印刷物をもっと「つくる」「使う」「残す」ことを支援する、ブライター・レイターのブログです。

2016年3月31日木曜日

drupa2016に向けて:障害者差別解消法をチャンスに!

皆さんは「障害者差別解消法」をご存知でしょうか? 明日(2016年4月1日)から施行される法律で正式名称は「障害を理由とする差別の解消の促進に関する法律」、以下を目的としています。

  • 全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向け、障害を理由とする差別の解消を推進すること。(出所:内閣府

その対象となる事業者は「商業その他の事業を行う者で、個人事業者や対価を得ない無報酬の事業を行うもの、非営利事業を行う社会福祉法人や特定非営利活動法人も含まれる」という幅広いものとなっています。対象分野も「日常生活及び社会生活全般に係る分野」が広く対象となっています。つまり、印刷会社も印刷会社の顧客企業も、この法律の対象となっています。

では、印刷会社はどうすれば良いのでしょうか?
私も勉強を始めたばかりで、正直、その答えはまだ見つかけていません。ただ、「情報アクセシビリティ」はキーワードになりそうです。情報アクセシビリティは、JISでは以下のように定義されています:

  • 高齢者・障害者が、情報通信機器、ソフトウェア及び(これらによって実現される)サービスを支障なく操作又は利用できる機能(出所:情報通信研究機構「情報アクセシビリティJISとは」)

東京都は、情報アクセシビリティについてもう少し広い定義をしています。2016年2月に行った「東京都障害者差別解消法ハンドブック」についての意見募集の中で、「情報アクセシビリティ(印刷物、説明会、イベントなど)」と説明しています。これらから、情報アクセシビリティ向上には以下のようなさまざまな取り組みが含まれそうです:

  • Webのアクセシビリティ向上
  • 印刷物のアクセシビリティ向上
  • イベントのアクセシビリティ向上、など

「情報アクセシビリティ向上」は「情報発信強化」と対になる言葉として捉えることもできそうです。「情報発信強化」は情報を発信する側視点からの取り組み、「情報アクセシビリティ向上」は情報を取得・利用する側視点からの取り組み、といった感じで。こう考えると、情報アクセシビリティ向上は、「お客様を主語にする」という最近のマーケティングのトレンドとも相性が良さそうです。

ところで、Web広告研究会(私も会員です)は、3月8日に「企業Webサイトにおけるアクセシビリティ確保の現状とこれから」というセミナーを開催しました。このセミナーでは、視覚障害をお持ちの方が実際にどのようにWebを閲覧するのかというデモも行われました。このデモの様子はこちらの動画でご覧いただけますので、ぜひご確認ください。

このデモ、私はとても大きな衝撃を受けました。例えば、普段それほど意識していないHTMLの構造が、Webサイトの音声読み上げソフトを使っている方々にとっては非常に重要だと分かりまして。恥ずかしながら、以前、乱暴な構造のHTMLページを作ったこともありまして (^ ^;

やはり、当事者のお話をお伺いするのは大いに参考になりますね。印刷物やイベントのアクセシビリティ向上などを考える際には、視覚障害をお持ちの方などに直接ご意見をお伺いする機会を持つのも必要そうです。

そういえば、今年のグラミー賞で、スティーヴィー・ワンダーがアクセシビリティについて触れていました。点字で受賞者名が書かれたカードを示して「これ読めないでしょう?」と言った動画をご覧になった方もいらっしゃるかもしれません。その動画では、受賞者名を読み上げる前に、スティーヴィー・ワンダーは "we need to make every single thing acessible to every single person with a disability"(私たちは、障害を持つ全ての人がすべてのことにアクセスできるようにする必要がある) とコメントしていました。

この詳細は、AFB(全米盲人基金)のサイトに掲載されたこちらの記事(Stevie Wonder Calls for Accessibility at Last Night’s Grammys—Bravo, Stevie!)をご確認ください。

障害者差別解消法への対処を進めることで、印刷会社は自社の情報発信力/利用者側から見れば「情報アクセシビリティ」を一段と高めることができそうです。さらに、顧客企業の情報発信力/情報アクセシビリティ向上に貢献する機会も増やせそうです。高齢化という流れの中、2020年東京パラリンピックという追い風もありますし、このチャンスを活かすのはいかがでしょう?

今年の5月31日に開幕するdrupa2016は、ドイツなど海外における情報アクセシビリティについての情報を収集する絶好の機会でもあります。もしかしたら、印刷物のアクセシビリティを高める機材なども紹介されているかもしれません。今回のdrupaでは「情報アクセシビリティ向上」という切り口から情報を収集しても面白そうです (^ ^)

2016年3月29日火曜日

drupa2016に向けて:デジタル後加工機もパッケージ分野が注目!

drupa2016では、後加工機でもパッケージ市場向けが注目されることが見込まれます。パッケージつくりには加工が不可欠ですから。特に、小ロットやバリアブル(可変)を得意とするデジタル印刷向けの後加工機(デジタル後加工機)は要チェックです。

昨年9月に開催された国際印刷機材展 IGAS2015 で発表され、すでに発売されているパッケージ向けデジタル印刷後加工機(のいくつか)を「加工の種類」で分類したものが、下図になります。なお、これらの仕様など詳細につきましては各リンク先をご確認ください:


さて、これらに共通する特徴として、例えば以下のような点が挙げられます:

  • 紙器パッケージ向け(枚葉型)
  • ハイブリッド対応 = オフセット印刷物・デジタル印刷物の両方に対応
  • B1・B2サイズに対応

drupaでは、これらの特徴を備えたデジタル後加工機がたくさんのメーカから提案されることが見込まれます。さらに、以下のような機材が紹介されることも期待されます:

  • 軟包装向けデジタル後加工機
  • デジタル印刷にも対応したオフセット印刷向け後加工機:
    • 「デジタル印刷対応評価済み オフセット印刷向け後加工機」というか
    • B1・B2サイズ対応機を中心に
    • スキルレス対応も進化:
      • 職人さんでなくても品質の高い加工が可能に
  • ハイブリッド対応したパッケージ向けワークフローシステム、など

また、ニス加工・箔押し・抜き・筋入れ以外のデジタル後加工機も増えることを期待しています。個人的には、「小ロットが得意な合紙機」が発表されればと良いなと思っています。たくさんの色の薄い紙を貼り合わせた厚紙を使えば、切り口も魅力的な紙器ができるからです。

後加工機メーカーの皆さん、ご検討のほどよろしくお願いいたします!そして、開発の際にはぜひお声がけください (^ ^)

2016年3月25日金曜日

drupa2016に向けて:パッケージもデジタル印刷で

drupa2016では、「パッケージ印刷市場におけるデジタル印刷活用の提案」が大きな注目を集めることが期待されます。矢野経済研究所によれば、「パッケージ印刷市場は横ばいないし微増で推移する」ことが見込まれています。大きく減少している印刷市場の中では、とても貴重な存在です。

しかも、この分野ではデジタル印刷の利用があまり進んでいません。その理由として、例えば、以下のような点が挙げられます:

  • 対応用紙サイズが小さい。
  • 印刷品質がオフセットやグラビアなど既存の印刷方法と比べて十分ではない。
  • インクの安全性が十分に確認されていない、など

drupaでは、これらの課題を解決するパッケージ向けデジタル印刷機がさまざまな機材メーカーから提案されるでしょう。例えば、対応用紙サイズがB1・B2のデジタル印刷機を「用途 × 印刷方式」で分類したのが下図になります。この図には、drupaで実機の展示・デモがが行われる(と思われる)ものを中心に掲載しています。

なお、各デジタル印刷機の詳細は、リンク先の情報をご確認ください。その中に、上記の課題をどう解決しているのかといったことも書かれています:


drupa開催日が近付くに連れてこれら機材のより詳細な情報が発表されたり、他メーカーからもパッケージ市場向けデジタル印刷機が発表されると思います。私も、引き続きこの分野に注目していきたいと思います。

次回は、パッケージ向け後加工機の情報をご紹介します。パッケージ向けデジタル印刷機が広まらない理由のひとつに「対応する後加工機が限られている」というものもありますので、後加工機もあわせて注目していきます。
お楽しみに!

2016年3月22日火曜日

drupa2016に向けて:デジタル印刷活用の壁

前回は、市場で見られる3つのデジタル印刷活用パターンを分析しました。
3つのうち『小ロットジョブ』への活用は順調に進んでいますが、残り2つ(『印刷物のパーソナライズ』『コミュニケーションのパーソナライズ』)への活用はなかなか広まりません。その背景として、例えば、以下のような取り組みが進まないことが挙げられます:

  • ワークフロー全体のパーソナライズ対応:
    • データ制作から発送まで含めて
    • 事故を起こさない検査システムの活用、など
  • デジタル印刷らしい表現の開拓:
    • より説得力のあるパーソナライズされた表現:
      • 後加工も含めて
    • アクセシビリティに配慮した表現
    • デジタル印刷の色域を前提にした表現、など
  • 新しいコミュニケーションの理解と実践:
    • 新しいマーケティングの理解と実践:
      • デジタルマーケティングも含めて
    • コミュニケーションに関わるITシステムへの理解
    • 新しいコミュニケーションに関わる課題の把握・解決の実践、など
  • 周囲をどんどん巻き込むこと:
    • 顧客のサプライチェーンに関わる部署やパートナー企業:
      • 営業、販売チャネル、など
    • 顧客のマーケティングコミュニケーションに関わる部署:
      • 広報、宣伝、マーケティング、など
    • 顧客のIT部門
    • 顧客のその他ステークホルダー、など
  • 新しいサービスへの積極的な挑戦
  • 新しいマネタイズモデルの構築、など

求められる取り組みは非常に幅広いことから、実践にあたり「ハードルが高い」と感じる印刷会社は少なくないかもしれません。しかし、「自社コミュニケーションのバージョンアップ!」から始めると、それほどハードルは高くありません。例えば、以下のような取り組みから始めることをオススメします:

  • 御社印刷物のパーソナライズ/カスタマイズ:
    • カタログ、パンフレット、会社概要、名刺、など
    • そのためのワークフロー構築・運用も含めて
  • 周囲をどんどん巻き込むコミュニケーションの企画・実践:
    • 御社内のさまざまな部署を巻き込むコミュニケーション
    • 社外を巻き込むコミュニケーション:
      • 顧客、パートナー企業、その他ステークホルダー、など
    • そのために必要なメッセージづくり
    • そのために必要なメディア活用の企画・実践:
      • デジタル印刷物も含めて
      • オープンハウスなど、リアルの取り組みも含めて
  • 御社らしいデジタル印刷表現の確立:
    • 御社の特徴・強み・魅力などを伝える表現
    • 周囲が巻き込まれたくなる表現、など

自社の印刷物をパーソナライズ/カスタマイズすることで、印刷会社はデジタル印刷物の使い方と作り方についての理解を深めることができます。あわせて、周囲を巻き込むコミュニケーションを企画・実践することを通じて、(デジタルを含む)印刷物以外のコミュニケーションやコミュニケーション全体におけるデジタル印刷物活用の実績を作ることもできます。その際、「CRM × デジタル印刷」「デジタルマーケティング × デジタル印刷」といったことにも挑戦できます。

drupa2016では、デジタル印刷機を含むさまざまな最新印刷機材・資材が紹介されます。印刷会社にとって重要なのは、最新機材・資材を活用して売上・利益を伸ばすことです。会場では、ぜひ「自社コミュニケーションをバージョンアップにつながるデジタル印刷のツールや仕組み」という視点からも情報を収集・分析してください。それらも顧客のコミュニケーション力向上、そして御社のデジタル印刷成功につながりますから (^ ^)

次回は、drupaでも大きな話題になりそうなパッケージ向けデジタル印刷について分析したいと思います。お楽しみに!

2016年3月16日水曜日

drupa2016に向けて:デジタル印刷 3つの活用パターン

世界最大の印刷機材展 drupa2016 まで残り3ヶ月を切り、印刷関係者とお会いした際にdrupa が話題に上がることも増えてきました。このブログでも、drupaを意識した記事を増やしていきます!その1回目となる今回は、「デジタル印刷の活用パターン」について分析します。

drupa2016でもデジタル印刷は中心的な話題になると思われますが、デジタル印刷は現在市場でどのように使われているのでしょうか?私がいろいろお伺いしたり調べたりしたところ、デジタル印刷の活用パターンは大きく以下の3つに分けられます:

  • 『小ロットジョブ』への活用:
    • 既存オフセットジョブの置き換え
    • 個人やグループ、チームの印刷ニーズへの対応、など
  • 『印刷物のパーソナライズ』への活用:
    • DM
    • チラシやポスター、カタログ、パンフレットなどのパーソナライズ
    • 雑誌や新聞のパーソナライズ
    • パッケージのパーソナライズ、など
  • 『コミュニケーションのパーソナライズ』への活用:
    • CRM × パーソナライズ
    • デジタルマーケティング × デジタル印刷
    • IMC × デジタル印刷:
      • IMC:統合型マーケティングコミュニケーション

『小ロットジョブ』への活用については、コストや色を適切に管理できるツールやその活用ノウハウが整う中で広く使われるようになっています。このパターンの主なメリットとして「コスト削減」が挙げられます。おそらく、デジタル印刷の活用パターンで最も多いと思われます。

『印刷物のパーソナライズ』も、DMやチラシなど商業印刷物では広く使われていますし、新聞や雑誌でも少しづつですが利用が広まっています。パッケージの分野でも、お菓子やお酒などさまざまな商材で見かけるようになっています。これらは、結婚式やパーティなどのイベントで使われることが多いと思われます。

『コミュニケーションのパーソナライズ』とは、印刷物をお送りするタイミングや印刷物の表現などを受け手ひとりひとりに対してきめ細かく合わせることです。例えば、デジタルカメラを買い換える主なタイミングのひとつに「子供の運動会」があるそうです。ただ、運動会の開催日は学校によってさまざまです。これは、検討・購入のタイミングは人によってさまざまであることを示しています。こうした状況に、デジタル印刷も対応することが求められています。

このように、デジタル印刷が活躍できる場はどんどん増えています。しかし、それらの機会を実現するためには、特に『印刷物のパーソナライズ』や『コミュニケーションのパーソナライズ』という市場を拡大するためには、多くの課題を解決する必要があります。drupaでも、これらの課題を解決するためのソリューションが提案されることでしょう。

次回は、こうした課題を分析します。
お楽しみに!

2016年3月8日火曜日

Web担当者の関心事(2016年版)

Web広告研究会 のセミナーやフォーラムなどに参加していると、企業のWebご担当者(特に、広報・マーケティング部門のご担当者)の関心事は、非常に多岐にわたっていることが分かります。この1年間に私が参加したセミナーなどで触れられたトピックだけでも、例えば以下のようなものが挙げられます:

  • Webメディアでのブランディング
  • Webアクセシビリティ
  • 消費者のMobileシフトへの対応
  • 売上への貢献度向上:
    • Lead(見込み客)の質の向上
    • Lead 数の増大
  • MAの導入・活用:
    • MA:Marketing Automation
  • 動画広告の企画・実施・評価
  • IMCの企画・実施・評価:
    • IMC:統合型マーケティングコミュニケーション
  • IoTへの対応
  • データの利活用
  • 社内の部門間連携:
    • 広報/マーケティング/営業/IT部門、など
  • パートナー企業との連携:
    • 制作会社、広告代理店、など
  • Web担当者のスキル向上・人材育成、など

中には、IoTやMAのような最新テクノロジーについてのトピックもありますが、Webアクセシビリティのような印刷業界として比較的関わり易いものもあります。動画に力を入れる印刷会社にとっては、動画広告関係の議論は参加し易いかもしれません。

Webに関わるサービスの企画・提供というと、ハードルが高く感じる印刷会社も少なくないかと思います。しかし、実際には様々な入り口が見つかります。拙訳所「未来を創る」にも書かれているように「2020年までに成長事業を構築したい」皆さん、ぜひ2016年度はWebを絡めたサービスを通じてさらなる一歩を踏み出しましょう!
そのお手伝いが必要な際には、ぜひお声がけください (^ ^)

2016年3月1日火曜日

正しい価格破壊の仕掛け方・逃れ方

印刷業界に限らず、さまざまな市場で価格破壊が進んでいます。皆さんの中には、「次に価格破壊を仕掛けるのは自分だ!」とお考えの方もいらっしゃるかもしれません。そんなあなたにクイズです:

  • 下の図で、価格破壊を仕掛けるのに適したエリア、あるいは絶対仕掛けてはダメなエリアは、A・B・C・D のうちどれでしょう?


続いて、価格破壊に巻き込まれて困っているあなたへのクイズです:

  • 価格破壊から逃れるために注目すべきエリアは、A・B・C・D のうちどれでしょう?

ヒントは、両方の問題とも「利益を出すエリアを考えること」です。答えが分かった方は、私までご連絡ください!正解者には豪華(かも知れない(笑))景品をご用意しております。

ブライター・レイターでは、価格破壊から逃れたい方あるいは価格破壊を仕掛けたい方の戦略立案・実践のお手伝いもいたします。ご興味のある方は、お気軽にお声がけください (^ ^)