、日本の印刷会社は先に成熟した英国市場を参考にすることが必要になりそうです。

実は、英国市場はインターネット広告市場の広がりという点でも日本の先を行っています。広告費全体に占めるインターネット広告費の比率は、英国の32%(2012年)に対して、日本は16%(2013年)です。こうした状況にも関わらず、英国印刷会社はクオリティー企業を指向しています。これは、英国がクオリティー国家だからだと思われます。

楠木氏は、「日本は『クオリティー国家』を目指すべきだ」と提言しています。国内印刷会社にとって、成熟した印刷市場で売上・利益を伸ばすために、英国流のクオリティー企業を目指すという選択肢もありそうです。