今回のdrupaの目玉のひとつが Landa社のインクジェット機だったことに疑問の余地はないかと思います。現地でも話題が話題を呼んで、1日に5回行われたLanda社のプレゼンテーション(1回45分、定員100名程度)も会期5日目の5月7日の時点では9日の回なら予約できたのですが、5月10日の時点ではその後3日間全く予約が取れない状況になっていました。
そもそも、Landa社が大きな注目を集めた理由は何だったのでしょう?もちろん、ナノグラフィックプリンティングという新しい技術を示したことも大きかったと思います。また、前回のブログでも触れた様に、筐体の前面を全て使った操作パネルやレトロフューチャーな本体のデザインも理由のひとつでしょう。私は、こうした個別の要素を示しただけでなく、これらをまとめて「これまでの延長線上にない『デジタル印刷機の未来』」を示したことが、Landa社が今回のdrupaで注目を集めた理由だと考えています。
Landa社ブース説明員の中にタッチスクリーンを使った操作パネルの開発に携わっているソフトウエア・エンジニアの方がいらっしゃったのですが、その方に何故このような操作パネルを開発したのかお伺いしたところ、"Because this is the future(だって、これが未来だから)"というお答えが返ってきました。『未来的』というのが、Landa社のデジタル印刷機の開発コンセプトになっているようです。
ところで、Landa社の創業者、Benny Landa氏はプレゼンテーションの中で「1年半(18ヶ月)後には、オフセット品質を実現して製品化する」と仰っていました。18ヶ月後には、今回のdrupaで示された未来が実現されるのでしょうか?
今回のdrupa前にLanda社との提携を発表した小森コーポレーションの方にお伺いしたところ、Landa社から提供されるのはナノグラフィ(Nanography)と呼ばれる印刷技術とナノインクで、インクジェットヘッドや搬送系については含まれていないようです。つまり、Landa社からのデジタル印刷機のOEMではなく、小森コーポレーションはLanda社からの技術供与を基に、自社でナノグラフィを使ったデジタル印刷機を開発されるそうです。
会場にはナノグラフィを使った印刷サンプルが展示してあったのですが、スジが目立っていました。これは、インクジェットヘッドの部分に改良の余地が大きいことを示していると思われます。しかし、ブースにおいて、あるいは45分のプレゼンテーションの中では、ヘッドについての説明は見受けられませんでした。こうした状況から見ると、ヘッドは独自開発では無いようです(あるいは、まだ秘密のベールに包まれているのかもしれませんが)。
これまでの発表からみると、小森やハイデルベルグ、マンローランドのブランドでLanda社の技術を使ったインクジェット式デジタル印刷機が発売されるようです。しかし、技術的な状況からみると、Landa社が自社ブランドで発売するのかは今のところ分かりません。もし、Landa社が自社で発売しないとすると、今回drupaで示されたタッチスクリーンを使ったインターフェイスや曲線を効果的に使ったデザインなどの「未来」が実現されないかもしれません。
私が会場を6日間歩き回った印象では、Landa社だけが、これまでの延長線上にない「デジタル印刷機の未来」を来場者に示していました。この未来を誰が(どのメーカーが)どの様に実現するのか、引き続き注目して行きたいと思います。
なお、以下の写真はLanda社ブースに展示されていた印刷サンプルです。この写真でもスジがお分かりいただけるかと思います。