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2013年5月19日日曜日

2013 Japan IT Week 春 の見どころ(詳細編). . . (2)

前回に続いて、2013 Japan IT Week 春 の見どころの詳細をご紹介したいと思います。

3. AR分野の主要プレーヤーがそろい踏み:

これまでもこのブログでは様々な展示会で提案されていたARのご紹介をしてきましたが、今回は注目してきたプレーヤーが一同に介する大変賑やかで華やかなものでした。その結果、これまではAurasmaのエンジンが中心だったのが、技術的にも様々なものが紹介されて選択肢が増えてきているのを感じました。

ただ、各ブースでの紹介は「ARとは何か」の紹介が中心で、そのサービスが他のものと比べてどのような特徴があるのか、(他サービスではなく)そのサービスを採用するとどのようなメリットがあるのか、といった「何故、それを採用すべきなのか」についての説明がありませんでした。

「国内ではなかなかARが立ち上がらない」という声も聞かれますが、その理由のひとつに「どのサービスを選ぶべきか分からない」というものも挙げられるかと思います。是非、主要プレーヤーには各社ARの特徴、他社とは異なる特徴を積極的にアピールすることを通じて、国内AR市場の立ち上げを加速していただくことを期待したいと思います。

4. UI/ UX:紙媒体で培ったノウハウをアプリやWebサイトに適用できそうな:

最近、Web系の雑誌などでも「UI/ UX(User Interface/ User Experience、ユーザーインターフェイス/ユーザー体験)」に関する記事が増えてきていますが、今回の会場でも UI/ UX に関する展示が見受けられました。そのひとつ、フェンリルブースで「UI/ UX」に関するミニセミナーをお伺いしたのですが、その中で「UI/ UX向上のためには「フォントの大きさ」や「アイコンの使い方」などに気を使う必要がある」といったお話がありました。

これは、印刷業界でいうところの『グラフィックデザインのスキル』が求められるということかと思います。先の例はひとつの画面の話ですが、Webサイト全体あるいはモバイルアプリ全体で考えれば『エディトリアルデザインのスキル』も必要になるでしょう。こうした紙媒体で培われたデザインのスキルが、今、印刷会社がITの領域に切り込む武器のひとつになりそうです。

5. HTML5ベースのモバイルアプリ:

5月16日、アップル社は App Store からダウンロードされたアプリケーションの数が500億本を超えたことを発表しました。また、同日、グーグル社からは Google Play からのダウンロード数が480億本に達したことが発表されました。このようにアプリの利用は増えていますが、その開発には手間がかかるため(特に、アンドロイド端末向けの開発)、本格的なアプリの提供は大手企業が中心となっています。

これまでのアプリ(ネイティブアプリ)は、iPhone向けはC言語・アンドロイド端末向けはJavaと異なるプログラミング言語で開発する必要がありました。また、アプリの動作確認は各端末で行う必要があるため、特に種類の多いアンドロイド端末向けの動作確認には多大な時間とコストがかかります。

これに対してHTML5ベースのアプリは、一見アプリなのですが、実はブラウザーを立ち上げてコンテンツを表示するものとなっています。そのため、iPhone/アンドロイド端末とも基本的には問題無く動作するようになっています。

今回の会場では、いくつかのブースでHTML5ベースのアプリに関する提案が行われていました。このHTML5ベースのアプリは、開発の手間とコストを大幅に削減できる可能性があります。しかし、現時点ではHTML5ベースアプリの表現力は限られています。例えば、iPhoneなどで使われているカバーフローは出来ないようです。こうしたメリット/デメリットを理解した上で取り組むと、新しいサービス機会が見えてくると思われます。

6. 売上アップにつながるフルフィルメント:

Japan IT Week の一環で開催された通販ソリューション展では、「フルフィルメント」がキーワードのひとつでした。例えば、通販ソリューション展で最大のブースを構えたヤマト運輸などヤマトグループでも、「通販事業のフルフィルメントを支援する」という切り口でサービスが紹介されていました。

東通メディアブースでは、フルフィルメントを強化したことで、「わずか数年で売上が2億円から30億円に伸びた」通販会社の事例が紹介されていました。これは、以下4つの要素を連携し最適化を図る「広告連動型フルフィルメント」で実現されたそうです:

  • クリエイティブによる新規顧客開拓
  • コールセンターによる顧客継続
  • 独自システム「通販マーケター」による効果分析
  • 物流による効果的な同梱
印刷業界でもROIの向上が主要なトピックのひとつですが、それを実現するに当たっては印刷物以外の要素にも目を向けると良いのかも知れません。

以上、2回に渡って 2013 Japan IT Week 春 の見どころをご紹介しました。しかし、ご説明不足で分かりにくい部分もあるかと思いますので、その場合にはお気軽にお問い合わせいただければと思います (^ ^) これからも様々な展示会が行われますが、その中で今回ご紹介したテーマがどのように展開していくか、またどんな新しいテーマが現れてくるのか、とても楽しみです!

2013年4月11日木曜日

顧客ニーズ別 お薦めAR

4月10日〜12日の3日間、サンシャインシティ・コンベンションセンターTOKYO(東京・池袋)では第47回プレミアム・インセンティブショーが開催されています。この展示会では様々なノベルティやセールスプロモーション用のグッズやソリューションが提案されています。

今回、昨秋(第46回)はほとんど目に付かなかったAR(Augmented Reality, 拡張現実感)が様々なブースで提案されていました。私が短い取材時間内でお話をお伺いしたものだけでも、「SuAR!(富山スガキ)」「blippAR」「COCOAR(スターティアラボ)」「Promo-PR(楽プリ)」などがありました。

そのARですが、今年の2月に同じ会場で行われた印刷機材展 page 2013 などの展示会や様々なキャンペーンを通じて、実際に触れたご経験をお持ちの方々も少なくないかと思います。では、印刷会社が顧客に提案する際には、どのARサービス/ソリューションを選べば良いのでしょうか。

顧客ニーズ別のお薦めARを明らかにするため、これまでの取材を基に下図のようなマトリックスを作成しました(縦軸:アプリアイコンのカスタマイズ可否、横軸:AR提供側からの提案内容)。この結果、大きく分けて3種類の顧客ニーズ別お薦めARソリューションが見えてきました:

  1. コスト重視派(左下):
    • 低コストでコンテンツをブラウズしたり、サイトに誘導したりする仕組みを構築したい顧客向け。
    • このエリアのARソリューションは、初期費用・ランニングコストともに、低めに設定されていることが多い。
    • COCOARは現在このエリアにいますが、将来的には右下へポジションを変えようとされています。
  2. ブランド重視派(左上):
    • 比較的安価に、オリジナルアイコンを使ったARアプリを提供したい顧客向け。
    • Aurasmaでは比較的簡単に「オリジナルアイコン」を設定・提供することができたが、現在ポリシーの見直しが進んでいるため、今後については確認が必要。
  3. 効果測定重視派(右下):
    • ARアプリを使って誰がいつどのマーカーからアクセスしたかなど、利用に関するデータを収集分析することで効果を測定し、費用対効果の最大化を目指したい顧客向け。
    • このエリアのARソリューションを提供している企業は、最先端のAR技術(画像認識技術)の研究開発に取組み、それを製品に反映させている:
      • blippARは現在検索サービス最大手のG社と協同で、ある製品の開発を進めているそうです。詳細は、近々正式に発表されるとのことでした。
      • ナント・モバイルは、そのG社でARを研究されていた方々がスピンアウトして設立した会社だそうです。
現時点で右上エリア(アイコンのカスタマイズ可能、利用状況の詳細分析可能)向けサービスを提供しているARソリューション会社は、私の知る限りではないと思われます。ただ、私が勉強不足で存じ上げないだけかも知れませんので、ご存知の方がいらっしゃいましたら是非お教えいただければと思います m(_ _)m

とはいえ、スマホ用アプリのアクセス解析ツールも増えてきていますので、例えば Aurasma系のオリジナルアイコンを使ったアプリにアクセス解析ツールを組み込むことができれば、右上エリアをカバーするARソリューションを提供される会社も現れるかも知れません。

ところで、マーケティング分野で O2O(Online2Offline, Offline2Online)は話題になっており、ARは確かに O2O ソリューションのひとつです。しかし、マーケティングで注目されているのは、リアルな店舗への誘導や店頭で商品を選んでいただくことを目的とした「Online2Offline」ソリューションであって、ARが得意とする紙媒体などからWebへ誘導する「Offline2Online」ソリューションではありません。

印刷会社が顧客にARを含むソリューションを提案する際には、ARが実際の店舗への誘導や店頭での商品選択などマーケティングの課題解決に具体的にどのように貢献できるのかについてもご説明することが重要かと思われます。そのご提案に適したARソリューションを選定するに当たって、今回のブログが少しでもお役に立てば幸いです (^ ^)