印刷物をもっと「つくる」「使う」「残す」ことを支援する、ブライター・レイターのブログです。

2023年10月19日木曜日

印刷業界視点からの Canon EXPO 2023 の楽しみ方!

2023年10月19日・20日の2日間、Canon EXPOが開催されています(会場:パシフィコ横浜ノース)。これは、「キヤノンの事業・製品・技術の実力および総合力を示す」こと、また「次のフェーズにおける、経営ビジョン、事業・製品・技術の方向性を示す」ことを目的とするイベントです。

Canon EXPOは通常5年に1度のペースで開催されますが、コロナ禍を受けて前回(2015年)から8年ぶりの開催となりました。18日に開催されたオープニングセレモニーには、御手洗代表取締役会長兼社長 CEO はじめ、同社CFO・CTO、中国・米国・欧州・日本など世界各地の統括会社 社長が揃って出席し、同社として非常に注力しているイベントであることが伺えます。



印刷(プリンティング)は、メディカル、イメージング、インダストリアルと並ぶキヤノンの4つの産業別グループのひとつで、今回のCanon EXPOでも以下のような来年発売予定の印刷機や研究・開発中の印刷関連技術などが紹介されていました:

  1. varioPRINT iX1700:商業印刷向けB3/ A4サイズ対応枚葉水性インクジェット印刷機
  2. Label Stream LS2000:産業印刷向け水性インクジェットラベル印刷機
  3. Super Color Management、など


1. varioPRINT iX1700:

varioPRINT iX1700は、ラテックスインクを採用した商業印刷向けB3/ A4サイズ対応枚葉水性インクジェット機で、解像度 2400 x 1200dpi、印刷速度 170枚/分(A4サイズ)・73枚/分(B3サイズ)となっています。

インク層が薄く用紙の風合いを生かせるラテックスインクや高解像度のプリントヘッドで高い表現力を実現できることから、商業印刷市場をメインターゲットとしています。また、最初は4色機としてのスタートですが、ヘッドが設置されている部分を見るとまだスペースがあることから、多色化の可能性もありそうです。

ところで、この機種はヘッドが設置されている部分の筐体が透明になっていて、中を覗き込めるようになっています。また、ジョブの内容などを入力・確認する操作用ディスプレイが付いていません。こうした進化が、操作性・作業性・生産性・働き方などにどんな影響を及ぼすのか(あるいは、及ぼさないのか)にも注目したいと思います。

なお、こちらのデジタル印刷機の発売日は2024年4月、想定価格は5,000万円(税別)、インク代など運用に関わるコストは未定とのことです。



2. Label Stream LS2000:

Label Stream LS2000は、varioPRINT iX1700と同じくラテックスインクを採用した解像度 2400 x 1200dpiのデジタル印刷機で、こちらはラベル市場をターゲットにしています。最大印刷速度は40m/分、最大印刷幅 340mm、CMYK+ホワイトの5色機です。色数については、こちらもインクジェットヘッド部分にはスペースがあって、今後の多色化も期待されます。

今月初め(10月3日〜10月6日)に開催された日本包装産業展 JAPAN PACK 2023でも、様々な環境に優しいラベル用基材が紹介されていました。そうした基材をLabel Stream LS2000で印刷することで、印刷会社は「より環境に優しいラベル」を生産することができるようになります。

こちらの機種は2024年8月発売、想定価格 5,000万円(税別)の予定です。


3. Super Color Management (SCM):

Canon EXPO 会場では、開発中の基盤要素技術 Super Color Management(SCM)も紹介されていました。SCMは、「人の目でみた時に感じる色」を再現する技術で、異なる出力機で異なる用紙に印刷しても、全て「同じだと感じる色」を再現できます。

会場には、様々な用紙を様々なプリンターで出力したものを組み合わせて1つのイメージにしたサンプルが展示されていました。また、その場でデザインしたチラシやカードを異なる用紙・異なるプリンターで出力して色が合っていると「感じる」デモも行われました。

この技術、印刷物だけでなく、Webサイトに掲載された商品の色を実際のものと「同じだと感じる」ように合わせたり、メタバース間でロゴの色を合わせたりなど、デジタルの分野も含めていろいろ使えそうです。どんどん妄想が広がります(笑)。実装される日が楽しみです。



他にも以下のような、印刷業界の皆さんの参考になる様々な展示がありました:

  • マーケティングコラテラルのデザイン制作支援ツール CAG (Collateral Auto Generator)
  • 印刷現場の可視化ソリューション
  • プリンター保守業務のDXソリューション
  • MREAL:現実空間にバーチャルのCGデータを実寸大に重畳する技術(Mixed Reality)、など
MREALは、実際にデジタル印刷機の開発にも使われているそうです。ご興味のある方はぜひそのあたりもお伺いしてください(私は時間がなくてお伺いできませんでした・・・)。

会場には、実際にその製品・技術を開発した技術者の方々も説明員としていらっしゃいますので、普段なかなか分からない機械や技術の中だったり裏側だったりのお話も色々お伺いできます。お時間がある方は、会場に足を運ぶことをオススメします。私も、次回がとても楽しみです (^ ^)