印刷物をもっと「つくる」「使う」「残す」ことを支援する、ブライター・レイターのブログです。

2018年6月26日火曜日

IGAS2018の見どころまとめ

2018年7月26日(木)〜7月31日(火)、東京ビッグサイトにて国際総合印刷テクノロジー&ソリューション展 IGAS2018 が開催されます。4年に1回ドイツで開催される国際印刷機材展 drupa がその時のトレンドを反映して「XX drupa」と呼ばれるのをマネて今回のIGASを名付けると、例えば以下のようになりそうです:

  • Smart Factory IGAS
  • 協業 IGAS
  • 顧客体験価値(CX) IGAS

最大のブースを構える小森コーポレーションは、ブースの中心にKOMORIソリューションクラウド KP-Connect を配置して「コネクテッド・オートメーション」の実演を行います。これは、MIS・プリプレス・プレス・ポストプレス・をKP-コネクト プロで自動連携することで、印刷工場のスマートファクトリー化を推進するものです。

また、FFGSも次世代の印刷工場「Fujifilm Smart Factory」を紹介します。これは、ブース全体を一つの工場に見立て、受注から制作・印刷・後加工までの全工程にわたって可視化・自動化・効率化を実現した印刷物生産システムになります。

デジタル印刷機材メーカー9社は、共同で Smart Factory Zone をプロデュースします。このエリアでは各社機材の連携によるスマートファクトリーの実演に加えて、計40のセミナーが開催されます。なお、メンバーはキヤノン、FFGS、グーフHPホリゾンJ Spiritsコニカミノルタリコースクリーンです。

ハイデルベルグ・ジャパンは、drupa2016で初公開されたB1枚葉インクジェット機 Primefire 106 を紹介します。その際、特設シアターでVR技術を使って製品を紹介する「Primefireスーパージャーニー」を実施するなど、Primefireの世界を体験する展示となります。

また、出展各社が開催するセミナーは、例えば「小学館が美術書印刷に選んだ新デジタルクオリティー」(コニカミノルタ)や「ーケターからみた、印刷メディアの魅力」(Smart Factory Zone)など、顧客体験価値を高める印刷サービスのヒントが得られるものが目に付きます。

今年2月に開催された page2018では「デジタル印刷機の多色化」「広い色域・色の安定性」「デジタル印刷機の用紙対応性「デジタル加飾」が話題になりました。今回のIGASでは、それらを「顧客体験価値に落とし込む」提案が行われることが期待されます。

IGASでは、AI, IoT, MA といった新しいテクノロジーやインクジェット機, デジタル加飾機, カメラ・センサーを搭載した検査機といったすごいスペックの新しい機材など、たくさんの目新しいものが紹介されます。個人的には「ブロックチェーン」ベースの機材も出ていて欲しいのですが、それはdrupa2020のお楽しみかもしれません。

印刷会社がそれらを導入・活用して売上・利益を伸ばすためには、スペックの高さや目新しさに惑わされず(笑)、「Smart Factory」「協業」「顧客体験価値」といった売上・利益増大につながるキーワードを意識しながら、あなたの会社の戦略にあったものをしっかり選ぶことが大切です。ぜひ、IGASでさらなる成長のきっかけをつかみましょう!

ところで、drupa2016 前後に書いた Smart Factory 関連記事はこちらになります。当時、「smart drupa」なんて言っていたのは私だけだったような(笑)。ご参考までに:

スマート工場はdrupa2020でどう進化するか?

『スマート作業着』開発パートナー絶賛募集中!

drupa2016に向けて:スマートワークフローでスマート印刷工場を!

drupa2016に向けて:『スマートdrupa』へようこそ!


追記:IGASに出展された最新の印刷機材・資材を分野別にまとめた「IGAS2018速報!まとめ(最終版)」を書きました!こちらもあわせてお読みください (^ ^)(2018年8月6日)


2018年6月12日火曜日

「2022年の日本の広告費(予想)」から見える印刷サービス機会


みずほ銀行産業調査部「みずほ産業調査/58 2017 No.2」(2017年12月7日発行)によれば、インターネット広告費は2021年にテレビ広告費を逆転し、2022年には2兆1,514億円に達します(なお、2022年におけるテレビ広告費は1兆9,650億円)。

2022年には、インターネット広告費は(印刷業界とも関係が深い)プロモーションメディア広告費(1兆9,683億円)をも上回ります。プロモーションメディアには、屋外、交通、折込、DM、フリーペーパー・マガジン、POP、電話帳、展示・映像他が含まれています。ちなみに、2017年当時、それは2兆875億円でインターネット広告費の約1.4倍の規模でした。

国内総広告費に占める割合をみると、2017年時点では「34%(プロモーションメディア)・31%(テレビ)・21%(インターネット)」だったのが、2022年時点では「29%(プロモーションメディア)・29%(テレビ)・32%(インターネット)となる見込みです。

この中期予測の背景として、みずほ銀行産業調査部は2021年以降における「東京オリンピック・パラリンピック特需の剥落と共に、広告主による広告予算配分の見直しも想定」されることを挙げています。

また、このような変化が見込まれる市場においてメディア事業者に求められる戦略として、フルファネルのマーケティングプラットフォームを構築すべきだと指摘しています。そして、その際に求められる能力として以下の3点を挙げています:

  • プレミアムコンテンツ制作力:
    • 高品質・広告主のブランドイメージを崩さない・集客力が高い
  • データ統合力:
    • ユーザーIDを通じて、複数のデバイス、サービスをまたいでユーザーの利用情報を把握
  • 広告関連技術:
    • ユーザーデータを活用した効率的な広告配信を可能に
    • テレビ並に単価を得るためのブランディングコンサルティングも提供

このような市場環境で、印刷会社はどのような方向性を取ることが求められるのでしょうか。例えば、以下のようなものが考えられます:

  • Webメディアと印刷媒体を組み合わせたマーケティングプラットフォームを構築すること:
    • あるいは、そうしたマーケティングプラットフォームの構築・運用を支援すること。
  • コンテンツ制作力を高めること
  • 印刷媒体からもユーザーの利用情報を把握できるサービスを提供すること
  • ユーザーデータを活用した印刷サービスを提供すること、など

こうした取り組みは、既存の印刷物発注企業が「東京オリンピック・パラリンピック特需の剥落」の中で売上・利益を維持・拡大することに貢献できますし、中小規模の印刷会社でも実践できます。7月に開催されるIGAS2018(国際総合印刷テクノロジー&ソリューション展)では、上記のような取り組みを進めるための機材もたくさん紹介されることが期待されます。

ぜひ、2022年を見据えたサービス機会を捉えることで、東京オリンピック・パラリンピック後も継続的に成長できる体力をつけてください!

『カタログ x DM x Web』で売り上げを伸ばす!

2018年3月12日、goof.lab(東京・五反田)で Beyond Digital Lab キックオフセミナー「デジタルのその先へ。」が開催されました。その中で、通販会社ディノス・セシール Chief e-Commerce Officer (CECO) 石川氏は、カタログとWebの特徴を以下のように分析しました:

  • 新規顧客獲得における強み/弱み:
    • カタログ:
      • 若年層の入り口としては親和性は △
      • 年配層は伸び代 △
    • Web:
      • 若年層への有効なリーチ手段多い ◎
      • 年配層もECでの買い物体験が増えている ◯
  • 顧客維持における強み/弱み:
    • カタログ:
      • リーチ確率が高い ◎
      • 都度のコストが大きい ×
      • フリークエンシーが長い ×
    • Web:
      • リーチ確率が低い ×
      • 都度のコストが小さい ◯
      • フリークエンシーが短い ◎

つまり、カタログとWebは対立するものではなく、むしろそれぞれの長所を組み合わせて相互補完できる相性の良いメディアなのです。

ところで、ディノス・セシールは昨年11月、ECとDMをリアルタイムで連携させるCRMを2018年4月から開始することを発表しました。これは、「カタログとWeb」にさらにデジタル印刷DMを組み合わせる施策で、カタログ(というか紙媒体)の持つ「リーチ確率が高い」という特徴を活かしつつ、「コスト」や「フリークエンシー」に関する弱みを改善するものです。

4月からの取り組みでどのような成果が出るのか。ぜひ、紙媒体を使いこなしてECでの売り上げを伸ばしていただきたいです (^ ^)

株式会社ディノス・セシール CECO (Chief e-Commerce Officer) 石川 森生 氏