印刷物をもっと「つくる」「使う」「残す」ことを支援する、ブライター・レイターのブログです。

2016年7月5日火曜日

KADOKAWAさん、drupa2016で何を買いましたか?

drupaで最新の印刷機材を購入するのは、印刷会社だけではありません。drupa2016期間中の6月4日、HP社から「KADOKAWAが新たに構築する書籍の製造プラットフォームに、HPのデジタル印刷ソリューションが採用された」との発表がありました。

KADOKAWAが今回購入した機材には以下のようなものが含まれます。いずれも、今回のdrupaで発表されたばかりの最新機材です:


これらの機材は、所沢市の旧所沢浄化センター跡地にKADOKAWAが建設する生産および物流の拠点に導入される予定です(2018年に稼働予定)。これらの機材を使うことで、文庫、ライトノベル、新書、コミック等の本文、口絵、表紙、カバー、帯にいたるまでを一貫生産できます。

ところで、KADOKAWAは2015年4月からアマゾンジャパンと書籍・雑誌の直接取引きを始めています。また、今回drupaで買った機材が設置される旧所沢浄化センター跡地では、KADOKAWAは「ところざわサクラタウン(仮称)」という出版という枠を超えたテーマパーク的な事業を展開する計画です。

こうした動きから、KADOKAWAはdrupa2016で購入した機材を活用して、直接消費者に書籍やサービスを提供する「B2C企業」へと進化したいのでは、と想像されます。最近、メーカーのマーケティング担当者から、「物流企業が間に入ることで、自社製品を使ってくださっている消費者の顔が見えにくくなるケースもある」というお話をお伺いすることがあります。

もしかしたら、KADOKAWAも同じような課題を持っているのかもしれません。確かに、消費者と直接取引きできれば、自社製品(書籍や雑誌)に対する評価やニーズを把握しやすくなります。一方、物流コストは下がってきていますし、デジタル印刷システムを使えば在庫を最小限にできます。こうした市場環境の中、「出版ビジネスのB2C化」を模索する動きが本格化しても不思議はありません。

2016年8月5日(金)18時15分から東京・神保町で、「最新印刷技術が切り拓くこれからの出版ビジネス - drupa2016に学ぶビジネスの可能性 -」というセミナーを開催します(企画:出版研究センター、主催:出版ビジネススクール事務局)。このセミナーでは、今回の記事で分析したKADOKAWAの取り組みにもさらに深く切り込みます。

出版分野でのデジタル印刷活用にご興味のある方、あるいは出版ビジネスの競争のルールを変えるアイデアをお探しの方、ぜひご参加ください (^ ^)

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