印刷物をもっと「つくる」「使う」「残す」ことを支援する、ブライター・レイターのブログです。
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2013年6月4日火曜日

2013年版 印刷通販市場 新規参入/活用ポイント

前回のブログでご紹介した記事が「印刷通販Book」に掲載されました!
これは、ニュープリンティング社からプリテックステージ 2013年5月号増刊として発行されたものです。今回の記事では、印刷会社による印刷通販市場への新規参入戦略立案のポイントとして以下のような点を挙げました:

  • 印刷会社相手ではなく、顧客と直接やり取りすること。
  • 「絞り込んだ市場」に向けてサービスを提供すること:
    • 特に、これまでの印刷通販会社が取りこぼしてきた市場:
      • 個人向けサービス
      • 中小規模サービス業向けサービス
      • 海外市場向けサービス、など
  • 「絞り込んだ商材」を提供すること:
    • 名刺やショップカード、チラシ、DM、など
    • 既存の設備で対応できる商材
  • 高い UI/ UX(User Interface/ User Experience)を実現すること。
  • 小さく始めてフットワーク軽く展開すること、など

詳細につきましては、記事をお読みください!印刷通販Bookには、ラクスルの松本社長の講演概要やグラフィック、プリントパックなど国内の主要印刷通販会社10社の取材記事が掲載されていてとても読み応えがあり、また勉強になります。

ところで、ラクスル松本社長の記事の中に、印刷通販が引き起こした変化を上手く使う方法として「印刷通販を下請け会社として使う」という提案がありました。私もこの考え方には賛成で、実はもう少しページ数があれば、記事中でこうした点についても触れたいと考えていました。

この場合重要なのは、松本社長もご説明されている通り、印刷物を安く提供するためにではなく「自社サービスの付加価値を高めるため」に印刷通販を下請け会社として活用することになります。これは例えば、販促支援サービスの提供に当たって、その費用対効果を高めることに注力する中で印刷通販サービスを様々な選択肢の中のひとつとして活用する、ということです。

さて、費用対効果を高める際には、特に「効果」を明らかにするために KPI(Key Performance Indicator、重要業績評価指標)を定義し、それを継続的に測定・評価する必要があります。KPIは、Webマーケティングの領域では広く使われている言葉/考え方なのですが、印刷業界で詳しい方はそれほど多くないようです。

顧客のコミュニケーションの『効果』を表す適切な KPIを設定し、継続的に測定・評価・改善すること。その際、印刷通販サービスを適切に活用して『費用』を抑えること。この両面を揃えることで、印刷会社は印刷通販が起こした大きな変化を武器にすることができると考えます。そういえば、拙訳書「未来を破壊する」でも「印刷ビジネスの新しいルール」のひとつとして、以下のような項目が挙げられていました:

  • 顧客のコミュニケーション全体のROI(費用対効果)、特に印刷物とは関係のない取組みに集中すること。
まだ、こうした考えでコミュニケーションサービスを開発・提供されている印刷会社は限られています。是非、御社でもこのような取組みを「小さく始めてフットワーク軽く展開」して、「未来を破壊」してください!

2013年5月19日日曜日

2013 Japan IT Week 春 の見どころ(詳細編). . . (2)

前回に続いて、2013 Japan IT Week 春 の見どころの詳細をご紹介したいと思います。

3. AR分野の主要プレーヤーがそろい踏み:

これまでもこのブログでは様々な展示会で提案されていたARのご紹介をしてきましたが、今回は注目してきたプレーヤーが一同に介する大変賑やかで華やかなものでした。その結果、これまではAurasmaのエンジンが中心だったのが、技術的にも様々なものが紹介されて選択肢が増えてきているのを感じました。

ただ、各ブースでの紹介は「ARとは何か」の紹介が中心で、そのサービスが他のものと比べてどのような特徴があるのか、(他サービスではなく)そのサービスを採用するとどのようなメリットがあるのか、といった「何故、それを採用すべきなのか」についての説明がありませんでした。

「国内ではなかなかARが立ち上がらない」という声も聞かれますが、その理由のひとつに「どのサービスを選ぶべきか分からない」というものも挙げられるかと思います。是非、主要プレーヤーには各社ARの特徴、他社とは異なる特徴を積極的にアピールすることを通じて、国内AR市場の立ち上げを加速していただくことを期待したいと思います。

4. UI/ UX:紙媒体で培ったノウハウをアプリやWebサイトに適用できそうな:

最近、Web系の雑誌などでも「UI/ UX(User Interface/ User Experience、ユーザーインターフェイス/ユーザー体験)」に関する記事が増えてきていますが、今回の会場でも UI/ UX に関する展示が見受けられました。そのひとつ、フェンリルブースで「UI/ UX」に関するミニセミナーをお伺いしたのですが、その中で「UI/ UX向上のためには「フォントの大きさ」や「アイコンの使い方」などに気を使う必要がある」といったお話がありました。

これは、印刷業界でいうところの『グラフィックデザインのスキル』が求められるということかと思います。先の例はひとつの画面の話ですが、Webサイト全体あるいはモバイルアプリ全体で考えれば『エディトリアルデザインのスキル』も必要になるでしょう。こうした紙媒体で培われたデザインのスキルが、今、印刷会社がITの領域に切り込む武器のひとつになりそうです。

5. HTML5ベースのモバイルアプリ:

5月16日、アップル社は App Store からダウンロードされたアプリケーションの数が500億本を超えたことを発表しました。また、同日、グーグル社からは Google Play からのダウンロード数が480億本に達したことが発表されました。このようにアプリの利用は増えていますが、その開発には手間がかかるため(特に、アンドロイド端末向けの開発)、本格的なアプリの提供は大手企業が中心となっています。

これまでのアプリ(ネイティブアプリ)は、iPhone向けはC言語・アンドロイド端末向けはJavaと異なるプログラミング言語で開発する必要がありました。また、アプリの動作確認は各端末で行う必要があるため、特に種類の多いアンドロイド端末向けの動作確認には多大な時間とコストがかかります。

これに対してHTML5ベースのアプリは、一見アプリなのですが、実はブラウザーを立ち上げてコンテンツを表示するものとなっています。そのため、iPhone/アンドロイド端末とも基本的には問題無く動作するようになっています。

今回の会場では、いくつかのブースでHTML5ベースのアプリに関する提案が行われていました。このHTML5ベースのアプリは、開発の手間とコストを大幅に削減できる可能性があります。しかし、現時点ではHTML5ベースアプリの表現力は限られています。例えば、iPhoneなどで使われているカバーフローは出来ないようです。こうしたメリット/デメリットを理解した上で取り組むと、新しいサービス機会が見えてくると思われます。

6. 売上アップにつながるフルフィルメント:

Japan IT Week の一環で開催された通販ソリューション展では、「フルフィルメント」がキーワードのひとつでした。例えば、通販ソリューション展で最大のブースを構えたヤマト運輸などヤマトグループでも、「通販事業のフルフィルメントを支援する」という切り口でサービスが紹介されていました。

東通メディアブースでは、フルフィルメントを強化したことで、「わずか数年で売上が2億円から30億円に伸びた」通販会社の事例が紹介されていました。これは、以下4つの要素を連携し最適化を図る「広告連動型フルフィルメント」で実現されたそうです:

  • クリエイティブによる新規顧客開拓
  • コールセンターによる顧客継続
  • 独自システム「通販マーケター」による効果分析
  • 物流による効果的な同梱
印刷業界でもROIの向上が主要なトピックのひとつですが、それを実現するに当たっては印刷物以外の要素にも目を向けると良いのかも知れません。

以上、2回に渡って 2013 Japan IT Week 春 の見どころをご紹介しました。しかし、ご説明不足で分かりにくい部分もあるかと思いますので、その場合にはお気軽にお問い合わせいただければと思います (^ ^) これからも様々な展示会が行われますが、その中で今回ご紹介したテーマがどのように展開していくか、またどんな新しいテーマが現れてくるのか、とても楽しみです!

2013年5月16日木曜日

2013 Japan IT Week 春の見どころ(詳細編) . . . (1)

2013年5月8日〜10日の3日間、東京ビッグサイトで開催された「2013 Japan IT Week」は、来場者数(主催者の発表、速報値)84,534名の大きな展示会でした。展示内容も印刷業界の観点から見ると非常に刺激的なものがたくさんありました。その見どころの概要を前回のブログでご紹介しましたが、今回からその詳細をお伝えしたいと思います:

1. オウンドメディア向けサービス:

このブログでもこちらの記事でオウンドメディアについてご紹介しましたが、今回の展示会ではそれを活用するための様々なツールが提案されていました。

例えば、ゆめみブースでは、オウンドメディアを通じてファンを増やすエンゲージメント・プラットフォーム「Sprocket(スプロケット)」が展示されていました。Sprocketは、ゲーミフィケーションの手法を使うことでサイトへの訪問頻度を高めたりサイト内の回遊率を高めるたりするプラットフォームで、既にベネッセコーポレーションやネスレ日本などで導入されているそうです。

アド・ダイセンブースには、オウンドメディアとDMやチラシといったリアルメディアをつなぐO2Oソリューション「mottoco」が紹介されていました。顧客がDMや屋外広告、デジタルサイネージなどにあるQRコードをmottocoアプリから読み込むことで、いつでも手許に持っておくこと = 「クリップ」することができるというサービスです。これはまだ開発中ですが、夏頃にはスタートする予定だそうです。とても面白そうなソリューションなので開始が楽しみです。

また、様々なサイト内検索エンジンが紹介されていたのも印象的でした。例えば、フォルシアが提案していたカスタムメイドの検索エンジン「Spook(スプーク)」は、サイト内高速商品検索とマーケティング支援ツールの2つの側面を持つソリューションです。5〜6年前からサービスを提供しているそうですが、これまでにるるぶトラベルや日本旅行といった旅行会社、JAL・ANAといった航空界社、ニッセンやカウネットといった通販会社など、様々な業種で採用されています。このうちるるぶトラベルは、このソリューションを導入したことで売上が1.5倍になったそうです。

こうしたオウンドメディアへの来訪を支援したり自社サイト内の回遊率を高めるソリューションは、マーケティングサービスプロバイダーへの転換を目指す印刷会社にとって有効なものだと思います。


2. 「割引」や「お得」を売りにしないO2Oソリューション:

このブログでもこれまで何回かO2Oについて取り上げてきましたが、Web & モバイルマーケティング EXPO でも「O2Oゾーン」が設置されるなど、O2Oは主要トピックのひとつでした。ただ、その多くは「スマホにクーポンやお得情報を配信する」というものでした。

もちろん「安く買いたい」「得をしたい」という消費者が多いことは確かなので、こうしたソリューションのニーズが高いことは理解できます。しかし、個人的には売り手側から見た時に「安売り競争」を回避できるソリューションの方が興味があります。

NSDブースで紹介されていた「FIND! FUKUOKA」というO2Oソリューションは、海外からの観光客の「お役立ち」を目的とした面白いものでした。これは、「FIND」というセンサーを用いたピンポイントPush配信と「翻訳スカウター」という翻訳ソリューションを組み合わせたモバイルアプリになります。

このアプリを使うと、天神、博多駅、博多港などに設置しているデジタルサイネージに近付くと、福岡にある施設のイベント情報などを入手できます。また、ベイサイドプレイス博多」にある施設内の看板や飲食店のメニューにカメラを向けると、日本語表示を英語・韓国語・中国語(繁体語/簡体語)に変換できます。このアプリは韓国で話題になっていて、韓国から福岡にいらっしゃる観光客の多くは、福岡に到着する前に韓国国内でアプリをダウンロードされているそうです。

このアプリは、観光客の観光スポット間の回遊状況を把握することにも役立ちます。こうしたデータをもとに、観光スポット間の移動手段を充実させたり、別のスポットへの回遊を促進したりといった展開も検討されているそうです。

印刷業界でも「地域の活性化」は注目の分野です。「安さ」をキーワードにある場所への誘導を促進するだけではなく、地域内のたくさん場所を訪問(回遊)していただいて楽しい思い出をたくさん作っていただく(その間、美味しいものを食べていただいたり、素敵なお土産を買っていただいたり)というソリューションの開発・提供を通じて、地域の活性化に貢献するサービスも魅力的かと思います。

すっかり長くなってしまいましたので、見どころ(詳細編)の第1回はこのあたりで終わりにしたいと思います。次回は、印刷業界でも話題の「AR」関連の展示などについてご紹介ししますのでお楽しみに (^ ^)

2013年3月10日日曜日

JAPAN SHOP 2013 まとめ(1):O2O = スマホへのクーポン配信?

3月5日〜8日に東京ビッグサイトで開催された店舗総合見本市 JAPAN SHOP や流通情報システム総合展 リテールテックでは、O2O (Online to Offline/ Offline to Online)に関する提案が数多く見られました。今回の展示会ではスマートフォンやタブレット端末を活用したソリューションが花盛りでしたが、O2Oはその中の『販促向けソリューション』の中心でした。

ただ、その提案の多くは「スマホでクーポンなどお得情報を得る」という使い方で、個人的にはあまり面白みは感じませんでした。何故なら、メールやウェブサイト、SNS、企業アプリなどでお得情報を得る機会は既に十分にあるように思うからです。スマホならではの面白い使い方の提案、あるいは定価で商品を販売するための提案があれば、もっと刺激的な展示会になったかと思います。

そういう意味では、例えば、リテールテックの大日本印刷ブースで紹介されていた「P2Pソリューション」 (Peer to Peer、スマホ端末間での直接通信)は、DNPの意図を越えた面白い展開を想像させてくれました。同じくDNPが提案していた「音楽に反応するARソリューション」も、AR = 画像認識だという既成概念を打ち壊す興味深いものでした。インディゴ社の商業施設内の回遊性を高めるソリューション(「買い回り」促進ソリューション)も、他社とは異なる視点で開発・提供された面白いものでした。

また、今回の展示会では、「デジタルサイネージを活用したO2Oソリューション」も見どころのひとつでした。デジタルサイネージに双方向性を持たせることで「巨大なスマホ(あるいはタブレット端末)」のようにし、店頭でのプロモーションや販売などで活用するというソリューションです。

JAPAN SHOP のマックレイ社ブースでは、デジタルサイネージにカメラを組み合わせ、その前を通過した子供の興味を引くようなARソリューションが最近人気だというお話しをお伺いしました。そういえば、またDNPのお話しで恐縮ですが、1月に開館したドットDNP(東京・新宿区)の地下にある「デジタルえほんミュージアム」でも、絵本と魔法の杖(!)、そしてARを組み合せたソリューションは子供達に大人気でした。

NCRブースで紹介されていた「エンドレス・アイル」は、狭い店頭を有効活用するためのデジタルサイネージをベースにした eコマースソリューションです。既に海外では使われていて、国内市場向けには今回の展示会に合わせて投入されました。ご担当者によれば写真のようなアパレル企業での導入を想定されているそうです。自動販売機のようなこのソリューションは、物流を含むフルフィルメント部分もあわせて充実させることで、大きな可能性が見えてきそうです。

このように、端末の多様化そして目的の多様化が進むO2Oソリューションに対して、印刷会社としてどのように取り組むのか、また印刷物をどのように組み合わせるのか。こうした観点で新しいコミュニケーションサービスの開発・提供を進めることも、「未来を破壊する」ことに繋がります。

ところで、今回の展示会の見どころは以下のようにまとめられるかと思います:

  • 「軽やか」だったり「華やか」だったりする店舗空間作り:
    • パステルカラーの壁紙やタイル
    • 植物をモチーフにしたデザイン
    • プロジェクションマッピングなど、3D的な表現、など
  • スマートフォンやタブレット端末向けソリューション花盛り:
    • 販促に加えて、受発注、社内情報の見える化、など様々な提案
      • ARやSNS、P2Pなどと組み合せたO2Oソリューション
    • 「巨大なスマホ」としてのデジタルサイネージ:
      • 販促ソリューション
      • 自動販売機的な活用
  • 「白」が広幅プリンターの活用ポイントに
  • 電子ペーパーの可能性再考
  • 販促支援プラットフォーム戦争激化の予感

引き続きこのブログで、JAPAN SHOP やリテールテックで得た情報の分析を進めていきたいと思います。お楽しみに (^ ^)

2012年10月31日水曜日

スマホベースの O2O 最新動向 . . .(2): Online to Offline

前回に引き続き、Web & モバイル マーケティング EXPOにおけるO2Oのソリューションをご紹介します。今回は、Online to Offline のソリューションです。

今回の会場では、博報堂アイ・スタジオが Yahoo! JAPANとの共同事業「Yahoo! JAPAN年賀状」を紹介していました。これは、住所が分からなくてもフェイスブックの友達やツイッターのアカウント、メールアドレスが分かっている友人・知人に紙の年賀状が送れるというサービスになります。展示会には出展されていなかったのですが、同様のサービスには日本郵便と電通の合弁会社JPメディアダイレクトが提供するサービス ポストマンなどもあります。

「住所が分からなくても送れる」というサービスは年賀状シーズンになるとよく目にするのですが、実は、通常のプロモーションにも使えるのではないかと、私は考えています。例えば、Facebookの企業ページに「いいね!」を押してくださった方だけに特別なデザインと内容のDMや販促品をお送りするとか。これは、ファンを集めることに加えて、ファンを維持することにもつながると思います。

フェイスブックなどSNSを活用したマーケティング(拙訳書「未来を破壊する」でいうところのインバウンドマーケティング)は、これから益々重要になります。こうしたOnline2Offlineのサービスを追加することで、インバウンドマーケティングの効果は更に高まると考えられます。また、この場合はDMや販促品など「リアル」なものを送付するため、印刷業界にとっても魅力的なソリューションになります。

ただ、現時点ではこうしたOnline2Offlineのソリューションは、企業のプロモーション活動にはあまり活用されていません。その理由は、企業側がこうしたプロモーションの可能性を十分に理解していないからだと思われます。つまり、こうしたソリューションを提案することで、印刷会社は顧客企業のインバウンドマーケティングの効果を高めることに貢献できます。

もちろん、「いいね!」を押してくださったファンの方に送付するDMや販促品、あるいは販促品のパッケージにARを追加して、再び企業のサイトなどに誘導することも可能です。その際、誘導した先でお送りしたDMや販促品に関するご意見・ご感想を書き込んでいただき、それを広くシェアしてさらにファンを増やすといった仕組みも面白いかと思います。

販促品をトリガーにして、リアル(Offline)とWeb(Online)両方のチャネルを通じてファンとのコミュニケーションを深めることができる印刷サービスは、顧客企業にとって非常に魅力的だと思いますがいかがしょう?もし、こうした印刷サービスの立ち上げ・拡大をご検討される際には、是非お声がけください (^ ^) 


2012年10月29日月曜日

スマホベースの O2O 最新動向 . . .(1):Offline to Online

先週(2012年10月24日〜26日)幕張メッセで開催された「Web & モバイル マーケティング EXPO」では、想像していた以上にスマートフォンを活用した O2O (Offline to Online/ Online to Offline)のソリューションが数多く展示されていました。今回はそのうち、Offline2Online のソリューションについてご紹介します。

会場に展示されていたスマホベースの Offline2Online型のO2Oソリューションは、以下の様なタイプに分類されます:
  1. AR専用コンテンツ再生タイプ:
    • 3Dや動画の再生型
  2. AR専用コンテンツ再生タイプの変形:
    • インタラクティブ型(ARコンテンツの操作が可能)
    • 道案内型(GPSと連動)
    • オリエンテーリング型(ポイント収集型)
  3. Webコンテンツをブラウズするタイプ(QRコードの変形型)
「2. AR専用コンテンツ再生タイプの変形」のインタラクティブ型で面白かったのは、カナダから出展していた Redpiston社 の冷蔵庫をブラウズするデモでした。新聞に掲載された広告がARのマーカーで、そこにAR用アプリを起動したスマートフォンをかざすとスマホの画面に冷蔵庫が現れます。スマホの角度を変えると冷蔵庫を様々な角度から見ることができ、さらに冷蔵庫の引き出しや扉部分をタップするとスムーズに開閉したりします。こうしたARとVR(バーチャル・リアリティ、仮想現実)が組み合わせられたサービスがスマホ上でスムーズに実現できることに、少々驚きを感じました。

「3. Webコンテンツをブラウズするタイプ」では、米国ロサンゼルスに拠点を置くハイテク企業群 Nant Works の日本法人ナント・モバイルの展示が興味深いものでした。例えば、渋谷駅の改札口付近に貼ってある駅周辺地図にARアプリを起動したスマホをかざすと、情報を入手できるファッションビルなどが分かります(対応していることを示すマークが表示されます)。その部分をタップすると、そのファッションビルのWebサイトに飛び、最新情報を得ることができます。また、ファッションビルなどの建物もマーカーにすることができるため、スマホをかざして歩きながら各ビルの最新情報も入手できます。

ARを使ったサービスでは、ブラウズするコンテンツが話題になることが多いかと思います。しかし、ナント・モバイルでは、ブラウズするのは既存のWebコンテンツなのですが、O2Oの可能性の大きさを示す様々な使い方(実現時期が未定のコンセプト的な使い方を含めて)を提案していた点が印象的でした。

「Webコンテンツをブラウズするタイプ」では、コトブキ企画が11月に開始する予定のスピードウェブも面白いサービスだと思いました。一般的に、ARではマーカーとブラウズする内容が「1対1」の関係なのですが、スピードウェブでは1つのマーカーに対して複数(10個程度)のWebサイトやWebコンテンツを対応させられるようになっています。しかも、運用者が自分で簡単にマーカーやそれに対応するWebサイト・Webコンテンツを登録したり変更したりできるようになっています。こうした手軽さは、O2Oが広まるに当たって有効かと思われます。

ARを含めたスマホベースのO2Oは、IT業界が牽引することで、印刷業界が考えているよりも速いスピードで広まる可能性もありそうです。Redpistonナント・モバイルの展示を見ていると、O2O(特にOffline to Online)の分野では海外のIT企業の動向にも注目すると面白い印刷サービスのアイデアが得られそうです。実際、私もこれらの展示を見て面白い新規サービスをいくつか思い付きました (^ ^)

次回は、Online2Offline型のO2Oソリューションを紹介する予定です。お楽しみに♪


2012年9月12日水曜日

デジタル印刷成功企業に共通する特徴(2)

今回取り上げる特徴は、「集客や受注に積極的にWebを活用している」というものです。拙訳書「未来を破壊する」において、ウェブ博士は「(印刷会社が)新しいメディアについて信用を得たり、経験を蓄積したりする最良の方法は、それらを頻繁に利用することなのである」と書いています。「未来を破壊する」では、新しいメディアを利用して得た信用や蓄積した経験を顧客に提供することで、印刷会社は売上・利益を伸ばすことができる、と話を進めています。

しかし、デジタル印刷に成功している印刷会社では、新しいメディアにおける経験を「自社の印刷物受注拡大」に結びつけているところも目に付きます。こちらの記事でご紹介した挨拶状ドットコムや英国のmooのような単品型印刷通販会社、「印刷情報9月号」の記事(34ページ)でご紹介した、自社サイトを「Web上での営業担当者」と位置付けたことで新規顧客開拓力を高めた印刷会社などが、例として挙げられます。以前mooでは、「ソーシャルサービス管理担当者」の求人が出ていたのを見て驚いたこともありました。

最近では、発注を受ける端末がパソコン以外にも広まっています。8月にJAGATで開催されたセミナー「未来を破壊する」についての徹底討論会では、JAGATの塚田会長から錦明印刷におけるスマートフォン向け Web to printシステム開発の取組みについてお話がありました。これはまだ始まったばかりではありますが、太平洋印刷はスマートフォンアプリから絵はがきを発注できるサービス「絵はがき」および発注した絵はがきを投函してもらえるサービス「投函しま〜す」を提供されています。

海外に目を向けると、Pic Collageというスマートフォンアプリがあります。これは、スマホで撮影した写真やスマホに取り込んだ画像を切り抜いたり貼付けたりしてコラージュを作ることができるアプリなのですが、これも作成したコラージュをポストカードとして印刷してもらうよう発注することができます(ちなみに、文末の画像がPic Collage で作られたコラージュのサンプルです)。

Webにおける集客方法や発注者が利用する端末は、どんどん変化しています。デジタル印刷に成功している印刷会社は、こうした動きに適切に対応しています。ウェブ博士も、「クライアントの先にいくこと:競合は無視すること」と書いています。クライアントの先にいくことで印刷ニーズを取り込み、デジタル印刷に成功していただきたいと思います。



2012年7月12日木曜日

クロスメディア時代の印刷サービス:小松総合印刷さんの事例紹介

今回、「東京国際ブックフェア」(7月5日 〜 8日)とほぼ同時期に東京ビッグサイトで開催されていた「販促 EXPO」(7月4日 〜 6日)では、クロスメディアを活用したプロモーションが数多く提案されていました。今回のブログでは、販促 EXPOに出展されていた小松総合印刷(長野県 伊那市)の方からご紹介いただきました、印刷物とウェブを組み合わせた面白い事例を皆さんにもお伝えしたいと思います。

小松総合印刷さんの顧客(ある外食チェーン)では、まずスマホや携帯電話に対してメールをお送りしてウェブに誘導し、そこで好きなメニューやそのチェーンに対するロイヤリティの高さなどを確認されるそうです。その後、ウェブで収集した情報を基に来店していただけそうなお客さま(印刷会社から見ると「顧客の顧客」)を明らかにし、またそのお客さまの好みにあった絵柄の(パーソナライズされた)印刷物を送付することで、より来店していただく確率を高くされているそうです。

こうした「ウェブを使ってご来店いただけそうな見込み客を見極めて、印刷物で背中を押す」というクロスメディアマーケティング手法は、「印刷物の力」を活かしつつ費用対効果を高める方法のひとつになります。そのため是非、多くの印刷会社の皆さまにも顧客である印刷物発注者さまにご提案いただければと思います。ただ、これを実現するためには、以下の様なスキルが必要になります:
  • スマホや携帯電話のメールアドレスなどの情報収集・管理スキル
  • 見込み客を明らかにするスキル
  • 見込み客の背中を押すクリエイティブを制作するスキル
  • 一連のキャンペーンの成果を測定・分析・評価するスキル
  • 顧客(印刷物発注者さま)にこうしたキャンペーンをご提案するスキル、など
小松総合印刷さんでは、広告代理店さんと協業しつつ、自社内にこうしたスキルを蓄えていらっしゃるそうです。印刷会社の皆さまも、パートナーとの協業を通じて少しずつ出来ることから取り組みながらクロスメディア時代の印刷サービスを身に付け、競争力を高めていただければと思います。


2011年10月28日金曜日

スマホと印刷の関係は:協業 or 敵対?

Web & モバイル マーケティング EXPO は『スマートフォン & モバイル EXPO』と同時に開催されていることから、会場ではスマホ向けサービスの最新の状況を知ることもできます。私の見た感じでは、スマホでは「アプリの使い方」が大きなトピックでした。

例えば、NTTコムウェアのブースでは、AR(Augumented Reality、拡張現実感)を使ったデモが行われていました。そのうちのひとつが、2010年9月にJR小樽駅および小樽運河周辺エリアでの実証実験で使われたシステムのデモ。AR地図の写真をスマホで撮影すると、その写真部分が動画になって観光情報を提供するというものです。これは、紙媒体とスマホの協業を促すアプリの例です。

これとは逆に、印刷量減少につながるような、「カタログ」をアプリ化してスマホ経由で提供するというサービスも数多く紹介されていました。特に、バリスタというベンチャー企業が紹介していた『バリカタ』というサービスは印刷業界からみるとかなり刺激的です。「成果報酬型スマホ向けカタログアプリ」ということで、カタログ用データを用意してもらえれば、それをアプリ化(= 電子カタログ化)するのは無料、アプリがダウンロードされた段階でカタログ制作の依頼企業(発注者)に1回当たり100円を課金するというビジネスモデルになっています。

バリカタは、カタログのページ数によらず「制作費無料、ダウンロード1回につき100円」という料金設定になっています。会場では、OTC薬品メーカーのカタログの事例が紹介されていましたが、それは約9000ページのカタログでした。バリカタは更に成果報酬型ということで、自らターゲット顧客にカタログを知ってもらい、またダウンロードしてもらうための仕組み作りまで提供します。

データは用意する必要があるものの、カタログを無料で作成してもらえて、しかもその配布にも力を入れてくれるサービスがあれば、発注者としては大いに興味を持つと思います。先に挙げた製薬メーカーの他にも、家具メーカーなどがバリスタを使ってカタログの配布に取り組み始めたいうことでした。

印刷業界としては、こうした動きに同対応すべきなのでしょうか。9月に開催されたIGASでも「ワンストッププロモーション」のソリューションが多くのブースで紹介されていましたが、スマートフォンや先日こちらのブログで紹介したSNSまで含めたソリューションは見掛けなかったように思います。

こうしたインターネットを使ったサービスまで含めた「ワンストッププロモーション」を志向する印刷会社が出てくると面白いと思いますが、皆さんはいかがお考えでしょうか?ご意見をお伺いできれば幸いです。