プリントマニアが愛する『プリント』には、印刷物だけでなく映画や写真のフィルムを「プリント」したものも含まれます。今回は、映画の35mmフィルムから作成したポジフィルム(ひとコマ)をご紹介します。
さて、日本を代表する映画監督河瀬直美氏は、1997年に「萌の朱雀」でカンヌ国際映画祭カメラ・ドール(新人監督賞)、そして10年後の2007年に「殯(もがり)の森」でグランプリ(審査員特別大賞)を受賞しました。その「殯の森」を制作した際、「ひとコマもがり」という取り組みを実施しました。
当時(2006年6月)の組画(くみえ)ホームページでは、「ひとコマもがり」について「最新作(筆者注:殯の森)を「ひとコマ」フィルム購入で応援するサポーター制度です。奈良を舞台にした河瀬直美の新作映画づくりに、ぜひご参加ください!」と紹介しています。今でいうところのクラウドファンディングみたいな取り組みです。その参加特典は以下の3点でした:
1)実際に撮影された映画の35mmポジフィルムを「一コマ」プレゼント(一口につきひとコマ)
2)奈良県下での特別試写会に無料ご招待
3)映画「殯の森」パンフレットにお名前を掲載
当時の振込用紙によれば、2006年6月29日に5口分(一口2,000円)を振り込んでいました。公開当時に見た「萌の朱雀」などに影響されて8mmカメラで映画を撮ったこともあって(しかも、うまくつくれなかったこともあって(笑))、迷わず参加しました。なお、後日送られてきた会報紙によれば、河瀬監督はその頃ロケハンを行なっていたそうです(クランクインは7月23日)。
参加特典その1「35mmポジフィルム」はカンヌでのグランプリ受賞後、公開前の特別試写会が開催されるタイミングで送られてきました。5口分だったので5コマだったのですが、全部が「森」でびっくりしました。それと同時に、なんとなく「河瀬監督らしいなぁ」とも思いました。
ただ、よく見ると5コマとも全部異なる「森」のポジフィルム。改めてネットに上がっている「ひとコマ」を調べてみても、全てが異なるイメージでした。どうやら、それぞれが1点モノのようです。また、人(俳優さん)が映っているコマもあるようです。とはいえ、映画をご覧になった方ならお分かりになると思いますが、「森」もメイン出演者のひとり(?)なので「森」のポジフィルムでも十分楽しいです。
この映画のパンフレットによれば、「ひとコマもがり」には約2,000人が参加されたようです。この「ひと口もがり」用にどのくらいの数のフィルムを用意したのか、フィルムを選んだポイントは何か、今でもお手元に残っているものはあるのかなど、河瀬監督にお会いする機会があったらいろいろ伺ってみたいです。
そうそう、パンフレットにも名前が載っていました。とても嬉しかったです。カンヌでグランプリを受賞した作品のパンフレットは、時代や国境を越えて広がり、残されると思いますし。ただ、特別試写会は会場が奈良県だけだったので、残念ながら参加できませんでした・・・
いやぁ、プリントって本当にいいものですね!