印刷物をもっと「つくる」「使う」「残す」ことを支援する、ブライター・レイターのブログです。
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2014年1月15日水曜日

メッセージとしての印刷メディア

メディアはメッセージである。

メディア学者マーシャル・マクルーハンによるこの有名な言葉が「メディア論」(1964年刊)で広まってから、今年(2014年)で50年になります。この50年間、メディアを巡る状況は大きく変わりました。50年前といえば、テレビや電話(まだ携帯できないヤツです(笑))が一般家庭で使われ始めた頃です。

もちろん、変わらない点もあります。例えば、印刷が冷たくない(クールではない)メディアの代表として挙げられる点とか (^ ^; それでも、印刷メディアは50年間、主要なメディアのひとつとして使われてきました。その理由のひとつとして、テレビのような冷たい(クールな)メディアよりも利用コストが低いことが挙げられます。

しかし、Webメディアの登場により、状況は大きく変化しています。皆さんもご存知の通り、Webメディアは印刷メディアよりも冷たい(クールである)ことに加えて、その利用コストは印刷メディアよりも低くなっています。また、そのコスト差は日々拡大しています。

このような状況を乗り越え、印刷メディアで長期利益の確保を目指す印刷会社は、何を考えれば良いのでしょうか。そのヒントは、「メディア論」の中にもありそうです。例えば、以下のような文章から、21世紀の印刷メディアの方向性も見えてきそうです:

  • 人間の結合と行動の尺度と形態を形成し、統制するのがメディアに他ならない。
  • どんなメディアでもその「内容」はつねに別のメディアである。
  • 連続性が瞬時性に道を譲ったとたんに、人は構造と構成の関係の世界に入っている:
    • (活字および印刷文化は)画一と連続を生む
  • メディアは相互に作用し、新しい子孫を生み出す。

この時、「メッセージとしての印刷メディア」という観点から考えるのも良さそうです。スマホやタブレットでいつでもどこでも必要な情報を検索・入手できる現在において、印刷メディアを使うことでどのようなメッセージを届けることができるのか。

あわせて、スマホ・タブレット時代において、印刷メディアはどのように人々の結合と行動の尺度と形態を形成し、統制できるのか。印刷メディアを電子メディアと相互に作用させることで、どのような新しい子孫を生み出せるのか。こういった点について思いを巡らせることも、新しい印刷メディアを考える際に役立つかと思います。

これらは、印刷メディアについてのノウハウを持った印刷業界ならではの視点・取組みです。「メディア論」刊行50周年の今年、ぜひ、こうした観点からも長期利益実現の道筋を検討し、見出しましょう!

2014年1月8日水曜日

2014年版 印刷会社に求められる戦略:実践編

前回は基本方針編として、印刷会社が2014年に踏まえるべき4つの新しい『基本方針』をご紹介しました:

  • 長期利益を実現する。
  • 違いをつくって、つなげる。
  • 需要とブランドを創造する。
  • 『顧客の顧客』からスタートする。

これらの新しい基本方針への転換を実現するためには、全社員を巻き込んで以下のような取組みを進めることが求められます:

  • 積極的に情報発信する。
  • 表現力とSTP力を強化する。
  • 顧客の目的・成果を共有する。
  • 基本方針との整合性を確認する。

積極的に情報を発信する:
現在、通常の営業活動以外での情報発信に力を入れている印刷会社は、それほど多くないように思います。しかし、積極的に情報を発信することは、自社そして自社サービスをより広く・深く知っていただくことにつながります。また、その反応を通じて自社の違い(強み)を把握したり、顧客(潜在顧客を含む)や『顧客の顧客』についての理解を深めたりすることなども可能になります。

情報発信の機会としては、以下のようにさまざまなものが考えられます。こうしてみると、情報発信については多くの印刷会社で改善の余地がありそうです。これらのメディアを存分に活用しているところは、まだ少なそうですから:

  • Web上での情報発信:自社ホームページ、ブログ、SNS、など
  • リアルでの情報発信:
    • 印刷物を活用:チラシ、DM、カタログ、など展示会への出展:
    • マーケティング関連・顧客の業界向けのイベント、など
    • 自社イベントの開催:自社サービス説明会、工場見学、オープンハウス、など
    • マスメディアへの露出:テレビ、新聞、雑誌、ラジオ、など

表現力とSTP力を強化する:
情報発信の効果を高めるためには、表現力とSTP力を強化することも必要です。皆さんもご存知の通り、印刷物の効果を高めるためには、プリプレス・プレス・ポストプレスというプロセス全体の強化を通じて表現力を向上することが求められます。

このうち、プリプレス(企画やデザインなど)のスキルは、Webなど印刷物以外のメディアでの表現力強化にも使えそうです。こちらの記事でもご紹介したように、WebやアプリにおけるUI/UX向上に、印刷業界で培われてきたプリプレスのスキルを役立てることができるためです。

しかし、残念なことに、多くの印刷会社ではDTPの導入によってプリプレスのスキルが顧みられなくなり、プレスやポストプレスの分野でもスキルレス化が進んでいます。実は、こうした状況に直面していることが、表現力強化 = 差別化という図式につながります。自社内でなくなりつつあるスキルを取り戻すこと、他社との協業を通じて自社に足りないスキルを取り込むこと。表現力を強化するには、こうした取組みも重要になります。

STPというのは、Segmentation(セグメンテーション)・Targeting(ターゲティング)・Positioning(ポジショニング)という3つの言葉の頭文字をあわせたもので、「顧客層や違い(強み)を見える化する」ための考え方になります。STP =「顧客層や違い(強み)の見える化力」を強化することで、印刷会社はより的確に情報発信の対象や使うべきメッセージを選ぶことができ、効果を高めることができます。

STP力を強化するには、戦略の3Cと言われる顧客(Customer)・競合(Competitor)・自社(Company)について情報を収集し、図表を用いて分析するトレーニングが有効です。私が個人的に良く使うのは、こちらで使ったような2x2 マトリックスこちらのような項目別対比表です。他にもさまざまな分析・結果の提示手法がありますので、いろいろ試して自社にあったものを見つけ、STP力をどんどん強化してください。


顧客の目的・成果を共有する:
顧客の目的・成果を共有することは、印刷会社が長期利益を実現するために重要なことです。これを通じて、印刷会社は顧客企業と深く継続的な関係を構築できるためです。そして、そうした関係作りは、印刷会社が顧客企業の成果増大に貢献できるノウハウを豊富に持つことを示すところから始まります。残念ながら、印刷会社がそのようなノウハウを持っていることを知らない印刷物発注企業は少なくないためです。

「顧客の成果増大に貢献できる豊富なノウハウ」を示すには、それをまとめた資料を作成・提示することが有効です。その資料にこれまでの実績に加えて、提供しているサービスの可能性や新しいコミュニケーションのアイデアなども盛り込むと、さらに魅力的になるかと思います。

この資料を作成することは、拙訳書「未来を破壊する」でジョー・ウェブ博士が示しているような、印刷会社の提供するものを「印刷物」から「コミュニケーションサービス」に進化させることにも役立ちそうです。この資料の作成を通じて、ぜひ顧客の目的・成果の共有への第一歩を踏み出してください。


基本方針との整合性を確認する:
情報発信や表現力・STP力の強化、顧客の目的・成果の共有といった取組みの方向性や成果と、基本方針との整合性を確認すること。これは、それぞれの取組みの成果や長期利益をより大きなものにします。また、これらの取組みは全社で進めるものであることから、社員全員の意識を揃えることにも役立ちます。

基本方針との整合性の確認に全社員を巻き込むためには、社員が評価や改善策についてコメントしやすい環境作りが求められます。また、得られた評価やコメントを広く社内で共有する仕組みも必要です。マネジメントが、社員からのコメントを活かした改善策を策定・実践することも重要です。これらは、社員も長期利益の実現に参加しているという当事者意識を高めることにもつながります。ぜひ、この「確認」という取組みも進めてください。


ところで、前回と今回の2回にわたってご紹介した基本方針や取組みは、印刷会社だけでなく、印刷会社の顧客企業の競争力強化にも有効です。全社員さらには顧客も巻き込みながら新しい基本方針に沿った取組みを進めることで、2014年は長期利益の実現に向けた大きな一歩を踏み出しましょう!

2014年1月6日月曜日

2014年版 印刷会社に求められる戦略:基本方針編

比較的長めのお正月休みの間に、2014年の事業プランを練った印刷業界関係者も多いのではないでしょうか。今回、2014年の売上・利益拡大をより確かなものにするため、印刷会社が踏まえるべき4つの『基本方針』を挙げてみたいと思います。皆さんの事業プランは、これらの基本方針に沿ったものになっていますでしょうか:

  • 長期利益を実現する。
  • 違いをつくって、つなげる。
  • 需要とブランドを創造する。
  • 『顧客の顧客』からスタートする

まず、自社の利益を削り続ける過剰な価格競争から抜け出し、長期にわたって継続される利益(長期利益)の実現へと大きく方針を転換することが重要になります。その方針転換を確かなものにするためには、積極的に「違いをつくって、つなげる」ことで横並び意識から抜け出すことが求められます。


不況やインターネットの普及などを背景に、印刷業界は利益を出しにくい競争構造へと急速に変化しています。経営学者の一橋大学教授 楠木建氏によれば、利益を出しにくい競争構造にある業界では、「違いをつくって、つなげること」= 優れた戦略を立案・実践することが長期利益実現に当たって重要になります。

ところで、印刷会社の間ではここ数年「自社の強みは何か」を把握する重要性が指摘されてきましたが、「違い」と「強み」はどのような関係にあるのでしょう?「強み」は必ず「違い」です。「違い」は強みだったり弱みだったりしますが、考え方や取組みによって、印刷会社は弱みを強みにできます。つまり、「違い」は印刷会社の「強み」そのもの、あるいは「強みの種」なのです。「違いをつくって、つなげる」ことは、印刷会社の強みをどんどん増やすこと、「強み」をさらに強化することなのです。

また、他社の既存の仕事を価格競争で奪うことから「需要とブランドを創造する」ことへ、自社の設備ではなく『顧客の顧客』の潜在的な欲求からスタートすることへといった方針の転換も必要不可欠です。このあたりにつきましては、印刷出版研究所「プリントソリューション2014」やプリテックステージニュース 201415日号(18面)「2014年への提言」などにも書かせていただいておりますので、こちらもあわせてお読みください。

印刷会社にとって、これらの新しい『基本方針』へと転換することが、2014年に売上・利益の拡大に向けた逆襲につながります。では、方針転換を実現するためには、どのような取組みが必要なのでしょう?次回は、そうした取組みの例をご紹介する実践編です。お楽しみに (^ ^)