印刷物をもっと「つくる」「使う」「残す」ことを支援する、ブライター・レイターのブログです。
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2016年3月1日火曜日

正しい価格破壊の仕掛け方・逃れ方

印刷業界に限らず、さまざまな市場で価格破壊が進んでいます。皆さんの中には、「次に価格破壊を仕掛けるのは自分だ!」とお考えの方もいらっしゃるかもしれません。そんなあなたにクイズです:

  • 下の図で、価格破壊を仕掛けるのに適したエリア、あるいは絶対仕掛けてはダメなエリアは、A・B・C・D のうちどれでしょう?


続いて、価格破壊に巻き込まれて困っているあなたへのクイズです:

  • 価格破壊から逃れるために注目すべきエリアは、A・B・C・D のうちどれでしょう?

ヒントは、両方の問題とも「利益を出すエリアを考えること」です。答えが分かった方は、私までご連絡ください!正解者には豪華(かも知れない(笑))景品をご用意しております。

ブライター・レイターでは、価格破壊から逃れたい方あるいは価格破壊を仕掛けたい方の戦略立案・実践のお手伝いもいたします。ご興味のある方は、お気軽にお声がけください (^ ^)

2014年6月9日月曜日

『クオリティー企業』という方向性

6月8日(日)の日本経済新聞に一橋大学教授 楠木建氏のとても面白いインタビュー記事が掲載されていましたが、皆さんは読まれましたでしょうか?この記事によれば、楠木教授は企業を2つに分類しています。

ひとつめは、「外部環境のオポチュニティー、つまり追い風をつかまえて成長するのがうまい」オポチュニティー企業。人口が増え、経済成長が著しい新興国で伸びている企業がそれにあたります。そして、もうひとつは「風は追わずに、優れた戦略で会社の中から独自の価値をつくり出す」クオリティー企業。こちらは、風を待つのではなく自分たちでエンジンをつくるタイプです。

ところで、こちらのブログ記事でも触れましたが、これまでの取材から日米の印刷会社は顧客に対して「新しさ」を訴求する傾向が強く、英国の印刷会社は「顧客にとってどんな意味や価値があるのか」を訴求する傾向が強いことが分かりました。楠木氏流の言い方を借りれば、日米の印刷会社はオポチュニティー企業型、英国の印刷会社はクオリティー企業型のような印象を受けます。

しかし、楠木氏は記事の中で、「米国はオポチュニティー大国。長いこと先進国としてやっているが、永遠の若者だ。移民政策によって人口が増えている点が大きく、特殊な国。日本がまねをしようと思っても難しい。」と述べています。とすると、日本の印刷会社は先に成熟した英国市場を参考にすることが必要になりそうです。

実は、英国市場はインターネット広告市場の広がりという点でも日本の先を行っています。広告費全体に占めるインターネット広告費の比率は、英国の32%(2012年)に対して、日本は16%(2013年)です。こうした状況にも関わらず、英国印刷会社はクオリティー企業を指向しています。これは、英国がクオリティー国家だからだと思われます。

楠木氏は、「日本は『クオリティー国家』を目指すべきだ」と提言しています。国内印刷会社にとって、成熟した印刷市場で売上・利益を伸ばすために、英国流のクオリティー企業を目指すという選択肢もありそうです。

2014年4月11日金曜日

予想以上に刺激的なIPEX2014

2014324日〜29日の6日間、4大国際印刷機材展のひとつIPEX2014がロンドンで開催されました。今回は約400社の出展があり、コニカミノルタや富士フイルムなどのブースで意欲的な展示が見られたものの、ハイデルベルグやKBA、マンローランド、HP、コダック、キヤノン、リコー、ミヤコシといった主要な印刷機材メーカーが出展を取り止めるなど、これまでの印刷機材展とはずいぶん違った顔ぶれでの展示会となりました。

ただ、主要な印刷機材メーカーの不在によって、用紙に色や文字を印刷する以外にも印刷会社が利益を大きく伸ばせる機会はいろいろあることが、逆説的に見えてきたのがとても印象的でした。また、その機会を実現するための機材やサービスとして、以下のようなものも見えてきました:
  • 商業印刷向けバリアブル後加工機
  • 「攻め」のためのMIS
  • 産業用インクジェット技術の商業印刷への転用
  • 印刷物を使ったコミュニケーションの価値を最大化するビスポーク・サービス
  • Web上でも「おもてなし」、など

また、昨秋シカゴで開催された
PRINT13の取材結果と比較して、以下のような米国と英国の印刷会社の違いが見えてきたもの印象的でした:
  • 米国:印刷物・印刷サービスの「新しさ」を訴求する。
  • 英国:印刷物・印刷サービスが「顧客にとってどんな意味や価値を持つか」を訴求する。

実は、英国の印刷市場は結構元気です。英国の人口は日本の半分以下(約
6,800万人)ですが、印刷市場は161億ポンド(約25千億円)と日本の6割程度の規模となっています。また、印刷業界団体BPIF (British Printing Industry Federation)のアンケート結果によれば、印刷会社の55%が「事業は拡大している」と考えています。

この背景には、英国の印刷会社が提供している印刷物・印刷物の「顧客にとっての意味や価値」を真剣に考え、訴求していることがあると思われます。実際、IPEX会場や工場見学をさせていただいた印刷会社さんでお話しをお伺いしていると「英国の印刷会社さんって、ものすごく考えている」ことを強く感じました。

IPEX2014は、国際機材展に「最新の印刷機」を期待される方には物足りないものだったかもしれません。しかし、日本の厳しい市場環境を抜け出す逆襲の機会を虎視眈々と探している印刷会社の方々には、とても刺激的で参考になる展示会だったと思います。

IPEXの内容について何かご質問などございましたら、お気軽にお問い合わせください (^ ^) 面白いサンプルもお見せします♪よろしければ、今回宿泊した標準時で有名なグリニッジの写真もお見せいたします(笑)


2013年6月21日金曜日

印刷会社の競争戦略分析

印刷会社の取組みを『競争戦略』の面から評価・分析すること。
これが、「印刷情報 6月号」(印刷出版研究所)に掲載された記事「ハイブリッド印刷の最新動向 〜 国内市場における成功のポイント」を書いた際の目的のひとつでした。

これまで、「機材の導入・活用」「人材教育」「環境対応」「グローバル展開」「経営の心構え」などさまざまな視点から印刷会社に関する記事が書かれています。しかし、「競争戦略」という視点で書かれた記事は、私の勉強不足もあるかとは思いますが、読んだことがないかと思います。厳しい印刷市場を乗り越えるためには戦略が必要不可欠だと、さまざまなところで言われているにも関わらず、です。

そもそも、競争戦略とはなんでしょう?一橋大学教授 楠木健氏は、著書「ストーリーとしての競争戦略」(東洋経済新報社)で以下のように書いています:
  • 競争戦略は、「誰に」「何を」「どうやって」提供するかについてのさまざまな「打ち手」で構成されています。戦略は競合他社との違いを作るものです。さまざまな打ち手は他社との違いをつくるものでなくてはなりません。
  • しかし、個別の違いをバラバラに打ち出すだけでは戦略になりません。それらがつながり、組み合わさり、相互作用する中で、初めて長期利益が実現されます。
こうした観点で見ると、これまでの記事は「さまざまな打ち手」の紹介が中心で、「それらがつながり、組み合わさり、相互作用する中で、初めて長期利益が実現される」という部分に十分触れられていなかったようです。

今回、編集者のご厚意によりまとまったページ数をいただけましたので、ハイブリッド印刷に取組まれている印刷会社の競争戦略の分析・評価に取り組みました。その際、楠木教授の「ストーリーとしての競争戦略」という以下の様なフレームワーク(考え方)を使いました:
  • ストーリーとしての競争戦略は、さまざまな打ち手を互いに結びつけ、顧客へのユニークな価値提供とその結果として生まれる利益に向かって駆動していく論理に注目します。
  • つまり、個別の要素について意思決定しアクションを取るだけでなく、そうした要素の間にどのような因果関係や相互作用があるのかを重視する視点です。
こうした視点から競争戦略をまとめたのが、以下に挙げた図になります。四角の部分が「打ち手」、またそれぞれの打ち手をつなぐ矢印が「因果関係や相互作用」になります。こちらは、お茶や海苔、健康食品など向けパッケージ(軟包装)印刷会社 吉村紙業株式会社(東京・品川区)の例ですが、さまざまな打ち手が有機的につながって長期利益を実現していることが分かります。詳細は、「印刷情報 6月号」をお読みください (^ ^)

さて、こうした「競争戦略」の観点からデジタル印刷で成功している印刷会社を分析すると、以下のような共通点が見えてきました。これらの点につきましては、また改めてこちらのブログでご説明したいと思います:
  1. 既存事業とデジタル印刷サービスにシナジー(相乗効果)が出ている。
  2. 営業部門と生産部門が「マーケティング」で協業できている。
競争戦略ストーリーは、自社の戦略を客観的・包括的に分析・評価できる面白いフレームワークです。是非、皆さまも自社の「競争戦略ストーリー」作りに取組むことをオススメします!その際、お手伝いが必要でしたら、お気軽にお声がけください♪