印刷物をもっと「つくる」「使う」「残す」ことを支援する、ブライター・レイターのブログです。

2023年10月19日木曜日

印刷業界視点からの Canon EXPO 2023 の楽しみ方!

2023年10月19日・20日の2日間、Canon EXPOが開催されています(会場:パシフィコ横浜ノース)。これは、「キヤノンの事業・製品・技術の実力および総合力を示す」こと、また「次のフェーズにおける、経営ビジョン、事業・製品・技術の方向性を示す」ことを目的とするイベントです。

Canon EXPOは通常5年に1度のペースで開催されますが、コロナ禍を受けて前回(2015年)から8年ぶりの開催となりました。18日に開催されたオープニングセレモニーには、御手洗代表取締役会長兼社長 CEO はじめ、同社CFO・CTO、中国・米国・欧州・日本など世界各地の統括会社 社長が揃って出席し、同社として非常に注力しているイベントであることが伺えます。



印刷(プリンティング)は、メディカル、イメージング、インダストリアルと並ぶキヤノンの4つの産業別グループのひとつで、今回のCanon EXPOでも以下のような来年発売予定の印刷機や研究・開発中の印刷関連技術などが紹介されていました:

  1. varioPRINT iX1700:商業印刷向けB3/ A4サイズ対応枚葉水性インクジェット印刷機
  2. Label Stream LS2000:産業印刷向け水性インクジェットラベル印刷機
  3. Super Color Management、など


1. varioPRINT iX1700:

varioPRINT iX1700は、ラテックスインクを採用した商業印刷向けB3/ A4サイズ対応枚葉水性インクジェット機で、解像度 2400 x 1200dpi、印刷速度 170枚/分(A4サイズ)・73枚/分(B3サイズ)となっています。

インク層が薄く用紙の風合いを生かせるラテックスインクや高解像度のプリントヘッドで高い表現力を実現できることから、商業印刷市場をメインターゲットとしています。また、最初は4色機としてのスタートですが、ヘッドが設置されている部分を見るとまだスペースがあることから、多色化の可能性もありそうです。

ところで、この機種はヘッドが設置されている部分の筐体が透明になっていて、中を覗き込めるようになっています。また、ジョブの内容などを入力・確認する操作用ディスプレイが付いていません。こうした進化が、操作性・作業性・生産性・働き方などにどんな影響を及ぼすのか(あるいは、及ぼさないのか)にも注目したいと思います。

なお、こちらのデジタル印刷機の発売日は2024年4月、想定価格は5,000万円(税別)、インク代など運用に関わるコストは未定とのことです。



2. Label Stream LS2000:

Label Stream LS2000は、varioPRINT iX1700と同じくラテックスインクを採用した解像度 2400 x 1200dpiのデジタル印刷機で、こちらはラベル市場をターゲットにしています。最大印刷速度は40m/分、最大印刷幅 340mm、CMYK+ホワイトの5色機です。色数については、こちらもインクジェットヘッド部分にはスペースがあって、今後の多色化も期待されます。

今月初め(10月3日〜10月6日)に開催された日本包装産業展 JAPAN PACK 2023でも、様々な環境に優しいラベル用基材が紹介されていました。そうした基材をLabel Stream LS2000で印刷することで、印刷会社は「より環境に優しいラベル」を生産することができるようになります。

こちらの機種は2024年8月発売、想定価格 5,000万円(税別)の予定です。


3. Super Color Management (SCM):

Canon EXPO 会場では、開発中の基盤要素技術 Super Color Management(SCM)も紹介されていました。SCMは、「人の目でみた時に感じる色」を再現する技術で、異なる出力機で異なる用紙に印刷しても、全て「同じだと感じる色」を再現できます。

会場には、様々な用紙を様々なプリンターで出力したものを組み合わせて1つのイメージにしたサンプルが展示されていました。また、その場でデザインしたチラシやカードを異なる用紙・異なるプリンターで出力して色が合っていると「感じる」デモも行われました。

この技術、印刷物だけでなく、Webサイトに掲載された商品の色を実際のものと「同じだと感じる」ように合わせたり、メタバース間でロゴの色を合わせたりなど、デジタルの分野も含めていろいろ使えそうです。どんどん妄想が広がります(笑)。実装される日が楽しみです。



他にも以下のような、印刷業界の皆さんの参考になる様々な展示がありました:

  • マーケティングコラテラルのデザイン制作支援ツール CAG (Collateral Auto Generator)
  • 印刷現場の可視化ソリューション
  • プリンター保守業務のDXソリューション
  • MREAL:現実空間にバーチャルのCGデータを実寸大に重畳する技術(Mixed Reality)、など
MREALは、実際にデジタル印刷機の開発にも使われているそうです。ご興味のある方はぜひそのあたりもお伺いしてください(私は時間がなくてお伺いできませんでした・・・)。

会場には、実際にその製品・技術を開発した技術者の方々も説明員としていらっしゃいますので、普段なかなか分からない機械や技術の中だったり裏側だったりのお話も色々お伺いできます。お時間がある方は、会場に足を運ぶことをオススメします。私も、次回がとても楽しみです (^ ^)

2023年9月19日火曜日

ジョン・レノンの手書き修正付きリリース . . . ジョン・レノン「ロックン・ロール」

 ロックンロールは絶対に死なない。なぜかって?とってもたくさんの人がそれを愛してるからさ - ジョン・レノン

1975年、ジョン・レノンは1950年代〜60年代初頭のロックンロールの名曲をカバーしたアルバム「ロックン・ロール(ROCK 'N' ROLL)」を発表しました。先の文章は、その発表時に配布されたニュース・リリースの冒頭に書かれていたものです。


このリリースは、ジョンが自ら書いたもの。ロックンロールそしてロックミュージシャンへの熱い思いが全編通して感じられます。また、ジョンのステージを1回だけしか見ることができなかった母親の思い出にも、胸を打たれます。

しかもこのリリース、ジョンが修正した手書きのメモが(タイプライターで打ち直されることなく)そのままプリントされています。そのお陰で、「あ、(偉大なアーチストのリストに)ボ・ディドリーを入れ忘れてた!」と慌てて追加した場面も目に浮かびます(笑)。文末の手書きサイン&自画像もとても良い感じです。


さて、この手書きのメモがリリースに残されたのは意図的なことだったのでしょうか?おそらく、「修正する時間がなかった」というのが理由だったのでは、と思われます。もともと4月発売の予定だったのが、急に2月へと前倒しになったようなので。

ただ、手書きメモが残されたことで、ジョンの文章の上手さと相まって、このリリースにはジョンの(雲の上のスーパースターな感じではなく)すぐ隣にいそうな人間っぽさが感じられます。特にロック好きには、すごい親密さも感じられるでしょう(笑)。

多くの場合、企業が発表するリリースには発売日や価格といった客観的な事実や、その製品・サービスの狙いみたいなものが書かれていると思います。しかし、この「ロックン・ロール」のリリースを見ると、もっと「エモい」リリースもつくれることがわかります。広報宣伝の皆さん、ぜひもっともっとリリースを進化させましょう!

いやぁ、プリントって本当にいいものですね!

2023年9月12日火曜日

壁に貼れる家具! . . . メゾン マルタン マルジェラ ウォールステッカー

今から30年くらい前、ミッドセンチュリー家具がブームになり、東京・中目黒や表参道などにオシャレな家具屋さんがたくさんできました。ちょうどその頃に社会人になったせいか、(プリントに加えて)家具にも興味も持っていたりします。一時期、家具のコレクションも考えましたが、部屋が狭いのですぐにその考えは捨て去りました(笑)。

ところで、フランスのファッションブランド メゾン マルタン マルジェラ(現在はメゾン マルジェラに変更)は2010年、『ドア』がプリントされたウォールステッカー(壁に貼れるステッカー)を発表しました。図柄は3種類で、どれもサイズは実物大。壁に貼ると、あたかもそこにドアがあるような「騙し絵(トロンプルイユ, Trompe-l'œil)」的なデザインです。素材は、壁に何度も貼ったり剥がしたりできるものになっています。

こちらの写真はそのウォールステッカーのひとつで、サイズは210cm x 84cmほど。2010年のミラノサローネ国際家具見本市で展示された際の記事を見ると、壁に自然に溶け込んでいるように見えます。また、ドア以外にもプリントされた「暖炉」などを見ることもできて、貼れる家具の様々な可能性を感じられます。



東京を拠点とするデザインスタジオ YOY がデザインした「キャンバス」という椅子もあります。これは、イスの絵がプリントされた伸縮性の高い布で木とアルミでできたキャンバス型のイスで、スツール、アームチェア、ソファの3種類があるとのこと。私も欲しいのですが、残念ながら持っていません・・・

プリントされた家具は、家具なのにそれほど保管するのに場所を取りません。ウォールステッカーはくるくるっと丸めて保管できますし、「キャンバス」も厚さ40mmです。販売する時の在庫スペースも、比較的少なくて済みそうです。


こうしたアイテムは、多くのショップや印刷会社などがプリントではなく「家具」を販売/製作できることを示しています。しかも、オリジナルの魅力的な「家具」を販売/製作することで、過度な価格競争からも脱却できます。もちろん家具以外にも、アイデア次第で販売/製作できるアイテムの幅もぐっと増やせます。ぜひ、色々挑戦してみましょう!

いやぁ、プリントって本当にいいものですね!


2023年9月5日火曜日

『漆塗り』というオーセンティックな加工 . . . 谷崎潤一郎「春琴抄」

文豪 谷崎潤一郎氏は、皆さんもご存知の通り、本の装丁にもとてもこだわる人でした。今回ご紹介する「春琴抄」(昭和8年, 1933年)もそのひとつ。特徴的なのは、ボール紙に漆を塗ってある表紙。見返しには贅沢に「鳥の子水揉紙」が使われていますが、漆塗りの表紙を楽しめるように、表紙の3分の1くらいにだけ見返し紙が貼られています。


「春琴抄」には『朱漆』バージョンと『黒漆』バージョンの2種類がありますが、朱漆バージョンは試作品で数十部程度しか発行されていないと言われています。表紙の題字は、写真が悪くて銀色に見えますが、蒔絵技法による金箔文字。この文字は、谷崎氏三度目の、そして最後の妻となる根津松子さんの手によるものです。


ところで、訪日外国人観光客向けのアイテムを開発・販売されている方もいらっしゃるかと思います。こうしたアイテムに「漆塗り」という加工をするのはいかがでしょう?「春琴抄」の事例からも分かるように、写真集やご朱印帳などのプリント/印刷物にも「漆塗り」加工することはできます。

漆塗りは、「玉虫厨子@法隆寺」「八橋蒔絵螺鈿硯箱(尾形光琳作)」など数々の日本の文化財にも使われている、とても「オーセンティック(authentic)」な手法です。日本観光のお土産としてぴったりです。

なお、今回写真でご紹介した「春琴抄」は、「朱漆」「黒漆」の両バージョンとも日本近代文学館が発行した復刻版です(朱漆版 1984年, 黒漆版 1974年)。復刻版といっても、複数のオリジナルの初版本を丁寧に研究し、帙や背なども含めて素材・手法などをできるだけ忠実に再現したもので、とてもステキな出来だと思います。


復刻版は今でも古書店などで入手することができ、しかも(こんなに手が込んでいるのに)あまり高い値段はついていませんので、機会があったら実際に手に取ってみてください。「漆塗りされた本も良いなぁ」とうっとりできること請け合いです(笑)

いやぁ、プリントって本当にいいものですね!

2023年8月29日火曜日

ミシンで縫ってあるDM!. . . Yohji Yamamoto A/W 2005-2006

筆者は昔からDMが好きで、特に変わったもの・凝ったものが届くと嬉しくなって大切に取っておきました。今回ご紹介するファッションブランド ヨウジ ヤマモト(Yohji Yamamoto)の2005年-2006年秋冬コレクションのDMもそのひとつ。


最大の特徴は『ミシンで縫ってある』こと。封筒を開けて中からこのDMを取り出したときの驚きは、今でも忘れられません。

このDMは、厚さ約1mmのボール紙を白い薄手の用紙で挟んで、それらを黒い糸で縫いつけてあります。表紙(白い紙)には、「Yohji Yamamoto Autumn-Winter 2005 | 2006」と小さなピンクの文字で印刷。白い紙の内側には、洋服の一部をアップにした写真がカラーで全面に印刷されています。


ボール紙部分(表面)には、そのコレクションの服を着たモデルさんの写真がモノクロで印刷され、さらにブランドロゴが銀で箔押しされています。ボール紙部分の裏面は、特に印刷・加工がなく、グレーのままです。カッコいいです。


「ミシンで縫う」という加工は、ノートの中綴じに使われていたりして、それほど珍しい加工方法ではありません。ただ、DMで使われることはあまりないと思います。とはいえ、ファッションブランドのように「糸」とか「縫う」ことと相性が良い会社のDMに使われると、奇を衒ったものではなく、自然なものとして受け取ることができます。


ちなみに封筒の中には、このDMとは別に、店員さんの手書きメッセージ入りカードも入っていました。そのカードには、コレクションの販売がスタートされる日、今回のコレクションの特徴・魅力、オススメの商品などがビッシリと書かれています。こうやってポイントを書き並べると業務的な内容のメッセージですが、それらが手書きされていると、なんとなく嬉しくなってお店に行きたくなります。

印象的でありながら、同時にそのブランドらしさも伝わるデザインのDM。さらに、担当店員さんとの関係も深めることができる。そういえば、封筒には薄いクリーム色の風合いの良い用紙が使われていて、そこにもブランドロゴが銀で箔押しされています。封筒からも、このブランドの世界観が伝わってきます。今の時代なら、そんな『紙のDM』に「デジタルならではの双方向性」も掛け合わせることができるでしょう。

ぜひ、『紙のDM』と『デジタル』を掛け合わせて、さらにステキな顧客体験を提供しましょう。いやぁ、プリントって本当にいいものですね!

2023年8月22日火曜日

企画力・デザイン力で『紙化』を促進!

パッケージなど様々な分野で、脱プラスチック&『紙化』が広まっています。こうしたトレンドをさらに促進するため、単なる「プラから紙への置き換え」ではない、企画力やデザイン力を活用した進化を伴う『紙化』の取り組みも進んでいます。

医薬品・化粧品パッケージなどの設計・デザイン、印刷、加工を行う富山スガキ(富山県富山市)は、医薬品・化粧品製造展「第25回インターフェックスジャパン」(会期:2023年7月6日〜8日の3日間、会場:東京ビッグサイト)において、企画力・デザイン力を武器に開発した人にも環境にもやさしいパッケージを提案しました。


例えば、これまであまり使われていない(印刷されていない)裏面/内側面を活用した紙箱。内側に購入者だけが楽しめる占いやくじ、切り取ってカードやペーパークラフトとして遊べるオマケなどを印刷することで、その商品を購入する楽しみが増えます。

しかも、設計・デザインを工夫して『糊を使わない』紙箱にすれば、開きやすくて人にやさしいものになります。また富山スガキは「POLYGONS」など、意匠が凝っていて店頭での訴求力の高いものもあわせて展示していました。


医薬品のパッケージも得意とする同社ブースには、箱の一部が添付文書になっている「添付文書一体型パッケージ」も紹介されていました。このパッケージでは、添付文書が中身よりも先に引き出されるデザインになっているため、確実に手に取っていただけるようになっています。また、箱と一緒にフルカラー印刷できるため、文書をより分かりやすくできます。


両面をカラー印刷したり糊を使わない箱を開発したりすることで、多少製造コストは上がるかも知れません。しかし、オマケや添付文書などを別途印刷して封入するコストが削減できます。さらに「店頭での訴求力」や「購入後の楽しみ」などを加えることで、人にも環境にもやさしい、しかも楽しい『紙化』を実現できます。

ブランドオーナーの皆さんそして印刷業界の皆さん、ぜひ企画力・デザイン力を活用して、単なるプラスチックの置き換えではない、進化を伴う『紙化』をどんどん促進しましょう!

2023年8月15日火曜日

ミック x アンディ x バックステージパス! . . . ミック・ジャガー ソロツアー(1988年)

ロックバンド ローリング・ストーンズのボーカル ミック・ジャガーは、セカンドアルバム「プリミティブ・クール」(1987年発売)を引っさげ、初めてのソロツアーを行いました(1988年)。ツアーでは日本(東京ドーム, 大阪城ホール)とオーストラリアなどを回りましたが、日本公演はストーンズも含めて初めてでした。

このバックステージパスは、このツアーの技術スタッフ用のものです。バックステージパスは、布製で服などに貼れるものが多いのですが、こちらは印刷物をラミネート加工したタイプで、紐をつけて首から下げて使用します。このタイプのパスは数も少なくてレア(笑)です。


キラキラした緑色の用紙が使われているのは、このキラキラ感がミックに似合うからという理由もあるかも知れませんが(笑)、複製防止という理由もあります。裏側には番号が印刷されていて、この番号で所有者も管理されています。ミック・ジャガーというビッグネームのツアーのため、デザイン面でもセキュリティがしっかり考慮されています。



パスにプリントされているのは、ポップアートの大スター アンディ・ウォーホルが、ミックを題材に1975年に製作した10枚組版画作品の中の1枚。ちなみに、作品の元になった写真もウォーホルが撮影しています。ただ、残念ながらウォーホルは1987年に亡くなっているので、このツアー(そして、このツアーパス)は見ていません

余談ですが、ストーンズが1971年に発表したアルバム「スティッキー・フィンガーズ (Sticky Fingers)」や1977年発表のライブアルバム「ラヴ・ユー・ライヴ (Love You Live)」のジャケットなどもウォーホルが製作しています。1970年代は、ストーンズとウォーホルの蜜月期だったんですね。

このツアーバックステージパスは他にも、「VIP」とか「All Access」などの種類があります。また、日本ツアー用に「技術スタッフ」「全域通行可」など日本語で書かれたものもあります。しかも、使われている色やイメージが異なります。とても凝ってます。これらも別の機会にご紹介できればと思います。

新型コロナ感染症も5類感染症に移行されたことから、イベントの数もどんどん増えています。デザインを工夫することで、この「ミック x アンディ」のような、「会場で積極的に見せたくなる」・(イベント終了後に)「とっておきたくなる」「友人や同僚に自慢したくなる」イベント用パスをつくるのはいかがでしょう?そのパスは、イベントや主催企業のブランディングの強力な武器になるでしょう。

いやぁ、プリントって本当にいいものですね!

#MickJagger
#AndyWarhol
#Warhol
#ミックジャガー
#アンディウォーホル
#ウォーホル
#プリントマニア

2023年8月8日火曜日

写真に『紅と筆』でサイン!? . . . 六代目中村歌右衛門/芝翫

六代目 中村歌右衛門は、20世紀を代表する歌舞伎役者の一人です。1941年(昭和16年)に中村芝翫、そして1951年(昭和26年 )に六代目 中村歌右衛門を襲名し、1968年(昭和43年)には重要無形文化財保持者(人間国宝)になりました。特に女方として有名で、交友のあった文豪 三島由紀夫の小説「女方」に登場する女方歌舞伎役者は、六代目 中村歌右衛門がモデルになっています。


筆者の手元に六代目 歌右衛門の9枚のサイン入り写真があるのですが、そのうち6枚には「芝翫」・3枚に「六代目 歌右衛門」のサインが入っています。筆でサインされている7枚(芝翫6枚・歌右衛門1枚)に注目すると、書かれた文字が赤いことに気がつきます。また、(写真では分かりにくくて申し訳ありませんが)その文字は盛り上がっています。



おそらく、芝翫/六代目 歌右衛門は、写真にサインするのにお化粧道具の「」と「筆」を使っていたようです。目元や口元を彩るのに使われた紅でサインするなんて、とっても艶っぽいです。筆で書かれた文字も、芯が通っていながらもふくよかで柔らかな印象で、色気を感じます。これらのサイン入り写真をいただいたファンは、とっても大事にしたことでしょう。

残りの2枚の写真(六代目 歌右衛門時代)は、細い緑色のペンでサインされています。抑揚をつけるのが難しいペンで書くのに慣れていなかったのか、(筆でのサインと比べて)硬く感じます。丁寧に書かれているのに残念です・・・




ところで、歌舞伎役者がサインを入れるようになったのは、いつ頃からだったのでしょう?江戸時代の浮世絵には役者をモチーフにした作品がたくさんありますが、不勉強なこともあって、存じ上げません。

また、サインにお化粧道具を使ったのはいつ頃始まり、そしていつ頃終わったのでしょう。万年筆でサインされた映画俳優の写真は目にすることが多いのですが、お化粧道具でサインされたものは寡聞にして存じません・・・

歌舞伎についての知識が全くありませんので、これらの写真がどの演目のどの役、そしていつ撮影されたものかも分かりません。かろうじて、緑色ペンでサインされたうちの1枚が、「連獅子」の「親獅子の精」だということくらいです(撮影年は分かりません・・・)。歌舞伎に詳しい方、ぜひお教えいただければと思います。

プリントは、情報を伝達するだけでなく、それにまつわるものにも触れそして深めるきっかけにもなります。いやぁ、プリントって本当にいいものですね!

2023年8月1日火曜日

新型コロナ『第9波』に乗ってみて分かったことなど

2023年7月24日週の1週間、新型コロナウイルスに感染して熱とノドの痛みと咳に悩まされながら寝て過ごしました。いわゆる「コロナ第9波」のビッグウェーブに、不本意ながら乗ってしまったようです。今回は、新型コロナに感染して分かったこと・驚いたことなどについて、自分用の備忘録的な意味も込めて、まとめておきたいと思います:


1)まだ『新型コロナ治療薬』はもらえず:

体調が悪いなと思ったのは7月23日(日、0日目)。早めに寝たのですが、頭痛はさらにひどくなり脈拍も早くなったので「これはコロナかインフルエンザかなぁ」と思い、翌日(7月24日)に近所の病院へ。検査していただいたところ、「新型コロナ陽性・インフルエンザ陰性」との結果が出ました(1日目)。

病院では、以下のお薬も一緒にいただきました。ノドの痛みを抑える&治療するお薬が多かったようです。残念ながら、新型コロナ治療薬は含まれず・・・コロナ治療薬をサクッと出していただくには、まだ時期が早すぎたようです:

  • 葛根湯エキス顆粒(医療用)
  • 小柴胡湯加桔梗石膏エキス顆粒(医療用):ノドの痛みを和らげる
  • トランサミン錠:ノドの炎症を抑える
  • ロキソニン錠:痛みや炎症を抑える&熱を下げる
  • SPトローチ:ノドの感染を予防・治療


2)高熱が続いて辛かった・・・

今回、新型コロナに感染して辛かったことのひとつに、以下のように高熱が続いたことがありました:

  • 0日目(23日)・1日目(24日)・2日目(25日):38度台
  • 3日目(26日):37度台後半
  • 4日目(27日):37度前後
  • 5日目(28日):36度台
  • 参考:平熱は35度台

インフルエンザなら、タミフルのような治療薬を飲めば熱は早めに下がります。しかし、今回いただいたお薬(葛根湯・ロキソニン)では熱がなかなか下がらなかったため、少々辛かったです・・・

ところで、今回の熱の出方は、「新型コロナワクチン」接種時に副反応で出た熱と同じように感じました。一気に高い熱が出て頭がすごく痛くなる、というか。この感覚もあって、「今回は新型コロナかも」と早い段階から予想できていたと思います。

発熱以外では、頭痛やノドの痛み、咳といった症状が中心でした。味覚や嗅覚にはあまり影響がなく、それはラッキーでした。そういえば、熱が高い時にはノドの痛みはあまり感じませんでしたが、熱が少し下がるとノドの痛みを猛烈に感じました。不思議です。


3)東京都の資料、マジ便利!ありがとう!!

今回、東京都が作成・配布した新型コロナに関する資料(A4 1枚)が本当に役に立ちましたまず、「発熱などの症状が出たら」面(表面)で、病院に行く前にすべきことが分かります。そして「コロナの陽性が判明したとき」面(裏面)で、コロナ療養中の注意事項や後遺症などについての情報が簡潔に分かりやすくまとめられています。

コロナでボーっとした頭でも理解できました。この資料のおかげで、治療に専念できたと思います。ありがとうございました!


4)市販の検査キットは参考程度で:

上記のように、(勝手にですけど)自分で「新型コロナかも」と思っていたこともあって、病院に行く前に(家族にドラッグストアで買ってきてもらった)検査キットで念入りに確認しました。

病院に行ったのは17時ごろでしたが、その前に3回(11時ごろ・14時ごろ・16時ごろ)検査キットを使いました。結果は、予想と違って3回とも「陰性」。そのため、「今回はインフルエンザかぁ、夏なのに珍しいなぁ」と思って病院に行ったら、「新型コロナ陽性・インフルエンザ陰性」との診断結果が。

私の使い方が悪かったのかもしれませんが、市販の検査キットの結果は参考程度にした方が良さそうです。

ちなみに、使った検査キットは以下の2種類:

* 検査スティックの先端部分をくわえて舌の上に置くタイプ(2回)
* 綿棒を使って口腔内から直接唾液を採取し、それをテストカセットに滴下するタイプ(1回)

思い返すと、これらの検査キットを使ったのは初めてで、検査のときに「うまく使えていないかも」という気がしていたような。やっぱり、私の使い方が悪かったのかもしれません・・・


まとめ:新型コロナとインフルエンザは『けっこう違った』

本日(8月1日, 9日目)時点で、おかげさまで体調はかなり落ち着きました。ただ、頭痛・倦怠感・しゃべると咳が出るといった症状はまだ少し残っています。しかしこれは、連日続く「危険な暑さ」も関係しているかもしれないので、なんとも言えません・・・

新型コロナが(季節性インフルエンザと同じ)5類に移行して以降、「新型コロナとインフルエンザは同じようなもの」というお話を耳にすることもたくさんありました。でも、今回かかってみて思ったのは、『けっこう違った』ということ。

新型コロナは『簡単に治療薬を出してもらえる』という状況にまだなっていないのが大きな差かと。今回、症状がちょっと重めだったこともあって、この差の大きさを痛感しました。

もちろん、この先コロナの治療薬がだんだん入手しやすくなっていくことと思います。しかしそれまでは、感染時の症状の軽重は予測できないこともありますので、できるだけ新型コロナには感染しないよう、まだまだ注意した方が良さそうです。

2023年7月18日火曜日

奈良時代(770年ごろ)の印刷物、触ったことある?

先日、「現存する世界最古の印刷物」の百万塔陀羅尼(だらに)に実際に触れられる機会がありました。百万塔陀羅尼は、法隆寺奈良国立博物館印刷博物館モリサワ奈良大学龍谷大学など様々なところが所蔵していて、実物を見る機会は結構あったりします。しかし、それらはケースに入っていて、実際に手にできる機会は滅多にありません。

今回手に取ることができたのは、東京・神保町の東京古書会館で開催された「令和5年 明治古典会 七夕古書大入札会」(2023年7月9日)に出品されたものです。お世話になっている古書店主さんと一緒に、その下見会(7月7日・8日開催)にお伺いしました。


百万塔陀羅尼は、印刷された陀羅尼経が木製の小さな塔に収められているもので、奈良時代(770年ごろ)につくられました。その名の通り100万基つくられましたが、現在は4万数千基のみが残っていると言われています。

今回出品されたものは、そのうちのひとつ。下見会場ではガラスケースの中に展示されていて、係員の方にお願いすると取り出していただけます。手に取った木製の塔は、ちょうど手のひらに収まるくらいのサイズ感でした。また、存在感のある見た目とは違って、軽かったのが印象的でした。


は、印刷物が収められている「塔身部」と、フタの役目も果たす「相輪部」から成っています。塔身部・相輪部ともに複雑な形状で、しかも100万基と大量に製作されたので、実際に手にするまでパーツを組み合わせて製作されたものだと思っていました。

しかし実際は、塔身部・相輪部とも、それぞれ1つの木材から職人さんが轆轤(ろくろ)と鑿(のみ)を使って削り出している、とても大胆かつ繊細に加工されたものでした。塔身部の底には、作業のために轆轤に釘のようなものでしっかりと固定された跡も残っています。塔身部の「笠」(出っぱった部分)も含めて柔らかい美しい曲線が多く使われていて、手触りも良く、ついつい時間を忘れて見入ってしまいました。

塔に納められている陀羅尼経も、インク(墨?)が掠れもなく黒々と丁寧にプリントされています。プリントも塔もとても丁寧につくられていることから、当時の乱で亡くなった方々の菩提を弔い、また鎮護国家を祈念する真摯な気持ちが伝わってきます。

プリント方法については木版説と銅版説がありますが、大量にプリントするためには、版は複数あったと考えられます。実際、今回の大入札会に出品された陀羅尼経は、例えば、法隆寺が保管しているものとは異なっています。

大入札会バージョンの陀羅尼経では、左から(終わりから)8行目・9行目の行頭文字(「九」「十」)に注目すると、これらの文字は他の行頭文字よりも少し上に飛び出していることが分かります。

これに対して、奈良県印刷工業組合のサイトに掲載されている法隆寺から提供された写真では、「九」「十」の文字は他の行頭と高さが揃っています。また、大入札会バージョンの方が、多少文字の間隔があいているような。


陀羅尼経の紙質については、今回は手に取らなかったので分かりません。申し訳ありません・・・見た限りでは状態はとても良かったのですが、なにせ1,500年以上前の紙です、チキンな私はひよってしまいました・・・その前に手に取った大正時代の本の紙が、すっかりボロボロになっていたりしましたので。

下見の後、このステキな百万塔陀羅尼を気に入って、本気で入札しよう思い同行していただいた古本店主さんに予想価格などご相談しました。頭の中では色々金策を考えたり。入手できれば、好きな時に好きなだけ百万塔&陀羅尼経を楽しむことができますから。

実は、大入札会の目録には入札最低価格・落札予想価格、出品物の状態などが表記されていません。そのため、入札に当たってはプロ(=古書店さん)のアドバイスが不可欠です。今回いただいたアドバイスによれば、今回の百万塔は状態も比較的良く、また高名な美術史家 会津八一氏の箱書きがついていたりして高額になりそうとのこと。そのため、今回は入札を断念しました。とても残念です。次の機会を待つことにします。

ところで、七夕古書大入札会は毎年開催されていて、びっくりするようなものがたくさん出品されます。今年も、以下のような「え、こんなモノが!?」というものがありました:



時と国境を超えて楽しむことができるプリントって、本当にいいものですね!

2023年7月11日火曜日

このスリーブケース知ってる? . . . 頭脳警察「1」「聖ロック祭」

 レコードからCDに切り替わって残念なことも多かったですが、良かったこともありました。そのひとつが「レアで入手困難なレコードがCDで復刻されたこと」です。

ロックバンド 頭脳警察のファーストアルバム「」も、CDで復刻されたことでやっと聴くことができました。このアルバムは1972年に発売される予定だったのが「発禁」となったため、自主制作盤としてライブ会場や通販で販売されました。そんな経緯もあって、とても入手困難でした。


2001年、このアルバムがやっとCDとして発売されました!その際、ライブアルバム「1973.10.20 頭脳警察 日比谷野音 "聖ロック祭"」も一緒に発売されました。こちらは、おそらくレコードはなく、CDが初めての「円盤化」だった思います。


発売時、「1」「聖ロック祭」を購入するとその特典としてサイン入りスリーブケースがもらえる、というキャンペーンが行われていました。どのお店のキャンペーンだったか覚えていませんが、以前の記事でご紹介したフリクションと同じくディスクユニオンだったような。こんなロックファンのハートに刺さる特典は、ディスクユニオンしか考えないと思いますので(笑)。

ところで、スリーブケースとは「プラスチック製などCDケースを入れる外カバー」のことで、CDの時代になって広まったアイテムだと思われます。レコードの時代にもレッド・ツェッペリン「イン・スルー・ジ・アウト・ドア (In Through The Out Door)」の茶色の紙袋のようなモノはありましたが、あくまでも例外かと。スリーブケースは、時代の流れに合わせてプリントも進化するという一例です。

さて、2023年7月7日七夕の日、頭脳警察のボーカル&ギターPANTA(パンタ)さんが亡くなられました。頭脳警察の公式サイトによれば、「闘病の中もROCK魂を貫き、最後の時まで現役の「ROCK屋」としての人生を全ういたしました」とのこと。カッコいいです!そして本当に残念です・・・心よりご冥福を申し上げます。

2023年7月4日火曜日

この写真知ってる? . . . ボブ・ディラン&スージー・ロトロ@1963年2月

ボブ・ディランの2枚目のアルバム「フリーホイーリン(Freewheelin', 1963年)」は、「風に吹かれて」(Blowin' in the Wind)といった名曲が入っていることに加えて、ボブ・ディランと(当時の恋人&ミューズ)スージー・ロトロが冬のニューヨークの街を寄り添いあって腕を組んで歩いているジャケットも大きな魅力となっています。


今回ご紹介するのは、このジャケットと同じ日に撮影された写真の1枚をプリントしたもの。撮影したのは、コロンビア・レコードの社員カメラマンだったドン・ハンスタイン氏(Don Hunstein)です。

この写真は、ボブ・ディランとスージー・ロトロが当時住んでいたニューヨークの部屋で撮影されました。スージーはこの時のことを「ボブとわたしはいつもより早く起きて、部屋をかたづけた。ボブは念入りに、皺だらけの服を選んだ。わたしはセーターの上にボブの分厚いセーターを重ね着した。いつものようにアパートの部屋は寒かった」と思い返しています。

最初はボブが歌っているところを撮影していましたが、「ビリーだったかドンだったか、ボブだったかもしれない。とにかくだれかが、ギターを弾いて歌うボブの横にわたしが入ったらどうかと提案した」ことで、このステキな2ショット写真が撮影されました。

このプリントのボブは、柔らかくて優しそうで楽しげな若者らしい表情をしています。スージーもこの写真を「このころのボブとわたしの心は、深く結ばれていた。写真にもそれがよく表れている」と評しています。

ところで、このプリントの用紙はRCペーパー、プリント技法は銀塩プリント(ゼラチンシルバープリント)です。サイズは、用紙 約25.5cm x 20.5cm、イメージ部分 約20cm x 19.5cm。プリント(表)に書かれた「Feb 1963」は撮影日(月)、裏に書かれた「4580-R1-11」はネガやコマの番号のようです(こちらに掲載されているイメージ左上の数字にご注目ください)。


ネガやコマの番号が書かれているということは、ネガから直接現像されたものと思われます。ネットや印刷物で写真が使われる際にはいろいろな修正が入りますが、このプリントのイメージはそうした修正が入る前のもの。

このプリントは1970年代半ばに雑誌か書籍のために現像されたと聞いていますが、残念ながら掲載誌が不明なため、印刷される際にどんな修正が入ったか確認できません・・・ただ、現在このイメージが使われている印刷物やWebサイトと比較することはできます。

例えば、こちらの記事に使われているイメージは、ボブとスージー2人の仲睦まじい表情が良く分かるよう明るめに加工され、またトリミングされています。そのためか、イメージがぼんやりとした感じになり、スージーの豊かで艶やかな髪の魅力も薄れてしまっています。ちょっと残念です。

なお、スージー・ロトロのコメントは全て『スージー・ロトロ(菅野ヘッケル翻訳)「グリニッチヴィレッジの青春」(河出書房新社, 2010年)』からの引用です。この本には、2枚目のアルバムが Freewheelin' という名前になった経緯なども書かれています。また、柔和な表情だったボブ・ディランが気難しい表情になっていった経緯も分かります。ぜひ、こちらもあわせてお読みください。

いやぁ、プリントって本当にいいものですね!

2023年6月27日火曜日

このポジフィルム知ってる? . . . 河瀬直美「殯(もがり)の森」

プリントマニアが愛する『プリント』には、印刷物だけでなく映画や写真のフィルムを「プリント」したものも含まれます。今回は、映画の35mmフィルムから作成したポジフィルム(ひとコマ)をご紹介します。


さて、日本を代表する映画監督河瀬直美氏は、1997年に「萌の朱雀」でカンヌ国際映画祭カメラ・ドール(新人監督賞)、そして10年後の2007年に「殯(もがり)の森」でグランプリ(審査員特別大賞)を受賞しました。その「殯の森」を制作した際、「ひとコマもがり」という取り組みを実施しました。

当時(2006年6月)の組画(くみえ)ホームページでは、「ひとコマもがり」について「最新作(筆者注:殯の森)を「ひとコマ」フィルム購入で応援するサポーター制度です。奈良を舞台にした河瀬直美の新作映画づくりに、ぜひご参加ください!」と紹介しています。今でいうところのクラウドファンディングみたいな取り組みです。その参加特典は以下の3点でした:

1)実際に撮影された映画の35mmポジフィルムを「一コマ」プレゼント(一口につきひとコマ)
2)奈良県下での特別試写会に無料ご招待
3)映画「殯の森」パンフレットにお名前を掲載

当時の振込用紙によれば、2006年6月29日に5口分(一口2,000円)を振り込んでいました。公開当時に見た「萌の朱雀」などに影響されて8mmカメラで映画を撮ったこともあって(しかも、うまくつくれなかったこともあって(笑))、迷わず参加しました。なお、後日送られてきた会報紙によれば、河瀬監督はその頃ロケハンを行なっていたそうです(クランクインは7月23日)。

参加特典その1「35mmポジフィルム」はカンヌでのグランプリ受賞後、公開前の特別試写会が開催されるタイミングで送られてきました。5口分だったので5コマだったのですが、全部が「森」でびっくりしました。それと同時に、なんとなく「河瀬監督らしいなぁ」とも思いました。


ただ、よく見ると5コマとも全部異なる「森」のポジフィルム。改めてネットに上がっている「ひとコマ」を調べてみても、全てが異なるイメージでした。どうやら、それぞれが1点モノのようです。また、人(俳優さん)が映っているコマもあるようです。とはいえ、映画をご覧になった方ならお分かりになると思いますが、「森」もメイン出演者のひとり(?)なので「森」のポジフィルムでも十分楽しいです。


この映画のパンフレットによれば、「ひとコマもがり」には約2,000人が参加されたようです。この「ひと口もがり」用にどのくらいの数のフィルムを用意したのか、フィルムを選んだポイントは何か、今でもお手元に残っているものはあるのかなど、河瀬監督にお会いする機会があったらいろいろ伺ってみたいです。

そうそう、パンフレットにも名前が載っていました。とても嬉しかったです。カンヌでグランプリを受賞した作品のパンフレットは、時代や国境を越えて広がり、残されると思いますし。ただ、特別試写会は会場が奈良県だけだったので、残念ながら参加できませんでした・・・

いやぁ、プリントって本当にいいものですね!