印刷物をもっと「つくる」「使う」「残す」ことを支援する、ブライター・レイターのブログです。
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2013年2月21日木曜日

デジタル軟包装印刷サービスの事業機会とチャレンジ

昨秋開催された TOKYO PACK 2012 でも明らかになったように、消費者のエコ指向・低価格志向、生産側のコスト削減指向の結果、パッケージ市場において軟包装の存在感が高まっています(このあたりの分析については、こちらのブログをご覧ください)。こうした動向を追い風にしてデジタル軟包装印刷サービスを立ち上げ、拡大させるためにはどうすれば良いのでしょうか。

昨日、株式会社ビジネスコミュニケーション研究所の田中氏が講師をされたセミナーに参加したのですが、その内容を参考に「PB・OEM開発展 2013」の取材で見えてきた市場機会を以下のようにまとめてみました。


  • コミュニケーションのゴール:
    • 商品生産企業の活性化:
      • これは、地域活性化をイメージしていただければ分かり易いかと思います。パッケージを通じて商品自体の魅力を伝えることに加えて、その生産地の魅力やイベント情報などをお伝えすることで、印刷サービスの価値を高めることを目指すことです。
    • 商品販売企業の活性化:
      • パッケージを通じて、販売店の方々がその商品を売り易くなる、値引きしなくても売れるようになる、さらにはもっと売りたくなることを目指すことです。
    • 商品ご利用者の人付き合いの楽しみ向上:
      • パッケージの特徴のひとつに、利用の場所まで商品と一緒に運ばれることが挙げられます。そうした特徴を活かすことで、パッケージは商品をご購入・ご利用された方々の人付き合いを楽しくすることに貢献できます。
      • 例えば、旅行先のお土産や、ホームパーティなどへの手みやげ、あるいはお取引先へお伺いする際の手みやげなどでパッケージがひと工夫されていると、お渡しする際のコミュニケーションが活発になり、楽しくなります。こうしたご利用者の人付き合いの楽しみを向上させることを目指すものです。
    • これら『コミュニケーションのゴール』を印刷サービスに落とし込む際には、どれかひとつを選ぶということではなく、2つを組み合わせる(あるいは3つ全てを組み合わせる)ことも可能です。ゴールを組み合わせることで、よりサービスの価値は高まると考えられます。
  • メディアの選択・連携:
    • これは、上記のようなコミュニケーションのゴールに到達するために、パッケージ以外も含めたメディアをどのように選択し、また連携させるかを企画・提案・実現するサービスの機会になります。
    • この際には、フェイスブックやツイッター、LINEなどSNSとの連携、AR(拡張現実感)の活用、DMやチラシ、ポスター、フリーペーパーなど紙媒体との連携など、幅広い可能性を検討・提案することが求められます。
    • 図には「印刷物/Web媒体/その他媒体」と書きましたが、こちらのブログでご説明したような「ペイドメディア/アーンドメディア/オウンドメディア」といった切り口でのメディアの選択・連携も考えられます。
  • コミュニケーションの期間:
    • 消費者が店頭で商品を検討・選択する時間は非常に短いことから、瞬間的に消費者の心をつかむコミュニケーション力がパッケージには求められます。また、併せて継続的にその商品を購入していただくためのコミュニケーション力も求められます。
    • こうした瞬発力/継続的な力を、小ロット・多品種対応力を活かしたパッケージ、さらにはパッケージ以外のメディアの力も合わせて高める印刷サービスは、非常に価値の高いものだと考えられます。
    • 瞬発力/継続的な力を高める際には、商品自体あるいは生産企業・販売企業の『ブランディング』も重要となることから、ブランディングも印刷サービスに組み込むことが求められます。

このように、小ロット・多品種対応力(限定品生産力を含む)が高い印刷サービスを提供できることから、デジタル軟包装印刷サービスには大きな市場機会があると考えられます。ただ、こうした機会を実現するためには、例えばマーケティングの観点から以下のようなチャレンジも求められると思われます:
  • 印刷会社都合の最低発注ロットを無くすこと:
    • デジタル機によってグラビア印刷よりも最低発注ロットを少なくすることが可能になったと、「PB・OEM開発展」に出展されている印刷会社は訴求されています。しかし、その最低ロット数は必ずしも発注者の希望と一致しているとは限りません。
    • 例えば、『限定50個の特別なお茶のパッケージ』となると、対応していただくのが難しくなります。小回りの利いたサービスを提供できるデジタル印刷機を活かした、最低ロット数にしばられない印刷サービス、例えば『限定数100以下の商品しか販売しないという顧客のブランディングに貢献できる印刷サービス』の実現を目指していただければと思います。
  • 印刷会社都合の納期をもっと短くすること:
    • アマゾンや楽天などの利用が広まるに連れて、「注文した翌日には商品が手に届く」という期待が一般的に広まっています。最近では、宅配便の会社が「当日配送」にも力を入れており、さらに短納期化が進んでいます。こうした状況の中では、グラビア印刷と比較して短くなったとはいえ、およそ2週間の納期は長く感じられます。
    • 更なる短納期化には、印刷会社内のワークフローだけでなく後加工機自体の進化も求められる大掛かりな仕組みの変更が必要員なるかと思います。しかし、印刷・加工がサプライチェーン(あるいはコミュニケーションチェーン)のボトルネックにならないような仕組みを作り上げることは、印刷サービスの魅力を高めるために有効だと考えられます。

デジタル軟包装印刷サービスは、上記のようなチャレンジが残っていることも含めて、まだまだ発展する機会の大きな市場だと思います。私も引き続き、この市場に注目していきたいと思います!

2012年10月24日水曜日

ノベルティにおける「小ロット対応」「カスタマイズ/パーソナライズ対応」の進展

先週(2012年10月17日〜19日)、東京・池袋サンシャインシティ文化会館において第46回インターナショナル プレミアム・インセンティブショーが開催されました。会場では様々なノベルティが提案されていましたが、ここでも「小ロット対応」「カスタマイズ/パーソナライズ対応」の進展が主要なトピックのひとつでした。

例えば、カンロブースで紹介されていたオリジナルプリントキャンディ「プリキャン」は、「100粒の小ロットから!」キャンディの個包装をオリジナルデザインにするサービスです。プリキャンは1年ほど前にスタートし、企業はもちろん、個人でも結婚式で配るためなどに注文される方などがいらっしゃるそうです。

クレハブースでは、クレラップの箱の6面中5面をオリジナルのデザインにできるサービスが紹介されていました。そのサンプルとしては、JAバンクや大和証券・大和ネクスト銀行といった金融機関のものが多く目につきましたが、ミサワホームなどのものも展示されていました。このサービスは「最低ロットが10,020個」ということなので、こうした大手企業が中心となっているようです。

大洞印刷(岐阜・本巣市)のブースでは、1枚単位でクリアファイルを印刷するサービスが紹介されていました。この展示で興味深かったのは、印刷は1枚からできるのですが「注文はセットで」という提案されていたところです。ブースには、野球チーム向けの「20枚で1セット」という例が紹介されていました。これは、各メンバーの打席シーンやチーム全員での写真を使って「20枚のクリアファイルで1セット」を作るというものでした。また、「47都道府県で各1枚づつ」というセットも提案されていました。

フォトブックのように、パーソナライズされた商品の注文点数は1点あるいは数点程度になることが多いと思われますが、これでは注文単価が限られてしまいます。しかし、「セット販売」にすることで注文単価を高めることができます。パーソナライズの取組みの際には、こうしたマーケティング上の工夫も求められることが分かります。

ところで、こうしたカスタマイやパーソナライズの進展に伴って、印刷工程や機材が見直されているのも印象的でした。カンロブースのご担当者によれば、プリキャンのサービスを実現するに当たって印刷工程を非常に工夫されたそうです。また、クレラップの箱は通常グラビアで印刷されているのですが、オリジナルデザインのものについてはオフセット印刷で対応されています。大洞印刷でも、昨年末に導入したデジタル印刷機を活用することで、パーソナライズしたクリアファイルを実現しています。

ノベルティにおける小ロット対応やカスタマイズ/パーソナライズの対応の進展は、印刷業界にとって新たな事業機会です。しかし、この事業機会を実現するには、マーケティング上の工夫や印刷工程・機材の見直しなど、これまでとは異なる取組み = 「未来を破壊する」取組みを積極的に進めることが求められます。是非、「小ロット」「カスタマイズ/パーソナライズ」といったニーズの取り込みを通じて、「未来を破壊」していただければと思います。