2012年、筆者は”Disrupting the Future” という本を翻訳しました(邦題は「未来を破壊する」)。この本は2010年に出版されましたが、その「あと書き」部分には2020年の印刷市場の予測が書かれていました。2020年の今、改めてこの部分を翻訳します。「未来を破壊する」とはどういうことだったのか、実際にどの程度「未来を破壊」できたのか。こうした点を確認する際の参考にしていただければ幸いです。
なお、この前の部分 (2) はこちらです
経済国政調査から、2012年と2017年の間にかつて「印刷産業」と呼ばれていたものが大きく変化したことが分かる。NAICS(北米産業分類システム)のコード323に含まれる企業数が大幅に減少したのだ。これは、「印刷」会社が何か他のものへと完全に姿を変えたことが背景にある。
ロードアイランドの地下1マイルにある WhatTheyThink経済研究所 ディレクター ジョー・ウェブ博士によれば、「我々が『印刷会社』と呼んでいた企業は、2010年代半ばごろに製造業であることを止めました。そして、印刷物と印刷物以外の両方を扱うコミュニケーション企業が、NAICSのサービス業コードにおいて見られるようになりました。これらの企業を集約すると、1990年代半ば以降の印刷産業で最も財務状況の良い『産業』であることが分かるでしょう」。
2020年になった今この10年間を振り返ると、この産業は10年前とは全く異なるものとなったことが分かる。
「我々は実際、グーテンベルグ以降で最も劇的な印刷産業の変化を目にしています」。印刷業界の伝説的な存在であるフランク・ロマノ氏の身体と切り離された脳は言います(なお、その脳はマサチューセッツ州の印刷博物館の瓶に保存されており、現在でも特別なiPhoneアプリを通じてコミュニケーションできるようになっている)。「これは、2016年にAmtrak社が乗客を乗せて運ぶサービスから家畜を輸送するサービスへと変わったことよりも、ずっと劇的なものです」。
スミス氏とAcCom社は、現在もメディアのトレンドおよびテクノロジーの最前線に立つ。「私たちは、第一世代のウェアラブルコンピュータ向けにテキストとグラフィックスを最適化した最初のコミュニケーションプロバイダーでした。コンピュータのディスプレイがまず特殊なメガネに、のちにコンタクトレンズに組み込まれた際、周囲の物理的な環境に左右されず、読めるようにデータを表示することが課題でした。そこで私たちは表示する情報を、そう、万物に対して目立つように自動変換する一連のアルゴリズムを開発しました」。2019年には、ウェアラブルコンピュータや(アップル社のiEyeのような)目に入れるディスプレイを使う無線インターネット利用者のうち、75%がAcCom社製品のユーザだと推測される。
スミス氏は、自分の成功が最先端の技術に対する飽くなき好奇心によるものだと認める。「人には『技術的な成長』、あるいは新しい技術やガジェットを求める欲望や傾向といったものがあると、私は考えています。ある一定の年齢、私が思うに30歳とか35歳を過ぎると、人々は求めることを止めてしまいます。特にあなたがビジネスリーダーの場合には、それは死を意味します」。
とりわけ現在は、20年前と比較して物事がずっと早く変化します。変化がとてもゆっくりだった当時、人々は古い技術や態度にすがって逃げ切ることができました。しかし現在では、誰もそんな贅沢はできません。」スミス氏自身も今年30歳になる;彼は10年後の2030年においても、現在と同じように新しい技術に興味を持っているだろうか?
「私は、無関心になっている自分は想像できません」とスミス氏は述べる。「もっとも、世代的なものなのかもしれませんが」。10年後に彼に連絡をとり、どうなっているかぜひ確認したい。