印刷物をもっと「つくる」「使う」「残す」ことを支援する、ブライター・レイターのブログです。

2012年5月23日水曜日

drupa 2012まとめ:ソフトウェア/サービス編

前回(2008年)のdrupaではワークフローや可変データプリント(VDP)などのソフトウェアが大きな注目を集めていましたが、今回のdrupaではハードウェアの展示・紹介が中心で、ソフトウェアはそれほど目立ってはいませんでした。しかし、会場では印刷会社の効率性向上/付加価値向上に貢献する様々なソフトウェアやサービスが紹介されていました。以下に、それらの一部を紹介します:

  • 自社ブースの機材を統合的に管理していたワークフロー:
    • HP SmartPlanner
    • ゼロックス FreeFlow、など
  • カラーマネージメント:
    • 富士フイルム XMF ColorPath
    • 小森コーポレーション K-ColorSimulator
    • Colibri Gateway @ コニカミノルタブース、など
  • 多機能化したWeb-to-print:
    • Vit2Print(ベルギー):
      • Web-to-print
      • オンライン InDesign 修正
      • オンライン翻訳管理
      • オンライン資産管理
    • CONTENTSERVE(ドイツ):
      • Web-to-print
      • クロスメディアパブリッシング
      • メディア資産管理
      • カタログ管理
      • ダイナミックパブリッシング
      • ワークフロー管理
      • 翻訳管理
      • ブランドマネージメント
  • キャンペーンマネージメント:
  • AR(仮想現実間)・QR:
    • AR:ザイコンブースでの製品紹介
    • QR:コダック社のバナー @ 北入口、など

これらのソフトウェア・サービスの中には、「iPad対応」「クラウド」を訴求しているものも多く見られました。今後、「iPad + クラウド」が印刷サービスのプラットフォームとして活用されるようになることが見込まれます。日本の印刷会社も、競争力を高めるためにはこうした取り組みが求められるでしょう。



2012年5月21日月曜日

10→30戦略室 2012年6月度セミナー 「drupa以降における新規サービス成功のポイント」

drupa報告会も兼ねて、以下のようにセミナーを開催いたします。若干ですがまだお席に余裕もありますので、是非ご参加下さい!


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印刷会社の新規サービス成功を支援する団体「10→30戦略室」(読み方:テンサーティせんりゃくしつ)は、6月5日(火)、『2012年6月度セミナー drupa以降における新規サービス成功のポイント』(会場:東京都産業貿易センター浜松町館)を開催いたします。


5月3日~16日の14日間、ドイツ・デュッセルドルフにてdrupa 2012が開催されます。本セミナーでは、印刷会社の新規サービス成功の観点からdrupaの展示内容を分析いたします。

また、印刷会社が新規サービスを企画・実現するに当たって理解しておくべき、著作権に関する課題や機会についてもご紹介いたします。

【テーマ】『drupa以降における新規サービス成功のポイント』
【日 時】2012年6月5日(火) 13時30分~16:30分 (受付開始 13時10分)
【会 場】東京都産業貿易センター 浜松町館 第2会議室(地下中1階)
     JR浜松町駅 北口から徒歩5~6分
     http://www.sanbo.metro.tokyo.jp/hama/index.html


講演者 ブライター・レイター 山下潤一郎
講演者 株式会社バリューマシーンインターナショナル 宮本泰夫
講演者 合同会社23°C 前川真季(弁理士、理学/法務博士)



【参加費】無料
【定 員】30名
【対 象】印刷会社の経営幹部、新規サービスのご担当者、知的財産管理ご担当者

【講演内容】
第1部「『オフセットとデジタルの融合』と『Webとリアルの融合』 〜 drupa以降の新規サービス機会」

第2部「drupaに見る最新技術トレンドとその活用ポイント」

第3部「著作権から見た印刷会社の課題と機会」


セミナーのお申し込みは、こちらからお願いいたします。
* 定員に達したため、こちらのセミナーのお申し込みは締め切りました。ありがとうございました。今後もセミナーを開催してまいりますので、引き続きよろしくお願いいたします。

2012年5月19日土曜日

drupa 2012まとめ:トナー機編

個人的に今回のdrupaで印象的だったのは、電子写真式デジタル印刷機(トナー機)の動向です。トナー機は「進化の余地は小さい」と言われていますが、drupa 2012では対応用紙サイズの拡大や生産性の向上、付加価値の向上が実現され、また後加工機を含めた『実用性の高さ』が訴求されていました。drupa会場に見られたトナー機市場の動向は、以下の様にまとめられるかと思います:
  1. HPによるB2サイズトナー機の市場投入:
    • Indigo 10000, 20000, 30000
  2. 既存機種の生産性・付加価値向上:
    • 印刷速度の向上
    • データ処理速度の向上
    • 新トナーの導入
    • 対応用紙の大型化
  3. インライン後加工機を含めたソリューションの提案:
    • 製本
    • カード作成
    • 型抜き、など
  4. パッケージ市場向け機種の強化:
    • HP Indigo 20000, 30000
    • ザイコン 3000シリーズ
  5. アプリケーション(印刷物)の展示
  6. 液体トナー機開発の進展:
    • ミヤコシ/リョービ Digital Press 7000
    • ザイコン trillium(トリリウム)
    • オセ InfitiStream(インフィニストリーム)
  7. オフセット印刷機メーカーによる自社ブランドトナー機の投入:
    • 小森コーポレーション Impremia C80
    • ハイデルベルグ Linoprint C901, C751
こちらにつきましても、前回のインクジェット機編と同様、まだまだ情報の収集・分析が足りませんので、引き続き進めていきたいと思います。




drupa 2012まとめ:インクジェット機編

前回(2008年)に引き続き、今回のdrupaもインクジェット式デジタル印刷機が大きな話題となりました。本稿では、drupa 2012会場で得た情報を基に、インクジェット機関連の動きを以下の様にまとめてみました:

  1. 新規プレーヤーの参入:
    • ランダ社によるナノグラフィック・プリンティングの発表
    • オフセット機メーカー、トナー機メーカーの参入発表:
      • オフセット機メーカー:小森コーポレーション、KBA、ハイデルベルグ、マンローランド(枚葉機部門)、東京機械製作所、Timsons(英国)、など
      • トナー機メーカー:コニカミノルタ
  2. 枚葉式インクジェット機市場の活性化:
    • ランダ社によるB1・B2・B3の各サイズ用枚葉インクジェット機の発表
    • B2サイズ枚葉インクジェット機市場への参入発表:
      • 小森コーポレーション Impremia IS29
      • コニカミノルタ KM-1
      • MGI ALPHAJET(仏)
  3. 既存連続式インクジェット機の進化:
    • 高速化・高画質化・低ランニングコスト化
    • エントリーモデルの投入
  4. 一般商業印刷市場・パッケージ市場向け製品の開発・投入:
    • 一般商業印刷向け:
      • B2サイズ枚葉インクジェット機
      • ミヤコシ Inkjet Printer 7000
      • 富士フイルム JetPress W
    • パッケージ向け:
      • 富士フイルム JetPress F
      • 大日本スクリーン製造 TruePress JetSX (厚紙印刷機能)
  5. memjet(メムジェット)技術の広まり:
    • Delphax elan
    • Oce Velocity
    • Xante Excelagraphix 4200
    • 東芝TEC、など
  6. コダックとHPによるオンプレス型インクジェット機の競合
  7. インクジェット機に対応した後加工機の提案:
    • 製本
    • レーザーカッター、など
これから、更に情報を収集・分析しながら、drupa以降の印刷市場で売上・利益の拡大を実現する方法を考えて行きたいと思います。何かご意見・ご質問などございましたら、お気軽にご連絡ください。



2012年5月18日金曜日

印刷機メーカーの合従連衡が活発化する予感あり!?

前回(2008年)の「インクジェットdrupa」に引き続き、今回もインクジェット機が大きな話題のひとつとなりました。前回の主役だったヒューレット・パッカード(HP)やゼロックス、コダック、富士フイルムなどはこの分野の新製品を発表し、今回は小森コーポレーションやKBAなどオフセット機メーカーもインクジェット機を発表・展示しました。また、これまで粉体トナー機を展開してきたコニカミノルタもインクジェット機市場への参入を表明し、ランダ社は「ナノグラフィ」という新たな印刷方式を提案し、小森やハイデルベルグ、マンローランド(枚葉機部門)との提携を発表しました。

これまでHPの独壇場であった液体トナー機の分野でも、新たな動きが見られました。ザイコンは「トリリウム」というこの技術を使った新たな商品ラインの開発を発表し、オセもdrupa会場ではなく本社で液体トナー機 InfiniStream の展示を行いました。前回のdrupaでも液体トナー機を展示したミヤコシは、今回リョービと共同開発している「Digital Press 8000」を紹介しました。

粉体トナー機の分野でも、印刷速度の向上や対応用紙サイズの拡大、蛍光ピンクやパール、ゴールドなど新色トナーの発表など、まだまだ進化していることが示されました。小森やハイデルベルグなどオフセット機メーカーでも、既存トナー機のOEMを受けて自社ブランドとして提供することを発表しています。

こうした動きは、デジタル印刷機の利用者である印刷会社にとっては選択の幅が増える好ましい状況ですが、デジタル印刷機を開発・提供するメーカーにとっては大変な状況だと思われます。以下に、主要なメーカーのデジタル印刷機市場への参入状況を印刷方式別にまとめてみましたが、多くのメーカーで複数の印刷方式のデジタル印刷機を開発していることが分かります。

このような状況に対応するため、特にインクジェット機や液体トナー機の分野では、印刷機メーカー間での合従連衡が活発化する可能性があります。メーカー間の提携状況については、バリューマシーンインターナショナル宮本さんのこちらのプレゼン資料でも詳しく説明されていますが、これが更に進化するかも知れません。その際には、インクジェットヘッドメーカーなども巻き込んだ、新たな展開が見られるかも知れません。印刷会社が自社の仕事内容やビジネスモデルに適したデジタル印刷機を選べる状況を実現するためのメーカーのこうした取り組みも、これからの注目ポイントのひとつだと思われます。


Landa社製のインクジェット機は発売されるか?

今回のdrupaの目玉のひとつが Landa社のインクジェット機だったことに疑問の余地はないかと思います。現地でも話題が話題を呼んで、1日に5回行われたLanda社のプレゼンテーション(1回45分、定員100名程度)も会期5日目の5月7日の時点では9日の回なら予約できたのですが、5月10日の時点ではその後3日間全く予約が取れない状況になっていました。

そもそも、Landa社が大きな注目を集めた理由は何だったのでしょう?もちろん、ナノグラフィックプリンティングという新しい技術を示したことも大きかったと思います。また、前回のブログでも触れた様に、筐体の前面を全て使った操作パネルやレトロフューチャーな本体のデザインも理由のひとつでしょう。私は、こうした個別の要素を示しただけでなく、これらをまとめて「これまでの延長線上にない『デジタル印刷機の未来』」を示したことが、Landa社が今回のdrupaで注目を集めた理由だと考えています。

Landa社ブース説明員の中にタッチスクリーンを使った操作パネルの開発に携わっているソフトウエア・エンジニアの方がいらっしゃったのですが、その方に何故このような操作パネルを開発したのかお伺いしたところ、"Because this is the future(だって、これが未来だから)"というお答えが返ってきました。『未来的』というのが、Landa社のデジタル印刷機の開発コンセプトになっているようです。

ところで、Landa社の創業者、Benny Landa氏はプレゼンテーションの中で「1年半(18ヶ月)後には、オフセット品質を実現して製品化する」と仰っていました。18ヶ月後には、今回のdrupaで示された未来が実現されるのでしょうか?

今回のdrupa前にLanda社との提携を発表した小森コーポレーションの方にお伺いしたところ、Landa社から提供されるのはナノグラフィ(Nanography)と呼ばれる印刷技術とナノインクで、インクジェットヘッドや搬送系については含まれていないようです。つまり、Landa社からのデジタル印刷機のOEMではなく、小森コーポレーションはLanda社からの技術供与を基に、自社でナノグラフィを使ったデジタル印刷機を開発されるそうです。

会場にはナノグラフィを使った印刷サンプルが展示してあったのですが、スジが目立っていました。これは、インクジェットヘッドの部分に改良の余地が大きいことを示していると思われます。しかし、ブースにおいて、あるいは45分のプレゼンテーションの中では、ヘッドについての説明は見受けられませんでした。こうした状況から見ると、ヘッドは独自開発では無いようです(あるいは、まだ秘密のベールに包まれているのかもしれませんが)。

これまでの発表からみると、小森やハイデルベルグ、マンローランドのブランドでLanda社の技術を使ったインクジェット式デジタル印刷機が発売されるようです。しかし、技術的な状況からみると、Landa社が自社ブランドで発売するのかは今のところ分かりません。もし、Landa社が自社で発売しないとすると、今回drupaで示されたタッチスクリーンを使ったインターフェイスや曲線を効果的に使ったデザインなどの「未来」が実現されないかもしれません。

私が会場を6日間歩き回った印象では、Landa社だけが、これまでの延長線上にない「デジタル印刷機の未来」を来場者に示していました。この未来を誰が(どのメーカーが)どの様に実現するのか、引き続き注目して行きたいと思います。

なお、以下の写真はLanda社ブースに展示されていた印刷サンプルです。この写真でもスジがお分かりいただけるかと思います。



2012年5月3日木曜日

ナノグラフィック drupa?

本日(5月3日)よりドイツ・デュッセルドルフでdrupa 2012がスタートします。その直前にYouTubeにアップされた動画の数を見ると、Landa社のNanographic Printing Processに関するプレゼンテーションが目に付きます。この技術に関しては、これまでに小森コーポレーションマンローランド(枚葉機部門)、そしてハイデルベルグといった主要なオフセット印刷機メーカーとの提携が発表されています。今回のdrupaでは、この技術が大きな注目を集めることは確かなようです。

今回のdrupaでは、Landa社からは印刷技術の展示が中心になるかと思っていたのですが、会場ではこの技術を使ったインクジェット機の新製品が6機種一気に発表されているようです。6機種の内訳は、枚葉機3機種・連帳機3機種となっています。枚葉機の用紙サイズは、B1・B2・B3、また連帳機の最大用紙幅は560mm(2機種)・1,020mmとなっています。これらの印刷機は、「どんな紙やプラスチックにも印刷可能」という特性を活かして、コート紙や非コート紙はもちろん、カートン紙、軟包装用フィルム、アルミフォイルなど様々な基体に印刷可能となっています。なお、Landa社のインクジェット機の詳細については、こちらのサイトをご確認ください。

また、個人的には、Landa社が発表した6機種のインクジェット機のデザインが大変気になっています。写真や動画で見る限り、本体の側面が大きな液晶パネルになっていて、それを直接触ることで操作できそうな感じです。また、本体のデザインもレトロフューチャリスティックでオシャレな感じです。以前、ある印刷会社の方が「デジタル印刷機のデザインはまだ進化する余地がある」と仰っていたのを覚えているのですが、Landa社は「デザイン」の面でもデジタル印刷機市場に大きな影響を与えるかもしれません。

実際に会場でLanda社のデジタル印刷機を見るのが楽しみです。
ちなみに、こちらはLanda社のB1サイズ枚葉デジタルインクジェット機 Landa S10 Nanographic Printing Press です。

【参考:YouTubeにアップされたLanda関連動画(5月3日17時時点(東京時間))】
Landa社の戦略や技術などについてのプレゼンテーション:
http://www.youtube.com/watch?v=a-Oaadyo1WE

Nanographic Printing Technologyの紹介:
http://www.youtube.com/watch?v=JQEjimsOTIo&sns=fb
http://www.youtube.com/watch?v=how1qjazfaY

インクジェット機の紹介:
http://www.youtube.com/watch?v=YU68uC1UwU0