印刷通販徹底比較というサイトに「世界の印刷通販」という記事を掲載していただきました。それを記念して(笑)、今回は印刷通販とWeb to Print(W2P)の違いを明らかにしたいと思います。さて、1番大きなものとして、それらの構造の違いが挙げられます:
- 印刷通販:「印刷のアマチュア」による「印刷のプロ」向けサービス
- W2P:「印刷のプロ」による「印刷のアマチュア」向けサービス
皆さんご存知のように、グラフィックやプリントパックはもともと製版サービスを提供していました。Vistaprintは学生が立ち上げたベンチャー企業で、英国の印刷通販会社mooはデザイナーが立ち上げた企業です。印刷通販会社と呼んで良いのか分かりませんが、PPO推進協議会の中心メンバーである電通オンデマンドグラフィックや、Yahoo!が出資するラクスルも印刷業界以外からの参入組になります。
印刷会社から転身したところでも、ウエーブは1996年に新規に印刷業務・1998年に印刷通販を開始、イタリアの印刷通販会社Pixartprinting社は1994年創業・2000年に印刷通販をスタート、と比較的歴史の浅い企業が目に付きます。このように、印刷通販市場は「印刷のアマチュア」によって立ち上げられ、拡大されています。
印刷通販サービス、利用者は「印刷のプロ」が中心です。正確な数字は分かりませんが、国内印刷通販会社の顧客の多くは印刷会社だと言われています。Pixartprinting社(イタリア)では、その顧客の90%程度は印刷会社など商業印刷のプロです。プロが顧客の中心になるのは、印刷通販では印刷用完全データでの入稿が必要になるためです。
これに対して、W2Pは以前から印刷サービスを提供してきた印刷会社や企業内印刷部門(インプラント)など、「印刷のプロ」による提供が中心です。先日視察に行ってきたPRINT13でも、さまざまな企業内印刷部門向けのW2Pソリューションが紹介されていました。W2Pを利用者でみると、総務担当者だったり店舗のスタッフだったり営業担当者だったり、「印刷のアマチュア」が中心となっています。
印刷通販とW2Pの構造の違いは、「利用者が欲しいもの」や「価格設定の際に重視されること」における違いにもつながっています。また、なぜだか利用されている地域にも違いがあります。日本と欧州の印刷会社では、W2Pの利用があまり広まっていない一方、印刷通販の利用は拡大しています。これに対して、米国印刷会社の間では「W2Pは広く利用、印刷通販市場の利用は少なめ」となっています。
その理由については明らかではありませんが、日・欧の印刷市場では価格競争力が、米国市場では費用対効果・成果向上力がそれぞれ重視される傾向が強いのかもしれません。ただ、ひとつ言えるのは、日・欧と米国では異なる方向性の印刷サービスが提供・活用されているということです。印刷通販とW2Pは英語では同じ「Web to Print」ですが、今回分析したようにそのサービスモデルは大きく異なります。そのため、これらに優劣をつけるのは意味がないと思います。
長期利益を実現するために「違いをつくって、つなげる」ことを目指す印刷会社にとって、W2P型サービスモデルを構築することは非常に有効だと考えます。何せ、「印刷のプロ」が提供するのにぴったりなモデルなのですから♪ その企画・実現に当たってお手伝いが必要な方は、お気軽にお声がけください (^ ^)