- 長期利益を実現する。
- 違いをつくって、つなげる。
- 需要とブランドを創造する。
- 『顧客の顧客』からスタートする。
これらの新しい基本方針への転換を実現するためには、全社員を巻き込んで以下のような取組みを進めることが求められます:
- 積極的に情報発信する。
- 表現力とSTP力を強化する。
- 顧客の目的・成果を共有する。
- 基本方針との整合性を確認する。
積極的に情報を発信する:
現在、通常の営業活動以外での情報発信に力を入れている印刷会社は、それほど多くないように思います。しかし、積極的に情報を発信することは、自社そして自社サービスをより広く・深く知っていただくことにつながります。また、その反応を通じて自社の違い(強み)を把握したり、顧客(潜在顧客を含む)や『顧客の顧客』についての理解を深めたりすることなども可能になります。
情報発信の機会としては、以下のようにさまざまなものが考えられます。こうしてみると、情報発信については多くの印刷会社で改善の余地がありそうです。これらのメディアを存分に活用しているところは、まだ少なそうですから:
- Web上での情報発信:自社ホームページ、ブログ、SNS、など
- リアルでの情報発信:
- 印刷物を活用:チラシ、DM、カタログ、など展示会への出展:
- マーケティング関連・顧客の業界向けのイベント、など
- 自社イベントの開催:自社サービス説明会、工場見学、オープンハウス、など
- マスメディアへの露出:テレビ、新聞、雑誌、ラジオ、など
表現力とSTP力を強化する:
情報発信の効果を高めるためには、表現力とSTP力を強化することも必要です。皆さんもご存知の通り、印刷物の効果を高めるためには、プリプレス・プレス・ポストプレスというプロセス全体の強化を通じて表現力を向上することが求められます。
このうち、プリプレス(企画やデザインなど)のスキルは、Webなど印刷物以外のメディアでの表現力強化にも使えそうです。こちらの記事でもご紹介したように、WebやアプリにおけるUI/UX向上に、印刷業界で培われてきたプリプレスのスキルを役立てることができるためです。
しかし、残念なことに、多くの印刷会社ではDTPの導入によってプリプレスのスキルが顧みられなくなり、プレスやポストプレスの分野でもスキルレス化が進んでいます。実は、こうした状況に直面していることが、表現力強化
= 差別化という図式につながります。自社内でなくなりつつあるスキルを取り戻すこと、他社との協業を通じて自社に足りないスキルを取り込むこと。表現力を強化するには、こうした取組みも重要になります。
STPというのは、Segmentation(セグメンテーション)・Targeting(ターゲティング)・Positioning(ポジショニング)という3つの言葉の頭文字をあわせたもので、「顧客層や違い(強み)を見える化する」ための考え方になります。STP力 =「顧客層や違い(強み)の見える化力」を強化することで、印刷会社はより的確に情報発信の対象や使うべきメッセージを選ぶことができ、効果を高めることができます。
STP力を強化するには、戦略の3Cと言われる顧客(Customer)・競合(Competitor)・自社(Company)について情報を収集し、図表を用いて分析するトレーニングが有効です。私が個人的に良く使うのは、こちらで使ったような2x2 マトリックスやこちらのような項目別対比表です。他にもさまざまな分析・結果の提示手法がありますので、いろいろ試して自社にあったものを見つけ、STP力をどんどん強化してください。
顧客の目的・成果を共有する:
顧客の目的・成果を共有することは、印刷会社が長期利益を実現するために重要なことです。これを通じて、印刷会社は顧客企業と深く継続的な関係を構築できるためです。そして、そうした関係作りは、印刷会社が顧客企業の成果増大に貢献できるノウハウを豊富に持つことを示すところから始まります。残念ながら、印刷会社がそのようなノウハウを持っていることを知らない印刷物発注企業は少なくないためです。
「顧客の成果増大に貢献できる豊富なノウハウ」を示すには、それをまとめた資料を作成・提示することが有効です。その資料にこれまでの実績に加えて、提供しているサービスの可能性や新しいコミュニケーションのアイデアなども盛り込むと、さらに魅力的になるかと思います。
この資料を作成することは、拙訳書「未来を破壊する」でジョー・ウェブ博士が示しているような、印刷会社の提供するものを「印刷物」から「コミュニケーションサービス」に進化させることにも役立ちそうです。この資料の作成を通じて、ぜひ顧客の目的・成果の共有への第一歩を踏み出してください。
基本方針との整合性を確認する:
情報発信や表現力・STP力の強化、顧客の目的・成果の共有といった取組みの方向性や成果と、基本方針との整合性を確認すること。これは、それぞれの取組みの成果や長期利益をより大きなものにします。また、これらの取組みは全社で進めるものであることから、社員全員の意識を揃えることにも役立ちます。
基本方針との整合性の確認に全社員を巻き込むためには、社員が評価や改善策についてコメントしやすい環境作りが求められます。また、得られた評価やコメントを広く社内で共有する仕組みも必要です。マネジメントが、社員からのコメントを活かした改善策を策定・実践することも重要です。これらは、社員も長期利益の実現に参加しているという当事者意識を高めることにもつながります。ぜひ、この「確認」という取組みも進めてください。
ところで、前回と今回の2回にわたってご紹介した基本方針や取組みは、印刷会社だけでなく、印刷会社の顧客企業の競争力強化にも有効です。全社員さらには顧客も巻き込みながら新しい基本方針に沿った取組みを進めることで、2014年は長期利益の実現に向けた大きな一歩を踏み出しましょう!