印刷物をもっと「つくる」「使う」「残す」ことを支援する、ブライター・レイターのブログです。

2023年9月19日火曜日

ジョン・レノンの手書き修正付きリリース . . . ジョン・レノン「ロックン・ロール」

 ロックンロールは絶対に死なない。なぜかって?とってもたくさんの人がそれを愛してるからさ - ジョン・レノン

1975年、ジョン・レノンは1950年代〜60年代初頭のロックンロールの名曲をカバーしたアルバム「ロックン・ロール(ROCK 'N' ROLL)」を発表しました。先の文章は、その発表時に配布されたニュース・リリースの冒頭に書かれていたものです。


このリリースは、ジョンが自ら書いたもの。ロックンロールそしてロックミュージシャンへの熱い思いが全編通して感じられます。また、ジョンのステージを1回だけしか見ることができなかった母親の思い出にも、胸を打たれます。

しかもこのリリース、ジョンが修正した手書きのメモが(タイプライターで打ち直されることなく)そのままプリントされています。そのお陰で、「あ、(偉大なアーチストのリストに)ボ・ディドリーを入れ忘れてた!」と慌てて追加した場面も目に浮かびます(笑)。文末の手書きサイン&自画像もとても良い感じです。


さて、この手書きのメモがリリースに残されたのは意図的なことだったのでしょうか?おそらく、「修正する時間がなかった」というのが理由だったのでは、と思われます。もともと4月発売の予定だったのが、急に2月へと前倒しになったようなので。

ただ、手書きメモが残されたことで、ジョンの文章の上手さと相まって、このリリースにはジョンの(雲の上のスーパースターな感じではなく)すぐ隣にいそうな人間っぽさが感じられます。特にロック好きには、すごい親密さも感じられるでしょう(笑)。

多くの場合、企業が発表するリリースには発売日や価格といった客観的な事実や、その製品・サービスの狙いみたいなものが書かれていると思います。しかし、この「ロックン・ロール」のリリースを見ると、もっと「エモい」リリースもつくれることがわかります。広報宣伝の皆さん、ぜひもっともっとリリースを進化させましょう!

いやぁ、プリントって本当にいいものですね!

2023年9月12日火曜日

壁に貼れる家具! . . . メゾン マルタン マルジェラ ウォールステッカー

今から30年くらい前、ミッドセンチュリー家具がブームになり、東京・中目黒や表参道などにオシャレな家具屋さんがたくさんできました。ちょうどその頃に社会人になったせいか、(プリントに加えて)家具にも興味も持っていたりします。一時期、家具のコレクションも考えましたが、部屋が狭いのですぐにその考えは捨て去りました(笑)。

ところで、フランスのファッションブランド メゾン マルタン マルジェラ(現在はメゾン マルジェラに変更)は2010年、『ドア』がプリントされたウォールステッカー(壁に貼れるステッカー)を発表しました。図柄は3種類で、どれもサイズは実物大。壁に貼ると、あたかもそこにドアがあるような「騙し絵(トロンプルイユ, Trompe-l'œil)」的なデザインです。素材は、壁に何度も貼ったり剥がしたりできるものになっています。

こちらの写真はそのウォールステッカーのひとつで、サイズは210cm x 84cmほど。2010年のミラノサローネ国際家具見本市で展示された際の記事を見ると、壁に自然に溶け込んでいるように見えます。また、ドア以外にもプリントされた「暖炉」などを見ることもできて、貼れる家具の様々な可能性を感じられます。



東京を拠点とするデザインスタジオ YOY がデザインした「キャンバス」という椅子もあります。これは、イスの絵がプリントされた伸縮性の高い布で木とアルミでできたキャンバス型のイスで、スツール、アームチェア、ソファの3種類があるとのこと。私も欲しいのですが、残念ながら持っていません・・・

プリントされた家具は、家具なのにそれほど保管するのに場所を取りません。ウォールステッカーはくるくるっと丸めて保管できますし、「キャンバス」も厚さ40mmです。販売する時の在庫スペースも、比較的少なくて済みそうです。


こうしたアイテムは、多くのショップや印刷会社などがプリントではなく「家具」を販売/製作できることを示しています。しかも、オリジナルの魅力的な「家具」を販売/製作することで、過度な価格競争からも脱却できます。もちろん家具以外にも、アイデア次第で販売/製作できるアイテムの幅もぐっと増やせます。ぜひ、色々挑戦してみましょう!

いやぁ、プリントって本当にいいものですね!


2023年9月5日火曜日

『漆塗り』というオーセンティックな加工 . . . 谷崎潤一郎「春琴抄」

文豪 谷崎潤一郎氏は、皆さんもご存知の通り、本の装丁にもとてもこだわる人でした。今回ご紹介する「春琴抄」(昭和8年, 1933年)もそのひとつ。特徴的なのは、ボール紙に漆を塗ってある表紙。見返しには贅沢に「鳥の子水揉紙」が使われていますが、漆塗りの表紙を楽しめるように、表紙の3分の1くらいにだけ見返し紙が貼られています。


「春琴抄」には『朱漆』バージョンと『黒漆』バージョンの2種類がありますが、朱漆バージョンは試作品で数十部程度しか発行されていないと言われています。表紙の題字は、写真が悪くて銀色に見えますが、蒔絵技法による金箔文字。この文字は、谷崎氏三度目の、そして最後の妻となる根津松子さんの手によるものです。


ところで、訪日外国人観光客向けのアイテムを開発・販売されている方もいらっしゃるかと思います。こうしたアイテムに「漆塗り」という加工をするのはいかがでしょう?「春琴抄」の事例からも分かるように、写真集やご朱印帳などのプリント/印刷物にも「漆塗り」加工することはできます。

漆塗りは、「玉虫厨子@法隆寺」「八橋蒔絵螺鈿硯箱(尾形光琳作)」など数々の日本の文化財にも使われている、とても「オーセンティック(authentic)」な手法です。日本観光のお土産としてぴったりです。

なお、今回写真でご紹介した「春琴抄」は、「朱漆」「黒漆」の両バージョンとも日本近代文学館が発行した復刻版です(朱漆版 1984年, 黒漆版 1974年)。復刻版といっても、複数のオリジナルの初版本を丁寧に研究し、帙や背なども含めて素材・手法などをできるだけ忠実に再現したもので、とてもステキな出来だと思います。


復刻版は今でも古書店などで入手することができ、しかも(こんなに手が込んでいるのに)あまり高い値段はついていませんので、機会があったら実際に手に取ってみてください。「漆塗りされた本も良いなぁ」とうっとりできること請け合いです(笑)

いやぁ、プリントって本当にいいものですね!