印刷物をもっと「つくる」「使う」「残す」ことを支援する、ブライター・レイターのブログです。
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2012年7月9日月曜日

書籍が電子化する時代の印刷会社の売上・利益拡大ポイント . . . (3)

実は、私は美しい装丁の本が大好きです。先日も東京・渋谷のタワーレコード6階にあるタワーブックスで、上品な革張りの「ティファニーで朝食を」と素敵な布張りの「若草物語」を買いました。

「ティファニーで朝食を」は、英国の出版社 Penguin Books がダンヒルなども手掛けた英国人バッグデザイナー Bill Amberg(ビル・アンバーグ)とコラボした限定品、また「若草物語」は、英国の子供向け書籍の出版社 Puffin Books が70周年を記念して制作した、アイルランド出身のデザイナー Orla Kiely (オーラ・カイリー)とコラボした限定品になります。両方とも、手触りはもちろん眺めていて楽しい気持ちになる本です。

ところで、「東京国際ブックフェア」では、スッキリ美顔ローラー付き「スッキリ美顔BOOK」(買われた方は「BOOK付き美顔ローラー」を購入したと思っているかも知れませんが)を生産された DT Japan の方から、「最近ではグッズ付きのムックに興味を持たれている出版社さんが増えています」というお話をお伺いしました。これまで『紙の本』を意識したお話をしてきましたが、こうした 紙以外の要素によって「『モノ』としての魅力を高めた書籍」を提供するサービスも、印刷会社が電子化が進む中で売上・利益を拡大させるポイントになるのかもしれません。

この市場では、製本に強みを持つ会社が競争優位性を持つことになると思われます。あるいは、モノ作りが得意な会社が出版社・印刷会社と組むことで、新たに市場に参入してくるかもしれません。

これまで議論してきたような、『紙の本』あるいは「『モノ』としての魅力を高めた書籍」を生産することやデジタルコンテンツを提供することに加えて、それらの販売を支援するサービスというのも、印刷会社が売上・利益を伸ばす絶好の機会だと考えられます。多くの出版社では、自社の出版物をマーケティングする能力というのが十分ではないからです。

印刷会社、特に出版を主たる事業とする印刷会社は、自分たちの顧客である出版社のビジネスが上手くいかなければ、十分な売上・利益を確保することができません。そのため、出版社のビジネスが上手くいくためのスキル、例えばWebを活用して出版物やデジタルコンテンツに興味を持つ人々を集めるスキルなどを身に付け、それを提供するということも求められると思います。

こうしたスキルは、印刷会社が既存顧客との関係を深めることや新たな顧客を開拓することにも役立ちます。まだ、こうしたWebマーケティングを得意とする印刷会社はそれほど多くありません。すぐにこうしたスキル向上に取り組めば、競合との差別化になり、売上・利益拡大に大きく近づくことができると考えられます。

今回の「東京国際ブックフェア」では、国内においても書籍の電子化が一層進展する予感が感じられました。印刷会社はそうした動向に対して抵抗するだけでなく、そうした動向を織り込みながら以下のような「次の一手」の取組みを考えることも、売上・利益の拡大を実現するためには必要不可欠になります:

  1. 原稿用データをデジタルコンテンツとして管理・活用するサービス
  2. 書籍印刷の小ロット・短納期対応力を高めたサービス
  3. 「モノ」としての魅力を高めた書籍を提供するサービス
  4. 書籍やデジタルコンテンツの販売促進サービス

このブログの内容が、少しでもそのお役に立てば幸いです。何かご意見・ご質問などございましたら、是非ご連絡よろしくお願いいたします!


2012年7月6日金曜日

書籍が電子化する時代の印刷会社の売上・利益拡大ポイント

昨日(7月5日)、東京ビッグサイトに「東京国際ブックフェア」と「国際電子出版 Expo」に行ってきました。iPadが日本国内でも発売された2010年にはまだ抽象的だったり使いにくそうに感じられた「電子書籍向けサービス」も、今回は具体的で「これなら使えるかも」という印象のものになっていました。ブログのタイトルには「書籍」と書きましたが、会場では雑誌や新聞の電子化、また電子化された雑誌・新聞をより魅力的にするためのサービスも数多く紹介されていました。

こうした状況の中、印刷会社が売上・利益を伸ばすために必要な取組みは何でしょう?広い会場を歩き回ることを通じて、「カスタマイズ」や「パーソナライズ」によって「個」のニーズを満たす以下の様なものが見えてきました:
  1. 原稿用データをデジタルコンテンツとして管理・活用するサービス
  2. 書籍印刷の小ロット・短納期対応力を高めたサービス
  3. 「モノ」としての魅力を高めた書籍を提供するサービス
  4. 書籍やデジタルコンテンツの販売促進サービス
これまでは、「印刷用データを電子書籍向けに変換する」というサービスの可能性も印刷会社にはあるのでは、という議論も行われてきたかと思います。しかし、今回の展示会を見るとこうしたツールがかなり揃ってきていることから、「データの変換」は出版社(あるいは新聞社)の側でも可能になっているように思います。つまり、印刷会社が「付加価値の高いサービス」として提供するのは難しくなってきているように感じました。

その一方で、「原稿用データをデジタルコンテンツとして管理・活用する」という事業機会が印刷会社に見えてきたようにも思います。電子書籍や電子新聞を紙媒体と同じようにスマホ・タブレットに表示するだけではなく、例えば廣済堂出版の NewsMediaStand (ニュースメディアスタンド)のように、読みたい新聞記事を長押しするとその記事を抽出した記事画面が表示されて読み易くなったり、大日本印刷(DNP)ブースのDNP電子新聞スタンドで展示されていたNewspaperDirectのように新聞記事を音読してくれたりする、アクセシビリティを高めるサービスが紹介されていました。

また、DNPブースでは「チェックインマガジン」として、カフェや電車内、空港、スタジアムなど「場所」を切り口として記事=デジタルデジタルコンテンツをまとめて雑誌のように提供するサービスコンセプトを紹介していました。この「場所」に時間や季節、自分の興味のあることなどの切り口をさらに加えてコンテンツを提供することができれば、ユーザー/読者にとって、また印刷会社の顧客にとって、さらに魅力のあるサービスになると思います。

こうした、コンテンツの制作に加えて管理・活用を支援するサービスを印刷会社が提供できれば、非常に付加価値の高いものとすることができると考えます。この時、印刷会社が持つ組版や編集のスキルを使うことで、IT系の会社との競合においても優位性のあるサービスを構築・提供できると思われます。

・・・と、「1. 原稿用データをデジタルコンテンツとして管理・活用するサービス」に触れただけなのに、すっかり長くなってしまいました。申し訳ありません。2〜4については、次回の記事でご説明したいと思います。引き続き、よろしくお願いいたします!



2011年7月8日金曜日

雑誌の電子化が進まない理由

7月7日にインプレスR&D社より、電子書籍の市場規模予測に関するプレスリリースが発表されました。これによれば、電子書籍の市場規模は2010年度の650億円から2015年度には2000億円程度にまで大きく拡大することが予測されています。

しかし、電子雑誌市場は2010年度の6億円、2015年度でも200億円と電子書籍に比べて小さな規模となっています。2010年4月期の販売額は、書籍が約690億円に対して雑誌が約810億円と雑誌の方が大きいにも関らず、です。また、個人的な意見ですが、雑誌の方が電子化と相性が良さそうにも感じます。

これは何故でしょう?雑誌の方が、著作権の処理が複雑だからでしょうか。あるいは、広告媒体としての価値を考えた時に、電子媒体よりも紙媒体の方が高いためでしょうか?宜しければ、皆さんのお考えをお聞かせください m(_ _)m