印刷物をもっと「つくる」「使う」「残す」ことを支援する、ブライター・レイターのブログです。

2015年4月8日水曜日

海外の印刷会社ご訪問:米国・サンフランシスコ編

海外出張の度に現地の個性的な印刷会社を訪問している私ですが、今回の米国・サンフランシスコ出張でも The Aesthetic Union という素敵な印刷会社さんをご訪問させていただきました。The Aesthetic Union は2013年12月設立という新しい印刷会社で、その分、夢や希望、情熱が溢れています。

この会社、女性オーナーが1台の壊れた活版印刷機を購入したところから始まりました。全く活版印刷機の知識のないオーナーが手探りで少しずつ修理し、汚れを落とし、実際に生産できるようにしました。その後活版印刷機をもう1台と断裁機を導入し、現在の体制を作り上げました。

この印刷会社、活版印刷機は持っていても活字は持っていません。理由は簡単、「活字を置いておくスペースがないから」。その代わり、樹脂板や木版(!)を使って刷っています。特に、木版は手作業の感じが残るためお気に入りだそうです。

「手作業感を活かす」という方針があるせいか、印刷物も1枚1枚出来上がりが違っています。日本の印刷品質基準からいえば、事故と判断されるレベルです。しかし、The Aesthetic Union とその顧客は「それが良い」と評価しています。

これは、サンフランシスコという場所が関係しています。郊外にシリコンバレーという世界最高のハイテク企業集積地帯があることから、サンフランシスコのデジタル化は日本よりも進んでいます。地元のお店では大体無料でWiFiが使えますし、私が泊まったホテルでは、フロントのスタッフが「We love Digital」というバッジを胸に付けていました。

こうした動きに対して、手作業とか手作りの良さを伝えるために、The Aesthetic Union はサンフランシスコにあえて工場兼店舗を構え、毎週土曜日には参加者が自分でカードを作るワークショップを開催しています。

そういえば、最近日本に上陸したブルーボトルコーヒーや、現地ではブルーボトルコーヒー以上に混んでいたサイトグラスコーヒーといった、注文を受けてから一杯づつ入れるタイプのコーヒー屋さんも、サンフランシスコやその郊外が発祥の地だったりします。これらも、ハイテクへの対抗意識から生まれたのかもしれません。

ところで、手作業感をウリにしているThe Aesthetic Union ですが、販売している商品は「小ロットの高級品」だったりします。活版印刷なのでデザインによって値段が大きく変わりますが、単色の比較的シンプルなデザインの名刺の価格は、350枚でおよそ300ドル(約36,000円)だそうです。

他社製品の価格ではなく、自分たちがやっていることの価値をもとに価格を設定するなんてカッコ良すぎです。この価格でも順調に仕事は集まっているようで、私が訪問した時にも古いハイデルベルグ社製の活版印刷機は大活躍していました。

これは私の推定ですが、日本の印刷会社で、デジタル印刷機を The Aesthetic Union の活版印刷機と同じくらいの稼働率で回しているところはそれほど多くないかもしれません。しかも、商材の販売価格は10倍程度。印刷ビジネスの観点から見ても、かなりすごい会社さんです。

世界には、本当に面白い印刷会社がたくさんありますね。こういう企業に「スゴイですね!」「面白いですね!」といわれるように、日本の印刷会社さんもどんどんイノベーションを進めましょう!その際には、ぜひお手伝いさせてください (^ ^)

2015年4月2日木曜日

MarTech Conference 2015 Day 2:MarTech分野のホットトピック編

MarTech 2015 2日目は、このイベントの主催者 Scott Brinker氏こちらのMarTech関連ブログをマイクロソフトが買収したという、スコット氏とマイクロソフトが共同で出したプレスリリースの紹介から始まりました。

しかし、これはエイプリルフールの嘘。さすがアメリカ、忙しいのにこういうことにも真剣に取り組むのですね(笑)。ただ、これまでMarTech分野はベンチャー企業が牽引してきたのですが、オラクルやセールスフォース、アドビなど大手企業がベンチャー企業の買収を通じて存在感を高めているので、本当だと思った方も結構いらっしゃったようです。

さて、昨日はあまりMarTech Conferenceの内容と関係のないお話でしたので、今回は2日間のセミナーと展示会での取材を通じて見つけた、MarTech分野のホットトピック(と個人的に面白かったトピック)をご紹介したいと思います:

  • MarTechの効果を最大化するために考慮すべきこと:
    • Vision, strategy(ビジョン、戦略)
    • Experience design(顧客経験のデザイン)
    • People/ Organization/ Leadership(人材/ 組織/ リーダーシップ)
    • Listenning(顧客の声に耳を傾けること)
    • Ecosystem(エコシステム)
    • Privacy friendly(個人情報に配慮した)、など
  • マーケティングソリューション:
    • Marketing Automation(マーケティングの自動化):
      • Visual Marketing Automation(写真や動画を使ったマーケティングの自動化)
      • Retention Automation(既存顧客向けマーケティングの自動化)
      • Persuasion Automation(説得力のある文章の自動的な生成)、など
    • Prediction(予測)
    • Lead generation(見込み客の洗い出し)
    • Mass-Personalization(大量のパーソナライゼーション)、など
  • ソリューションを実現する最新テクノロジー:
    • Artificial Intelligence(人工知能)
    • Machine Learning(機械学習)、など
  • これからのMarTech:
    • AdTech/ MarTech/ MadTech (Mad = Marketing + Ad)
    • MarTech企業のあるべきビジネスモデル
    • マーケティング予算に占めるMarTechの比率予測、など

こうやって書き並べてみると、本当に幅広いトピックがカバーされたことが分かります。どおりで、理解しきれなかったことが多かった訳です(笑)

では、これらは日本の広告主や印刷会社にとってどういう意味を持つのでしょうか。また、MarTechを取り入れて大きな成果を出すためには、どうすれば良いのでしょうか。これらについてはまだ頭の中が整理されていないので、飛行機の中などでじっくり考えたいと思います。

上記のトピック、あるいはその他MarTechについてご興味のある方は、お気軽にお声がけください (^ ^) 一緒に新しいマーケティングの世界を切り開きましょう!

2015年4月1日水曜日

MarTech Conference 2015 Day 1:カルチャーショックを受けました編

2015年3月31日・4月1日の2日間、米国・サンフランシスコでマーケティングテクノロジーのイベントMarTech Conference 2015が開催されています。MarTechとは、本日(Day 1:初日)の講演内容によれば、「最新のテクノロジーとマーケティングの両方を理解した上で使いこなすこと」「CIOとCMOの間をつなぐことが役割・責任」といった感じで定義されるようです。

私はマーケティングを専門としており、日本でネットが普及した2000年〜2007年にエリクソン・ジャパンやエキサイトといった企業で働いていて、印刷以外にもゲームやモバイルインターネット関連の海外の展示会やイベントに参加したことがあるのですが、今回のMarTechではこれまで感じたことのないカルチャーショックを受けています。例えば、以下のようなことです:

  • マーケティングとテクノロジーの両方を理解した上で使いこなせる人達が、こんなにたくさん(主催者発表で今回の参加者は1000人以上)いること。
  • 人工知能や機械学習といった最新のテクノロジーが、企業規模の大小に関わらず普通にマーケティングで活用されていること。
  • 来場者・出展社とも、普通に中長期的な視点からの「あるべき姿」とか「ビジョン」を持っていて、その実現に向けた取り組みを進めていること(M&Aを含む)。
  • モノすごいアイデアや技術などを持つ起業家やエンジェル(投資家)に加えて、MarTechを積極的に導入・活用している企業のご担当者と普通に話ができること、など

一言でいうと、「普通のレベルが高すぎる」という感じでしょうか(笑)。でも、こんなに高い「普通」のレベルに触れられるイベントはなかなか無いので、明日(Day 2)も存分に楽しんできます (^ ^)