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2023年5月9日火曜日

この本知ってる? . . . イタリア未来派の展覧会カタログ "Parole in Liberta"

 "Parole in Liberta" は、1992年にイタリアで開催されたイタリア未来派の展覧会カタログです。たくさんの書籍や小冊子、新聞、カタログなどが図版も交えて紹介されています。何より、未来派らしい動きや音楽を感じることができるステキなデザインの本です(限定1000部)。


ほとんどのパートが黄色の厚手の紙に赤と黒で印刷されていますが、未来派の作家の写真が使われている部分には黒い紙が使われています。その写真は赤い枠で囲まれていてキャプションの文字も赤という、とてもカッコイイデザイン。全体を通して赤が映える、とてもイタリアらしさを感じるデザインです。


この本をさらに魅力的にしているのは、本を綴じるのに使われている2本のボルト。裏表紙側から六角ボルトが差し込まれていて、表紙側で六角ナットを使ってとめられています。本当に2本のボトルだけで綴じられていて、ボルトを外すとバラバラになります・・・


実は、この製本方法には元ネタがあります。イタリア未来派の中心人物の一人、フォルトゥーナ・デペーロ (Fortuna Depero) が1927年に出版した書籍 "Depero Futurista"(通称 The Bolted Book, ボルト本) です。

イタリアの詩人フィリッポ・トンマーゾ・マリネッティが未来派宣言を出した1909年は、後に自動車王と呼ばれるようになったヘンリー・フォードがT型フォードの大量生産を始めた年でもあります。チャップリンの映画「モダン・タイムス」は、1936年に公開されました。工具を使った製本は、こうした時代の空気を反映したものでもあります。

では、現在の空気を反映した製本とはどんなものでしょう?例えば、「AI(人工知能)」を使った製本とか。もちろん、AIで製本の加工精度が高まったり、ミス・ロスが減ったりすることでしょう。

さらに、AIのお陰でこれまで難しかった/できなかった製本ができるようになったりすることも期待したいです。例えば、朝顔や時計草のような蔓性の植物で製本しつつ、その花を咲かせることができるような技術が開発されたり。

機能性の高い製本ができるようになったりするのも良いですね。例えば、会話ができる製本。何世代にもわたって大切にされてきた本が、「あなたのおじいちゃん、このお話が大好きでお母さんに何度も読んでもらってたよ」「このページの落書きは、あなたのお母さんが描いたもの」と教えてくれたり。

まだまだ製本は進化の余地が色々ありそうで面白そうです。ぜひ、製本にも注目しながら本を楽しみましょう!


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