印刷物をもっと「つくる」「使う」「残す」ことを支援する、ブライター・レイターのブログです。
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2017年2月7日火曜日

2021年以降の国際印刷機材展はどうなるの?

2020年までの動向は見えてきつつあるものの、2021年以降は不透明。これは、国内印刷市場ではなく、国際印刷機材展のお話です。4大国際印刷機材展は、ここしばらく以下のような周期で開催されていました:

  • 夏季オリンピック・パラリンピックイヤーにdrupa@ドイツ
  • その翌年に PRINT@米国
  • その翌年に IPEX@英国
  • その翌年に IGAS@日本

国際印刷機材展は、毎年異なる国で、各国/各地域やそのタイミングでの市場状況を反映した内容で開催されていました。確かに、印刷機などのハードウェアについては各機材展でそれほど違いはありませんでした。しかし、紹介されているソリューションやセミナーはそれぞれ独自性があって、私はそれぞれの機材展を視察するのを楽しみにしています。

しかし、今年(2017年)以降は少し様子が違います。IPEXとIGASが以下のように開催時期を早めたのです:

  • drupa2016@ドイツ・デュッセルドルフ(2016年5月31日〜6月10日)
  • PRINT17@米国・シカゴ(2017年9月10日〜14日)
  • IPEX2017@英国・バーミンガム(2017年10月31日〜11月3日)
  • IGAS2018@東京ビッグサイト(2018年7月26日〜31日)
  • drupa2020@ドイツ・デュッセルドルフ(2020年6月23日〜7月3日)

IPEXとIGASが時期を変更した背景には、drupaが「これからは開催周期を3年に変更し、次回は2019年に開催」と2015年2月に発表したことがあります。これを受けて、「IGASも3年周期に変更する」こと、あわせてJGASの開催をやめることが2015年3月に発表されました。また、2016年3月にIPEXが2017年の開催に関するリリースを出しました。

しかし、drupa2016期間中に「drupaはやはり4年周期で開催し、次回は2020年」との再度変更の発表がありました。IPEXは開催時期を再度変更する時間はなく、IGASも東京オリンピック・パラリンピックとの兼ね合いで、やはり変更は難しい状況です。その結果、2017年に2つの国際印刷機材展が開催される一方、2019年には1つも開催されないというスケジュールになりました。

では、2021年以降はどうなるのでしょう?2016年以前の周期に戻るのでしょうか。定期的・継続的に市場動向をウォッチし、またさまざまな市場の特徴を比較することを楽しみにしている私にとっては、それが望ましいです。しかし、印刷市場を巡る環境の変化は早く、国際印刷機材展の入場者数は減少傾向にあります。2021年以降は、これまでの延長線上で考えるのは難しいかもしれません。

皆さんは、2021年以降の国際印刷機材展はどうなるとお考えでしょうか?そもそも、印刷市場はどうなるでしょう。まだ少し先のことですが、頭の体操がてらいろいろ想像することをオススメします。きっと面白いことが見えてくると思います (^ ^)


2014年6月9日月曜日

『クオリティー企業』という方向性

6月8日(日)の日本経済新聞に一橋大学教授 楠木建氏のとても面白いインタビュー記事が掲載されていましたが、皆さんは読まれましたでしょうか?この記事によれば、楠木教授は企業を2つに分類しています。

ひとつめは、「外部環境のオポチュニティー、つまり追い風をつかまえて成長するのがうまい」オポチュニティー企業。人口が増え、経済成長が著しい新興国で伸びている企業がそれにあたります。そして、もうひとつは「風は追わずに、優れた戦略で会社の中から独自の価値をつくり出す」クオリティー企業。こちらは、風を待つのではなく自分たちでエンジンをつくるタイプです。

ところで、こちらのブログ記事でも触れましたが、これまでの取材から日米の印刷会社は顧客に対して「新しさ」を訴求する傾向が強く、英国の印刷会社は「顧客にとってどんな意味や価値があるのか」を訴求する傾向が強いことが分かりました。楠木氏流の言い方を借りれば、日米の印刷会社はオポチュニティー企業型、英国の印刷会社はクオリティー企業型のような印象を受けます。

しかし、楠木氏は記事の中で、「米国はオポチュニティー大国。長いこと先進国としてやっているが、永遠の若者だ。移民政策によって人口が増えている点が大きく、特殊な国。日本がまねをしようと思っても難しい。」と述べています。とすると、日本の印刷会社は先に成熟した英国市場を参考にすることが必要になりそうです。

実は、英国市場はインターネット広告市場の広がりという点でも日本の先を行っています。広告費全体に占めるインターネット広告費の比率は、英国の32%(2012年)に対して、日本は16%(2013年)です。こうした状況にも関わらず、英国印刷会社はクオリティー企業を指向しています。これは、英国がクオリティー国家だからだと思われます。

楠木氏は、「日本は『クオリティー国家』を目指すべきだ」と提言しています。国内印刷会社にとって、成熟した印刷市場で売上・利益を伸ばすために、英国流のクオリティー企業を目指すという選択肢もありそうです。

2014年4月11日金曜日

予想以上に刺激的なIPEX2014

2014324日〜29日の6日間、4大国際印刷機材展のひとつIPEX2014がロンドンで開催されました。今回は約400社の出展があり、コニカミノルタや富士フイルムなどのブースで意欲的な展示が見られたものの、ハイデルベルグやKBA、マンローランド、HP、コダック、キヤノン、リコー、ミヤコシといった主要な印刷機材メーカーが出展を取り止めるなど、これまでの印刷機材展とはずいぶん違った顔ぶれでの展示会となりました。

ただ、主要な印刷機材メーカーの不在によって、用紙に色や文字を印刷する以外にも印刷会社が利益を大きく伸ばせる機会はいろいろあることが、逆説的に見えてきたのがとても印象的でした。また、その機会を実現するための機材やサービスとして、以下のようなものも見えてきました:
  • 商業印刷向けバリアブル後加工機
  • 「攻め」のためのMIS
  • 産業用インクジェット技術の商業印刷への転用
  • 印刷物を使ったコミュニケーションの価値を最大化するビスポーク・サービス
  • Web上でも「おもてなし」、など

また、昨秋シカゴで開催された
PRINT13の取材結果と比較して、以下のような米国と英国の印刷会社の違いが見えてきたもの印象的でした:
  • 米国:印刷物・印刷サービスの「新しさ」を訴求する。
  • 英国:印刷物・印刷サービスが「顧客にとってどんな意味や価値を持つか」を訴求する。

実は、英国の印刷市場は結構元気です。英国の人口は日本の半分以下(約
6,800万人)ですが、印刷市場は161億ポンド(約25千億円)と日本の6割程度の規模となっています。また、印刷業界団体BPIF (British Printing Industry Federation)のアンケート結果によれば、印刷会社の55%が「事業は拡大している」と考えています。

この背景には、英国の印刷会社が提供している印刷物・印刷物の「顧客にとっての意味や価値」を真剣に考え、訴求していることがあると思われます。実際、IPEX会場や工場見学をさせていただいた印刷会社さんでお話しをお伺いしていると「英国の印刷会社さんって、ものすごく考えている」ことを強く感じました。

IPEX2014は、国際機材展に「最新の印刷機」を期待される方には物足りないものだったかもしれません。しかし、日本の厳しい市場環境を抜け出す逆襲の機会を虎視眈々と探している印刷会社の方々には、とても刺激的で参考になる展示会だったと思います。

IPEXの内容について何かご質問などございましたら、お気軽にお問い合わせください (^ ^) 面白いサンプルもお見せします♪よろしければ、今回宿泊した標準時で有名なグリニッジの写真もお見せいたします(笑)


2014年3月24日月曜日

ブライター・レイター流 IPEX2014の注目ポイント

本日(324日)から、英国・ロンドンで国際印刷機材展IPEX2014が開催されます。今回は、オフセット機・デジタル機ともに主要メーカーの多くが出展しないことから、「見どころのない展示会」という声も少なからず聞かれます。しかし、私は今回のIPEXでかなり面白い情報が収集できるのでは、と考えています。それは、英国は日本より一足先に印刷業界の集約化が進んでいるからです。

下のグラフは、今年の220日にハイデルベルグ・ジャパン主催のセミナーで紹介されたデータをもとに作成したものです。このグラフから、英国の印刷会社数は12年間でおよそ14,000社から10,000社減って4,000社になったこと、特にロンドンの印刷会社の減り方が激しいことが分かります。ハイデルベルグ社の方のご説明では、景気後退に加えて他国の印刷通販会社が英国の仕事を持って行っていることや、ロンドンの地価の高さがコスト競争力を引き下げていること、などがその理由として挙げられるそうです。

仮に、英国のシナリオが日本に当てはまると、日本市場はこんな状況になりそうです:
  • 印刷会社数が、現在の30%程度にまで減少する:
    • 特に、東京の印刷会社数が大きく減少する。
  • 海外の印刷通販会社が、日本国内の仕事を持って行く:
    • 欧州では、大抵の場所に印刷物を翌日配送できる状況にあるそうです。
実際に国内市場がこうした状況になるかは分かりませんが、念のためにこうした状況への対処法のアイデアを得ておくため、私は今回のIPEXで以下のようなポイントに注目して情報を収集したいと考えています:
  • 残った印刷会社/無くなった印刷会社の違い:
    • 製品やサービス内容、仕組み、顧客獲得方法、など
  • 残った印刷会社が、さらに競争力を高めるためのアイデア:
    • 商材開発・サービス開発、仕組み作り、顧客獲得方法、など
  • 英国の印刷物発注企業の戦略や課題、など

私は今回、5日間会場で取材をする予定ですが、このような観点で情報を収集・分析すると5日間でも全然足りそうもありません (^ ^; でも、折角の機会なので、セミナーに参加したりできるだけ細かくブースを回ったりしながら、いろんな方のお話しをお伺いしたいと思います。どんな提案が見られるのか、またどんなお話しが聞けるのか、とても楽しみです
(^ ^)