このポスターはサイケデリックな色でプリントされた写真をもとに作られていますが、その写真はもともと白黒フィルムで撮影されていました。では、パソコンもない時代にどうやって白黒フィルムからカラフルな紙焼きを作ったのでしょう?
アヴェドンはまず使う写真を選び、その写真の白黒ポジフィルムを作りました。続いて、その白黒ポジフィルムとカラーフイルターなどを組み合わせてカラーポジフィルムを作りました。この段階では、白黒写真をカラーフィルター越しに見ているような状態です。普通のカラー写真とは異なる面白い効果が出ていますが、まだまだサイケデリックさが足りません(笑)。
次に、アヴェドンはカラーポジフィルムのソラリゼーションを行いました。露光の際には、さまざまな色の光を使って実験しました。また、メガネの部分にも白黒とカラー2枚のネガを少しズラして重ねる(版ズレが起こったような状態)という工夫をしています。この段階でかなりサイケデリック度は高まっています。
最後に、ダイトランスファーという手法で紙焼きを作りました。その際、サイケデリックな効果をさらに高めるために、ラボのプリント担当者は特別につくった染料を開発・使用しました。アヴェドンという稀代の写真家と優秀なラボの職人が本気で創った写真をもとにしたポスターが、素晴らしくない訳はありません。
ところで、このポスターはアメリカ・イギリス・ドイツ・オーストリア・スイス・日本で販売されました。国ごとにサイズもまちまちだったりしますし、また当時は大きなポスターを大量に輸出したり輸入したりするのも大変だったでしょうから、各国で印刷されたと考えられます。その場合、それぞれのポスターごとに違った味わいがありそうです。ぜひ一度、各国版を一堂に集めてそれぞれの味をじっくり楽しんでみたいものです (^ ^)