KADOKAWAが今回購入した機材には以下のようなものが含まれます。いずれも、今回のdrupaで発表されたばかりの最新機材です:
- HP PageWide Web Press T490 M HD:
- モノクロ輪転インクジェット式デジタル印刷機
- 最大用紙幅 42インチ(1067mm)
- 最大印刷速度 305m/分
- HP Indigo 50000:
- フルカラー輪転液体トナー式デジタル印刷機
- 最大用紙幅 762mm(B1サイズの印刷物も生産可能)
- 印刷速度 575ページ/分(A4換算, 両面 4色)
- ミューラー・マルティニ アレグロデジタル:
- 全自動無線とじ機
- 1冊ごとに異なる厚さに対応
これらの機材は、所沢市の旧所沢浄化センター跡地にKADOKAWAが建設する生産および物流の拠点に導入される予定です(2018年に稼働予定)。これらの機材を使うことで、文庫、ライトノベル、新書、コミック等の本文、口絵、表紙、カバー、帯にいたるまでを一貫生産できます。
ところで、KADOKAWAは2015年4月からアマゾンジャパンと書籍・雑誌の直接取引きを始めています。また、今回drupaで買った機材が設置される旧所沢浄化センター跡地では、KADOKAWAは「ところざわサクラタウン(仮称)」という出版という枠を超えたテーマパーク的な事業を展開する計画です。
こうした動きから、KADOKAWAはdrupa2016で購入した機材を活用して、直接消費者に書籍やサービスを提供する「B2C企業」へと進化したいのでは、と想像されます。最近、メーカーのマーケティング担当者から、「物流企業が間に入ることで、自社製品を使ってくださっている消費者の顔が見えにくくなるケースもある」というお話をお伺いすることがあります。
もしかしたら、KADOKAWAも同じような課題を持っているのかもしれません。確かに、消費者と直接取引きできれば、自社製品(書籍や雑誌)に対する評価やニーズを把握しやすくなります。一方、物流コストは下がってきていますし、デジタル印刷システムを使えば在庫を最小限にできます。こうした市場環境の中、「出版ビジネスのB2C化」を模索する動きが本格化しても不思議はありません。
2016年8月5日(金)18時15分から東京・神保町で、「最新印刷技術が切り拓くこれからの出版ビジネス - drupa2016に学ぶビジネスの可能性 -」というセミナーを開催します(企画:出版研究センター、主催:出版ビジネススクール事務局)。このセミナーでは、今回の記事で分析したKADOKAWAの取り組みにもさらに深く切り込みます。
出版分野でのデジタル印刷活用にご興味のある方、あるいは出版ビジネスの競争のルールを変えるアイデアをお探しの方、ぜひご参加ください (^ ^)
HP PageWide Web Press T490 HD |
HP Indigo 50000 |