さて、全国の中小企業団体中央会は、各地の情報連絡員報告をもとにした中小企業動向を発表しています。今回は、東京都と千葉県の中小企業団体中央会の情報をもとに、2016年1月以降の中小印刷会社の動向をまとめます。一体、どんな1年だったのでしょう(注:現時点では8月までの情報しか発表されていません):
- 2016年1月:
- 東京都:組合員の間に業績の良し悪しの二極化が進んでいる。また、都心部では再開発等による立ち退きで廃業する組合員が見られる。
- 千葉県:1月の県内組合員受注売上高は年末年始休業による稼働日の減少に加え、景況感から来る消費マインドの冷え込み等の影響により、印刷需要は芳しくなかったようです。このような状況下、未だデフレが完全に解消できていません。大企業を中心に昇給や冬季賞与の増額が行われ、一部では消費マインドが上向いていますが、市民全体が実感する程の実質賃金上昇にはまだまだ時間が掛かりそうです。
- 2016年2月:
- 東京都:依然として厳しい状況が続いているが、技術対応力、企画提案力を備えた企業は売上を伸ばしている。
- 千葉県:2月の県内組合員受注売上高は、景況感から来る消費マインドの冷え込み等の影響により、全体としては芳しくなかったようです。但し、全社が悪化しているわけでは無く、中には好調な企業もあります。様々な要素でパイの奪い合いが起きてきていますので、その結果として企業の業績に大きく格差がついてきています。
- 2016年3月:
- 千葉県:3月半ば迄の県内組合員受注売上高は、先行き不安な景況感から来る消費マインドの冷え込み等の影響により、全体としては芳しくなかったようです。但し、中には年度末需要を受注し好調な企業もあります。様々な要素でパイの奪い合いが一層激しくなって来ていますので、またデフレになっています。その結果として、企業の業績に大きく格差がついてきていますので、全体の景況感改善は未だ先です。
- 2016年4月:
- 千葉県:4月の県内組合員受注売上は、全体として悪かったようです。ここ数年の現象として、旧年度予算の受注品は何が何でも3月末までに納品するよう求められます。その結果、各組合員で仕事が溢れかえる状況が見受けられます。その反動で新年度は全く稼働しない状況が垣間見えますので、印刷資材はとても動きが鈍く、用紙はコピー用紙の売上でほぼ前月に近い売り上げを確保している状況です。
- 2016年5月:
- 東京都:当組合で実施している売上動向調査(28 年 1 月~ 3 月)がまとまった。1 ~ 3 月の売上は 103 と前年を上回ったが、4~6月の予測は前年比 98 と先行きの不透明感が拭えない結果となった。
- 千葉県:5月の県内組合員受注売上は、ほぼ4月の横ばいの数字で一向に景気が改善していない模様です。来日外国人によるインバウンド効果も一時期の勢いが無くなり、国民の消費もデフレの状態が引き続き継続しています。政府も補正予算を組み景気浮揚を目指していますが、将来の社会保障や国の債務等の不安が払しょくできません。これらの結果として消費が上向かず、相変わらず激しい価格競争中。
- 2016年6月:
- 東京都:従業員の採用に苦慮する組合員が多い。
- 2017年7月:
- 千葉県:ペーパーレス化が徐々に侵食している。紙の出荷量が減っている。しかし、紙メーカーは値上げの効果で増収増益。地方の零細印刷会社への用紙デリバリー・サービスがどんどん縮小している。円高の影響で用紙の価格は下がるはずだが、値下げの動きは無い。
- 2016年8月:
- 東京都:業績の良い企業とそうでない企業で二極化している。
- 千葉県:先行きの暗さは変わらない。紙の出荷量が減っている。しかし、紙メーカーは値上げの効果で増収増益。
東京都・千葉県の両方に共通するトレンドとして以下のような点が挙げられそうです:
- 全体として市場環境は厳しい。先行きも不透明:
- 来日外国人によるインバウンド効果も一時期の勢いが無くなり(千葉県・5月)
- しかし、中には業績の良い企業もあり、二極化の傾向あり:
- 技術対応力、企画提案力を備えた企業は売上を伸ばしている(東京都・2月)
こうした状況は、他道府県と比べてどうなのでしょう?また、秋以降のトレンドはどうなっているのでしょうか。他地域の動向も確認し、また秋以降の業界動向も引き続きウォッチしたいと思います。
そういえば、2016年は5月末〜6月初旬にかけて、国際印刷機材展 drupa2016 が開催されました。日本からもたくさんの印刷業界関係者が視察し、また終了後の報告会にもたくさんの方がご参加されたと思います。ここで得た情報から、たくさんの厳しい現状を打破するアイデアが浮かんでいれば良いのですが(注:写真はdrupa2016の会場風景です)。
なお、東京都と千葉県の印刷業以外の中小企業動向については、以下のサイトをご確認ください: