印刷物をもっと「つくる」「使う」「残す」ことを支援する、ブライター・レイターのブログです。

2014年2月17日月曜日

ゲーム作りの技術を印刷ビジネスに生かせ!

先週土曜日(215日)に名古屋で開催された印刷業界のイベントPrintNext2014 に、私は関東ブロック企画の分科会「ゲーム作りの技術をビジネスに生かせ!」のコーディネータとして参加しました。こちらの分科会では、以下のご登壇者によるプレゼンテーションやパネルディスカッションを通じて、ゲーム作りの技術を印刷ビジネスに生かすポイントやゲーミフィケーションARGと印刷サービスに組み合わせて提供する可能性などを明らかにしました:

  • ゆめみ 深田 浩嗣 氏(「おもてなし」とゲーミフィケーションの専門家)
  • オフィス新大陸 坂本 犬ノ介 氏(ARGの専門家)
  • 今井印刷 今井 孝治 氏(印刷人代表)
  • 真生印刷 齋藤 達郎 氏(印刷人代表)
  • ブライター・レイター 山下 潤一郎(コーディネータ)

この分科会のため、印刷人代表のご登壇者今井さん・齋藤さんを含む関東ブロック企画チームは、坂本さんのご指導・監修の下で昨年の夏から「印刷曼荼羅調査隊」というARGを実際に企画・実施しました。また、深田さんの講演をお伺いしたり著作を読んだりした上で、入念な事前お打ち合わせを重ねました。そのため、分科会では大きな成果を得ることができました。

例えば、ゲーム作りの技術を生かすことで、印刷会社は下図のように「常識をぶち壊す」ことができます。また、ゲーミフィケーションやARGを印刷サービスの一部として提供することも十分考えられます。その理由として、以下のような点が挙げられました:

  • 「コミュニケーションによって顧客企業の課題を解決する」という立ち位置は、印刷サービス・ゲーミフィケーション・ARGに共通するため、協業の余地が大きい。
  • スマートフォンやウェアラブルコンピュータなど、技術革新はこれからも続く。ゲーミフィケーションやARGにこうした新しい動きを取り込み有効に活用するため、印刷会社の協力も必要となる。
  • 特にARGでは、リアル(現実)におけるコミュニケーションも成功の大きな要因になるため、印刷メディアの役割が重要になる。

坂本さんからは、幕末150周年イベントを盛り上げるためのARGについて山口県の印刷会社から問い合わせがあったことや、折込チラシにARGを組み合わせることで、スーパーの集客力(および店頭の面白さ!)が高まるアイデア、ARGは販促だけでなくCSRなど幅広く適用できることなども、お話しいただきました。

ただ、時間不足のため、ゲーム作りの技術をどのようにマネタイズするか(長期利益に結びつけるか)という点にまで踏み込むことができなかったのは残念でした。とはいえ、午前中の2つの基調講演(侍ハードラー 為末大氏、一橋大学イノベーション研究センター教授 米倉誠一郎氏)で出てきたキーワードのひとつである「自社を再定義する」(自社の戦う場所(事業領域)・その場所での立ち位置・仮想ライバルなどを再検討する(ずらす))にも呼応した、とても面白い内容だったと思います。

ところで、中小規模の印刷会社がゲーム作りの技術を持つことで、グローバルな大企業とも直接取引できる可能性も高まりそうです。印刷業界では概して「大きな印刷物発注企業と取引するのは大きな印刷会社」と考えられているような気がします。改めて考えると、ゆめみもオフィス新大陸も(失礼な言い方かもしれませんが)それほど規模の大きな会社ではありません。しかし、才能が豊かであるため、グローバル企業を含む大きな企業と直接取引されています。

もちろん、全ての印刷会社が大きな企業と取引する必要はありません。しかし、ゲーム作りの技術を生かすことで、そういった印刷業界の「常識をぶち壊す」ことに挑戦する中小規模の印刷会社が出てきても良いかと思います。それもイノベーションのひとつだと思われます。

今回の分科会では、ゲーム作りの技術はさまざまな印刷業界の「常識をぶち壊す」ことに有効であることが示されました。ぜひこの成果をもとに長期利益を実現しましょう!
なお、分科会の詳細はPrintNext会場で配布されたコンテンツブックをお読みいただくか、関東ブロック企画チームのメンバーにお気軽にお問い合わせください (^ ^)


2014年2月14日金曜日

印刷会社の新規需要創造パターン

世間では景気回復という言葉が使われる機会が増えていますが、印刷業界ではまだまだ厳しい状況が続いています。しかし、厳しい市場環境においても、新規需要を開拓することで事業拡大を実現している印刷会社もあります。

そうした印刷会社の新規需要創造の成功パターンを分析すると、以下のようにまとめられそうです:
  • 既存顧客の新規需要:
    • 顧客に対するサービスの)PDCAサイクルを回す中で提案する。
    • 「ホーム」に顧客を招く:
      • ホーム:自社の工場、ショールームなど
  • 新規顧客:
    • ホームページを活用する。
    • (顧客間の)口コミで広まる。
    • マスコミ(テレビ、雑誌、新聞)を活用する。
    • ターゲット顧客層の展示会に出る。
    • ターゲット顧客層を(DMなどで)じゅうたん爆撃する。

さらに、これらのパターンを「印刷会社から声を掛ける」「相手から声を掛けていただく」というパターンに分けると下図のようになりますが、この図からはいろいろなことが見えてきます。


例えば、左下の部分にあたる「(全く働きかけをしていないのに)既存顧客から声を掛けていただく」というパターンで新規需要を開拓している例は、私の勉強不足もあるかもしれませんが、お伺いしたことがありません・・・既存顧客の新しい需要は、日々の営業活動、しかも提供するサービスの質を高めるためのPDCAサイクルを回す中で、提案を通して創造することが必要不可欠なようです。

また、フォトブックのような新規顧客層の開拓も伴う商材で新しい市場を創造する場合には、自社からターゲット顧客層に対して、展示会やDMなどを通じて積極的に働きかけることが必要不可欠です。あるいは、Webを本気で活用すること、潜在顧客間での口コミで広まる仕掛けを作ること、マスコミに取り上げてもらえるよう広報力を高めること、などを通してお声掛けいただく機会を増やす努力が重要になります。つまり、新規顧客の需要を創造するためには、これまでとは大きく異なるマーケティング活動が求められます。

先週開催されたpage2014でも、印刷営業のスキル向上を支援するサービスが紹介されていました。印刷会社が新規需要を創造するためには、印刷営業スタッフの提案力を高めることはもちろん大切です。しかし、工場見学会を開催することや、Webサイトを活用すること、ターゲット顧客層に対して展示会などで積極的に働きかけることなど、新しいマーケティング活動に取り組むことも不可欠です。

2014年に「攻め」に転じることを目指す印刷会社の皆さま、ぜひマーケティングへの取り組み強化を通じて実現しましょう!

2014年2月10日月曜日

page2014レビュー:スキルレス時代の稼ぎ方

page2014は、2月5日〜7日の3日間、サンシャインシティコンベンションセンター(東京・池袋)において「始動!コミュニケーション・ファクトリー」をテーマに開催されました。JAGATの発表によれば、来場者数は3日間合計で65,220人で前回(64,760人)を僅かですが上回りました。

pageでは毎回、最新印刷機材の紹介とあわせて、印刷会社の「稼ぎ方」も提案されています。今回のpageを取材して見えたことのひとつに、多くの印刷会社はいまだにスキルレスをウリにした印刷機材を活かした(あるいは使わない)稼ぎ方を模索中であることが挙げられます。スキルレス時代のコミュニケーション・ファクトリーの稼ぎ方には、以下のようなものがありそうです:
  1. コスト競争力で稼ぐ
  2. 印刷以外のメディアを絡めて稼ぐ
  3. 内製化で稼ぐ:
    • 前後のプロセスを内製化して長期利益を伸ばす。
  4. 商材を増やして稼ぐ:
    • スキルレス機材を活かして、新たな分野の商材を提供する。
  5. 企画力・相談力で稼ぐ
  6. 新しい顧客層で稼ぐ
  7. あえて高いスキルで稼ぐ
今回のpageでは、1・2が多く目に付いたものの、3〜5も含めて幅広く紹介されていたかと思います。特に今回は、小ロット対応・オンデマンド対応を意識した後加工機がさまざまなブースで紹介されていたことから、3(資金力のあるところにとっては4)の可能性が大きく高まっているように感じました。「刷って終わり」という時代が本格的に終焉しつつある、というか。

ただ、6や7のようなパターンの紹介があまり見られなかったのが少々残念です(単に私が見落としているだけかもしれませんけど (^ ^; )。私は、個人や小規模事業者、海外市場といった新しい顧客層に向けたサービスは、非常に大きな可能性があると考えています。また、スキルレス時代だからこそ、職人技的なデザイン、文字組版、印刷、加工の価値が高まると思います。

興味深かったのは、日本フォーム印刷工業連合会(2F DT-4)のブースで、6のパターンのひとつであるスマートフォンを使った個人向けサービスが紹介されていたことです。太平洋印刷はスマホから絵はがきを注文できるサービス「絵はがき」「投函しま〜す」、カワセコンピュータサプライはスマホから長尺ポスターを注文できるサービス「スマホ de ポスター」をそれぞれ紹介していました。

そういえば、初日の午前中に受講したPODiのセミナーで北米のデジタル印刷市場規模予測が紹介されたのですが、大きく伸びているデジタル印刷市場の中で請求書(下の写真の Transactional)だけは縮小傾向を示していました。こうした市場動向を反映して、フォーム印刷会社では新しい取組みが進んでいるようです。

2014年、印刷会社はpageで得たものを活かして、どのような稼ぎ方で攻めに転じて長期利益実現に踏み出すのでしょう。この際には、1〜7の複数を組み合わせることも効果的です。例えば、1・3(・5も少々)・6を組み合わせて、個人や小規模事業者向けの商材特化型印刷通販サービスを企画・提供するとか。いろいろなビジネスモデルが出てきそうで、とても楽しみです (^ ^)

2014年2月3日月曜日

「工場のマーケティング力」を強化すべし!

御社の工場にたくさんの既存顧客(印刷物発注企業)や潜在顧客、パートナー企業が連日集まり、みんなで活発に意見を交換し、どんどん新しい仕事が生まれ、御社のブランド力も高まる。こうした野望(笑)も、「工場のマーケティング力」を強化すれば、十分可能になります。

そもそも、大人も工場見学は大好きです。少々古いデータではありますが、20123月にJTBが発表した「工場見学」に関するアンケート調査によれば、回答者の63%が工場見学の経験あり、経験のない方々の76%が工場見学をしてみたいと回答しました。工場には、たくさんの人を集めるパワーがあります。「工場のマーケティング力を高める」ことで、そのパワーをより強力なものにできます。

ここ数年、マーケティング力強化を進める印刷会社も増えていますが、その際、何故だか営業のスキルアップの一環として取り組みところが多いような気がしています。マーケティングと営業は別の業務であり、異なるスキルが求められるにも関わらず、です。

マーケティングの大家フィリップ・コトラー氏によれば、営業担当者の仕事は注文を取ること、マーケティング担当者の仕事は需要とブランドを創造することです。工場のマーケティング力を高める = 工場で需要とブランドを創造する取組みは、営業の受注力向上を実現するものでもあり、決しておかしなことでも間違ったことでもありません。

では、「工場のマーケティング力」を強化するにはどうすれば良いのでしょうか?例えば、以下のような取組みを進めることが求められます:
  • 工場に遊び心を持たせる。
  • 「顧客の顧客」に刺さる印刷物を製造する。
  • 設備のマーケティング寿命を意識する。
  • 積極的に情報発信する。

多くの顧客(印刷物発注企業)や潜在顧客、パートナー企業の方々が集まり、常に新しい仕事が生まれ、ブランド力を高めるためには、やはり何かしら楽しい仕掛けが必要になります。また、顧客が狙ったその顧客(印刷会社からみれば「顧客の顧客」)にしっかりと刺さる実際の印刷物へと、議論の成果を落とし込む力も重要です。その際、利益率を高めるためにこちらの記事でご紹介した設備のマーケティング寿命を意識すること、一連のサイクルにもっと多くの方々を巻き込むために積極的に情報発信することなども、必要不可欠になります。


この詳細については、株式会社ショーワの「ショーワ新春フェア」と同時開催の講演会「聞かなきゃ損する!未来を破壊する印刷会社の戦略」(213日(木)14時〜@東京・西神田)で、国内外の先進企業の事例を交えてお話しさせていただく予定です。定員30名のイベントですので、皆さんお早めにお申し込みください!会場でお会いできるのを楽しみにしております (^ ^)