印刷物をもっと「つくる」「使う」「残す」ことを支援する、ブライター・レイターのブログです。

2012年8月28日火曜日

破壊すべき印刷業界の『旧来の慣習』:追加分(1)

拙訳書「未来を破壊する」には、厳しい市場環境の下で売上・利益拡大を目指す印刷会社が破壊すべき「何十年にもわたって印刷業界を導いてきた『旧来の慣習』」がいろいろと挙げられています。ただ、2010年に米国で発行された本ということもあって、2012年の日本市場における「破壊すべき『旧来の慣習』」をカバーしきれていないように思われます。

例えば、私は「小ロットの仕事/端物の仕事は儲からない」という「旧来の慣習」は破壊すべきだと考えています。国内市場においても、平均受注単価が数万円といわれるグラフィックプリントパックは、年商100億円規模の企業に成長しています。また、名刺専門の東京名刺センターは、ホームページによれば年間生産量は約86万箱です。挨拶状印刷を専門とする挨拶状ドットコムは、社員数十名で年商約8億円の規模だそうです。

海外市場でみても、小ロットの仕事を集めて大きなビジネスを実現している企業が見受けられます。従業員10名以下の企業をターゲットしているVistaprintは、2011年6月期の売上は10億ドル(約800億円)に達しました。

また、ドイツの印刷通販会社Flyeralarmは1日に10,000件以上のジョブ(1ジョブあたり 300〜5,000枚)、Pixartprinting(イタリア)は平均約2,800件のジョブをヨーロッパ中から集めています。グラフィックやプリントパックでの1日平均ジョブ数は1,000件程度ということですから、Flayeralarm社やPixartprinting社の規模の大きさが分かります。mooは英国に本社を置く名刺やカードを専門にする印刷会社ですが、年々事業を拡大しており、現在の従業員数は100名を超えています(ちなみに、東京名刺センターの従業員数は90名だそうです)。

インターネットの普及により、「小ロットの仕事」「端物の仕事」でも印刷会社は十分に大きな売上を実現することができるようになっています。私は、スマートフォンやタブレットの広まりによって、「小ロット」や「端物」のビジネスは更に大きく伸びると考えています。

「小ロットの仕事/端物の仕事は儲からない」という『旧来の慣習』から自由になることで、今後2〜3年で年商数億円という印刷サービスを実現する印刷会社が、国内で次々に登場することを期待します。