印刷物をもっと「つくる」「使う」「残す」ことを支援する、ブライター・レイターのブログです。

2014年8月14日木曜日

ラベルフォーラムジャパン2014 レビュー

2014年7月22日・23日の2日間、東京国際フォーラムでラベルフォーラムジャパン2014が開催されました。ラベルフォーラムは主に「コンファレンス(セミナー)」と「テーブルトップショー(展示)」で構成されているのですが、その両方がとてもレベルが高く刺激的でした。

私も2日間会場に通ったのですが、今回のラベルフォーラムから以下のようなラベル印刷市場動向が見えてきたように思います:

  1. ラベル向けデジタル印刷ソリューションがどんどん進化していること。
  2. ブランドオーナーとの協業の余地はまだまだ大きいこと。
  3. デジタル印刷を活用するにはアイデアが重要なこと

1. ラベル向けデジタル印刷ソリューションがどんどん進化していること:


今回のテーブルトップショーには、以下のデジタル印刷機が「参考展示」されていました(各製品の写真や主なスペックは下図参照):

  • エプソン L-6034VW
  • コニカミノルタ x ミヤコシ bizhub PRESS C71cf/ MKD13A
  • エプソン 産業用小型インクジェット機(製品名未発表)
  • 沖データ 小型LEDトナー式ラベルプリンター(製品名未発表)

これらの製品を見ていると、ラベル用デジタル印刷機市場の多様化が進んでいることが分かります:

  • 印刷方式の多様化:電子写真(粉体トナー)機・UVインクジェット機・水性顔料インクジェット機
  • 用紙幅の多様化:3インチ・128mm・330/ 340mm
  • 価格帯の多様化:ハイエンド(5,000万円程度)・ミッドレンジ(1,500万円程度)・ライトプロダクション(100万円以下)
  • プレーヤーの多様化:沖データもラベル市場への本格参入

また、参考展示製品も含めて、多くのデジタル印刷機は「後加工機」との連携も意識した展示となっていたのが印象的でした。あわせて、会場にはAlwan社のカラーマネージメントソリューションなど数多くのソフトウェアも紹介されていました。今回のテーブルトップショーを通じて、印刷の前後も含めたラベル印刷用ソリューション全体がどんどん進化していることが見えてきました。


2. ブランドオーナーとの協業の余地はまだまだ大きいこと:

2日間のコンファレンスでは、キリンや中外製薬、生活協同組合連合会(コープ)など、ブランドオーナー(発注者)によるセミナーも開催されました。これらのセミナーでは、以下のような具体的な技術課題に対してどのように解決策を見つけたかという、現場感溢れるお話しをお伺いできました:

  • 生産速度600bpm(毎分600本)の高速環境下でレーザーマーキング印字に対応する(キリン)
  • (分割ラベルにおいて)うまくラベルを引き裂くことができない(中外製薬)
  • 再利用容器の場合、使用済みラベルをはがしにくい。はがしやすさを考えて粘着度調整をするので、はりにくい(コープ)

印刷会社はついつい「印刷品質」に注目するのですが、ラベルを使う現場では印刷品質以外の課題も多いようです。現場で生じるこうした課題も視野に入れたサービスを企画・提供すること。これも印刷会社の大きな事業機会だと思います。

また、ラベル新聞社によるセミナーでは、バリアブル(可変)やバリアフリーなど、ラベルの進化の方向性が示されましたが、ブランドオーナー側のセミナーではこれらについて触れられることはありませんでした。

ただ、例えばキリンでは、バリアフリーについてはラベルではなくビールが入った容器(ビンや缶など)で対応が進んでいます。ここから、バリアフリーは「ラベル」という単位で考えるのではなく容器も含めて考えた方が良いことが分かります。つまり、バリアフリーについては、ラベルご担当者よりも商品そのものの企画ご担当者に提案することが求められそうです。

また、バリアブル(可変)ラベルは、小売店側の欲求も重要になると考えられます。ということは、バリアブルラベルの提案は、メーカー・流通双方に対して行うことが必要になります。

ラベルの新しい可能性を切り拓く際には、これまでとは異なった立ち位置でブランドオーナーと協業する必要がありそうです。


3. デジタル印刷を活用するにはアイデアが重要なこと:

どんどん進化を続けるラベル用デジタル印刷ソリューションは、価格的にも使い勝手という点でも印刷会社にとって導入し易くなっています。ただ、デジタル印刷で大きく売り上げ・利益を伸ばすためには、現在の仕事の置き換えではなく新しい需要を創造することが求められます。

今回のラベルフォーラムを通じて、「現場を視野に入れたサービス」や「ブランドオーナーと流通の両方を巻き込むサービス」など、新たな方向性が見えてきました。しかし、これを売上・利益増大に落とし込むには、独自のアイデアが必要不可欠です。

ラベルフォーラムでは印刷会社によるセミナーや展示もありましたが、そうした会社では新しい方向性のサービスを具体化する取組みが進んでいます。例えば、テーブルトップショーに出展していた(株)吉村では、とても面白い新サービスの企画が進んでいます。まだ発表されていないそうなのでこのブログに書くのは控えますが、「このサービス、いいね!」と多くの方が考えるものになりそうです。私も、早く実現していただきたいです (^ ^)

商業印刷会社など他分野の印刷会社の中には、ラベル印刷市場への新規参入を検討されているところもあるかと思います。ラベルフォーラムジャパン2014で明らかになったように、機材は導入し易くなり、ブランドオーナー(顧客)もまだまだ多くの課題を抱えています。こうした状況は、アイデア豊富な印刷会社にとって、とても魅力的だと考えられます。


ラベルフォーラムジャパンは、2年に一度のイベントです。次回(2016年)はdrupa開催年にあたりますので、さらに大きく進化した展示やセミナーが行われると思います。早くも今から楽しみです!