印刷物をもっと「つくる」「使う」「残す」ことを支援する、ブライター・レイターのブログです。

2012年10月11日木曜日

TOKYO PACK レビュー(3):紙器パッケージの動向

今年5月に開催された drupa 2012 では数多くのB2デジタル印刷機が発表されましたが、その多くが「紙器パッケージ印刷市場」をターゲットにしています。今回の TOKYO PACK において、国内紙器パッケージ印刷市場におけるB2デジタル印刷機のビジネス機会を探ることも取材目的のひとつでした。

会場では、様々な方にデジタル印刷機の紙器パッケージ印刷分野での活用状況についてお伺いしたのですが、国内では「広幅インクジェット機でサンプルを制作している」という使われ方が中心で、プロダクション機を使って本格的に生産しているという例を聞くことはできませんでした。

ただ、この分野におけるデジタル印刷機導入・活用の可能性について指摘される方は少なくありませんでした。例えば、ラベル印刷でもご紹介した「生産者直売」「個人・小規模企業による輸入したもののネット販売」といった小ロットニーズに対応するため「検討している」というご意見がありました。既存市場の置き換えというよりも、新たな発注者の登場が紙器パッケージ印刷市場におけるデジタル印刷機導入・活用を牽引するのかもしれません。

ところで、今回の TOKYO PACK では、紙器パッケージの存在感はそれほど大きく感じませんでした。その背景としては、以下の様なものが挙げられると思います:
  • 簡易包装の広まり:
    • 環境負荷低減のため、また経費削減のため
    • 併せて、ラベルの表現力も向上している。
  • ダンボールを使ったパッケージの表現力拡大:
こうした状況の中、紙器パッケージは以下の様な「高機能化」の取組みの中で紹介されたケースが目に付きました:
  • バリアフリーを実現するユニバーサルデザイン(UD)への取組み
  • 内容物の利用にあわせて箱の大きさを小さくできる、サイズの可変性への取組み
  • 薬品などの偽造防止への取組み、など
「高機能化」はデジタル印刷のみが実現できるものではありませんが、先に挙げた「新しい発注者の小ロットニーズ」を取り込むためには有効な要素かもしれません。つまり、新しい発注者に対して設計・デザインの段階でこうした機能性を付加する提案をすることが、デジタル印刷の紙器パッケージ分野での拡大に貢献する可能性はありそうです。ただ、まずは「小ロットニーズ」の掘り起こしが必要かと思われます。

もちろん、紙器パッケージデザインのパーソナライズというデジタル印刷ならではのアプリケーションを提供することも、大きな事業機会になると考えられます。会場におけるHP社によるプレゼンテーションの中にも、ティッシュの箱をパーソナライズするという事例がありました。

紙器パッケージの分野でデジタル印刷が存在感を高めるためには、新しい発注者による小ロットニーズやパーソナライズニーズの取り込みという新しい市場の開拓が必要になりそうです。そのビジネスの形は、『B2 SoHoなど小規模企業』型(小ロットニーズ向け)あるいは『B2B2C』型(パーソナライズニーズ向け)が中心になると思います。

印刷会社にとってそうした市場の開拓は少々タフな取組みになるかも知れませんが、その市場は非常に大きくとても魅力的だと考えます。是非、挑戦してみてください!もし、お手伝いが必要な場合には、お気軽にお声がけください (^ ^)