その成果のひとつが、こちらの IT (International Times) 第6号(1967年1月発行)です。ITは1966年に創刊されたロンドンの(主にアンダーグラウンドの)イベントを紹介していた新聞です。ロンドンのぴあみたいなもので、Time Out よりも前に創刊されています。
ポールはITの発行者とも懇意にしていたのですが、ある日その人から「お金が無いんだけどどうしたら良いと思う?」と相談されました。まだITは創刊されたばかりで、印刷も編集部の片隅で編集者やデザイナーが自分たちで行っているような頃でした。
「僕のインタビュー記事を載せたらどう?そうすれば、レコード会社から広告も取れるようになるから」。こう答えたポールのインタビュー記事が掲載されたのがこの号でした。その後、1967年6月にビートルズが「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」を発売した時には、IT 14号にこのアルバムの全面広告が出ました。また、このアルバムの発売元 EMI は、その後ピンク・フロイドのデビューアルバム「夜明けの口笛吹き」の広告などもITに出稿しています。
このインタビューの数ヶ月前、ビートルズは武道館で伝説的なコンサートを開いています。そんなスーパースターが創刊したばかりのアングラ新聞/雑誌の広告を取るお手伝いをするなんて、ほとんど例がないと思います。少なくとも、日本では聞いたことがありません。でも、そんな奇跡のようなことが、当時のロンドンでは起こっていました。
スウィンギングロンドン時代の印刷物に魅力的なものが多いのは、こうしたステキな人間関係が背景にあったからかもしれませんね (^ ^)