印刷物をもっと「つくる」「使う」「残す」ことを支援する、ブライター・レイターのブログです。

2017年10月17日火曜日

大塚商会 POINT2017レビュー


2017年10月12日・13日の2日間、東京・秋葉原UDXにて大塚商会の印刷関連業向けイベント『POINT2017』が開催されました。会場は「印刷工場」「営業・人事・総務・経理」「制作」「マテリアル」「コラボレーション」などのエリアに分けられ、たくさんのソリューションが提案されていました。その中で気になったものをいくつかご紹介します:
  • デジタル後加工機:
    • 製本機:PLOCKMATIC PBM350
      • デジタル印刷機とインラインでもオフラインでも連携させることができる、角背中綴じ機。会場では、RICOH Pro C9110 と並べて展示・デモが行われていた(ただし、オフラインでの製本デモ)。
    • 封入封緘機:pitney bowes Relay 7000 inserting system
    • 発送・受取業務ソリューション:pitney bowes SendPro P2000
      • インクジェットヘッドが設置されていて、消印に加えて開けたくなるようなメッセージもあわせてフルカラーで印刷できる。
      • 小包や書留などの重要書類は、スキャナーで受領を記録し受取人に到着を通知できる。
      • なお、これらの pitney bowes の機材はデザイン性が高いことから、「顧客を呼べる工場」「社員が気持ちよく働ける工場」などを目指す印刷会社は注目。
  • クラウド対応ワークフロー:
    • KODAK PRINERGY CLOUD
      • 今回紹介されていたのは、ファイルアーカイブ&バックアップサービス。今後は、PRINERGYの利用データをクラウド上に蓄積・分析・見える化し、さらなる業務効率向上などに活用できるようになることを期待。
  • 貼れるデジタル印刷機用基材:
    • ダイオーポスタルケミカル レーザーサテン:サテン繊維にカラーレーザープリンターで印刷できるタック紙。衣服に貼っても剥がれにくい。
    • パナック ゲルポリ、カベポリ:糊を使わない特殊粘着フィルム。広幅インクジェットプリンターで印刷可能。
  • その他:
    • グラボテック M40 Friendly:パソコンで作成したデータをそのまま箔押しできるコンピュータ箔押し機。
    • ガーメントプリンター RICOH Ri 100
      • コンパクトなインクジェット式卓上ガーメントプリンター(4色機, 幅40cm x 高さ50cm x 奥行き 70cm)。 11月中旬発売予定の未発売機で、価格は50万円程度となる予定(インク価格は不明)
    • TTDESIGN デジタルデザインサイネージ
      • デザインテンプレートが付いていて、簡単に配信用データを作ることができる。また、配信時間なども簡単に設定・管理できる。
    • Microsoft Surface Hub
      • Windowsが入ったホワイトボード。手書き入力ができたり、その絵をそのまま共有できたりする。テレビ会議のときに便利。
    • メディア・ユニバーサル・デザイン協会事務局 避難所設営シールセット
      • 災害時の避難所設営を簡単にできるセット。2016年4月の熊本地震の際に実際に利用された。
会場には、デジタル印刷と相性の良い後加工機や資材がたくさん提案されていたのが印象的でした。また、デジタルサイネージやデジタルホワイトボード(Surface Hub)みたいなデジタル機材や、人事・総務・経理向けソリューションといった通常印刷機材展では紹介されないようなものも並んでいて、大塚商会の特徴も伺うことができました。
来年のPOINT2018がどうなるのか楽しみです (^ ^)

PLOCKMATIC PBM350
pitney bowes SendPro P2000
RICOH Ri 100

2017年10月4日水曜日

Japan Pack 2017にみる包装機材・システムの最新トレンド

2017年10月3日〜6日、Japan Pack 2017(日本国際包装機材展)が開催されています(会場:東京ビッグサイト)。肉まんをつくる機械や野菜を包装する機械、AR(拡張現実感)で機械の状態を把握できるスマートグラス、人工知能までさまざまなものが展示されています。

初日(3日)に早速取材したところ、以下のような包装機材・システムの最新トレンドが見えてきました:

  • 包装機材・システムのスマート化/IoT化:
  • よりきめ細やかな対応の実現:
  • 印字用インクジェットプリンターへの注目度アップ:
    •  生産地や消費期限などを印字する「マーカー」「マーキングシステム」
    •  食品表示法改正への対応などが背景に
    • 生産性に加えて、インクでも差別化
    • よりキレイに文字が
    • 注目の展示(例):
  • その他:
    • 従業員に優しい現場を実現する機材も:
    • 安全柵不要の協働ロボット:
      • ファナック CR-35 iA(35kg可搬システム)
    • ARやホログラフィ技術を使ったハイテク機材:
      • イシダ スマートグラスで作業者支援, 触れずに操作 未来型ディスプレイ 
    • ロボットアームであれこれ:

他にも面白そうなものがいろいろあったのですが、1日の取材では回りきれませんでした (^ ^; 他に「注目の展示」を見つけた皆さん、ぜひ教えてください!

2017年5月19日金曜日

2020年以降に求められる印刷物(1)『顧客理解』に貢献する印刷物

印刷物は、広告主/印刷物発注企業のリアルでの情報提供やブランディングにおいて一定の役割を果たしています。では、企業の「顧客理解」(企業が顧客を理解すること) においては十分な役割を果たせているでしょうか。

デジタルネイティブの時代になって、Webの利用状況など企業が入手出来る顧客のデータは急速に増加しています。また、さまざまな情報源から得たデータを統合し、それを分析することもそれほど難しいことではありません。実際、顧客データを積極的に収集し、DMP(Data Management Platform)などのツールを使って膨大なデータをあれこれ分析している企業は増えています。

さて、企業はなぜデータを収集・分析しているのでしょう。例えば、「顧客への理解をもっと深めるため」にです。顧客を理解することは、コミュニケーションの効果・効率向上や、商品開発、価格設定といったマーケティング活動に大いに役立ちます。企業は、さまざまなデータをもとに顧客理解を深めているのです。

こうしたトレンドを踏まえると、2020年以降に求められる印刷物として、以下のような「企業にデータをフィードバックすることで顧客理解に貢献する印刷物」が考えられます:
  • 自動的にデータが取れる印刷物
  • アンケート調査などを通じてデータを取るサービスを組み合わせた印刷物、など
「顧客理解に貢献する印刷物」は、必ずしもWebと連携する必要はありません。ある飲料メーカーは、キャンペーンの応募ハガキをデータベースに取り込むことで顧客理解に役立てる取り組みを始めました。こうした「データベースへの取り込みサービスを組み合わせた印刷物」というパターンも考えられます。

もちろん、最新技術と組み合わせて自動的にデータが取れる印刷物も考えられます。例えば、Google I/O 2017の基調講演(2017年5月17日)で発表されたGoogle Lensを意識した検索を絡めて顧客のデータを取得・フィードバックする印刷物も、顧客理解に貢献できそうです。

印刷会社の皆さま、企業の顧客理解に貢献できる印刷物を開発・提供することで、2020年以降も大きく成長しましょう!
source: xda
source: xda
source: Android Central

2017年4月24日月曜日

ロックな印刷物:#ギタマガベーマガ表紙 コラボ 2017年5月号

個人的な話で恐縮ですが、最近何十年か振りにギターを手に入れました。「ジャカジャカかき鳴らす楽しさは昔と変わらないなぁ」と思いつつ、手首のかたさやリズム感のなさも昔と変わらないことにガッカリしています(笑)

あわせて、ギター雑誌も(同じく何十年か振りに)手に取るようになりました。皆さんもご存知の通り、バブル崩壊以降雑誌市場は縮小傾向にあります。ギター系を含む音楽雑誌でも休刊・廃刊となったものは少なくありません。書店の音楽雑誌コーナーも、昔に比べると随分と小さくなった気がします。

 そんな状況に抗うように、ギター・マガジンベース・マガジン(ともにリットー・ミュージック)が2017年5月号で「表紙コラボ」という面白い企画を行っています。両誌の表紙を並べると1枚の大きな写真になるというもので、ともにフェンダー特集号ということで実現したものだと思われます。ちなみに、この写真は岡田貴之さんという写真家さんが撮影されました。カッコイイですよね♪

本屋さんでこの2誌が並んでいたらとても目立ちそうです。音楽雑誌に特に興味のない人の目も引きそうです。また、どちらかを目当てに来たのに、ついつい両方買ってしまう人も出てきそうです。実際、TOKIEさんファンの私もこの作戦にまんまとはまり、両誌をセットで買いました(笑)

ただ、ウチの近所の本屋さんではこの「表紙コラボ」に気がついていないのか、残念ながら別々の場所に置かれていました・・・折角の良い企画を実売にもつなげるためには、本屋さんにも企画に気がついてもらう&しっかり活かしてもらう働きかけも必要そうです。

話題性の高さや店頭でのインパクトを意識した「表紙コラボ」は、これから増えていくかもしれません。今回は同じ出版社での企画でしたが、キャンペーンの規模によっては、出版社の枠を超えた「表紙コラボ」の可能性も考えられます。

一方で、「表紙の広告枠化」については慎重なところもありそうです。何せ、表紙は雑誌の顔ですから。ただ、こういう企画があるとお店に行く楽しみが増えるので、個人的には(時々で構いませんの)実施していただきたいです。

今年のゴールデンウィークはロックな印刷物についてのディープな情報を集めつつ、ギターの練習にも励みたいと思います!

追記:今年のゴールデンウィーク前半(2017年4月25日〜5月1日)、この写真を使ったフォトブースが西武渋谷店A館1階に設置されます。フェンダーのギターとメガネを扱うポップアップストアのプロモーション用で、B館5階には試演奏室も設置されるとのこと。フェンダー、攻めてて良いですね!

2017年4月14日金曜日

新サービス #ConnectedPrint(#コネクテッド・プリント)始めました!

ブライター・レイターは、2017年春より新サービス #ConnectedPrint(#コネクテッド・プリント)をスタートします。

#ConnectedPrint は、「Webとリアル」がつながる印刷物をプロデュースするサービスです。特に、以下のような課題をお持ちの広報・マーケティング・販売促進ご担当者さまを対象としています:
  • サービスや商品の認知度がなかなか高まらない。
  • 新しい見込顧客との出会いが少ない。
  • 見込顧客のナーチャリングが思うようにできていない。
  • 既存顧客との関係が深まらない。
  • 社内の一体感が高まらない, etc.

イベントやセミナー、パーティ、クラブ活動、企業ミュージアム、ショールームなどでのFace-to-Faceコミュニケーションは、こうした課題の解決に適しています。しかし、そのチャンスを活かしきれていない企業・団体は少なくありません。

#ConnectedPrint では、以下のような遊び心のある「Webとリアル」がつながる印刷物を通してFace-to-Faceコミュニケーションを活性化し、御社の課題を解決します:
  • #MyColorCard(#マイカラーカード)
  • #ConnectedBadge(#コネクテッド・バッジ)
  • #Logoサテンシール・#LogoTatooシール
  • #別注招待状・#別注お礼状・#別注お土産Box
  • #寄せ書きPoster・#寄せ書きWall
  • #500部新聞, etc.

詳細はこちらの #ConnectedPrint 公式サイトをご覧ください:
https://connectedprint.tokyo/

また、#ConnectedPrint 公式 Twitterアカウントも開設しました。こちらのフォローもお願いします:
@ConnectedPrint

Face-to-Faceコミュニケーションを通じて課題を解決したい皆さまからのご連絡、心よりお待ちしております。
#MyColorCard

2017年3月29日水曜日

ロックな印刷物:"Their Satanic Majesties Request" by The Rolling Stones

1967年末、ローリング・ストーンズはアルバム「サタニック・マジェスティーズ」(原題:Their Satanic Majesties Request)を発表しました。このアルバム、ジャケットにサイケデリックな時代の香りがぷんぷんする(笑)魅力的なレンチキュラー(3D印刷)が使われています(サイズ:およそ8インチ(20cm)角)。

おそらく、このアルバムはレンチキュラーがジャケットに使われた世界で最初のものだと思われます(注:きちんと調べていないので、間違っていたらごめんなさい)。ちなみに、メジャーな映画で最初にレンチキュラー製宣伝用ポスターが使われたのは、スタンリー・キューブリック監督「2001年宇宙の旅」(1968年公開)と言われています。

さて、「サタニック・マジェスティーズ」に使われた3D印刷物は、米国・ニューヨークのVari-Vue社(1953年設立)が印刷したものです。Vari-Vue社はレンチキュラー用のレンズや印刷方法を独自に開発し、ビルボード(大型看板)や大統領選のキャンペーン用バッジなどをレンチキュラーでつくったりしていました。

このアルバムは、ジャケットだけでなく収録曲も魅力的です。Apple社が1998年に発表したパソコン iMac のCMに使われた She's a Rainbow は、このアルバムの曲です。「ブルースじゃない(ストーンズらしくない)」という理由からストーンズファンの評価は必ずしも高くはありませんが、私はサイケデリックでカラフルだからという理由で大好きです(笑)。ぜひ一度、ステキなジャケットと一緒に曲も楽しんでください。サイケな世界にどっぷり浸れますよ♪

2017年3月24日金曜日

「実は今、輪転IJ機の導入を検討しています」

先日、あるメーカーの印刷物発注担当者であるHさんから、「実は今、フルカラー輪転インクジェット式デジタル印刷機(輪転IJ機)の導入を本気で検討しています」とのお話をお伺いしました。

Hさんは現在、マニュアルの印刷をご担当されています。それらは数台のトナー系デジタル印刷機で生産されており、印刷量は月間およそ300万〜400万カウント(1カウント = A3片面)、そのうちカラーは100万カウントほどです。記事末の写真は、現在カラーのマニュアルを印刷しているフルカラーデジタル印刷機の内部です。

Hさんは、数台のトナー系デジタル印刷機を集約、上流システム+輪転IJ機+製本機による自動化でこれらの仕事を行う事を前提に考えています。その効果として、まずは以下を見込んでいます。
  • コスト削減
  • 納期短縮
  • サービス品質向上
  • 自動化・スキルレス化が進んだスマート工場化、など


あわせて、以下の実現も目指しています:
  • もっと分かりやすい・使いやすいマニュアルの実現:
    • 「分かりやすい・使いやすいマニュアルが、お客さまがウチの製品を選ぶ理由のひとつになってくれると良いですね」(Hさん談)
    • 私(筆者)は、マニュアルをもっと分かりやすく・使いやすくすることは十分可能だと考えています。例えば、Hさんの会社で生産している機器の利用状況・稼働状況のデータを収集・蓄積・分析して、もっと分かりやすい・使いやすいマニュアルに活かすこと。これは「IoT x マニュアルづくり」という仕組みをつくることで実現できます。
  • マニュアル以外の印刷物の提供:
    • 既存の仕事(マニュアル印刷)を輪転IJ機で置き換え、さらにスマート工場化することで、印刷機の稼働時間にはかなりの余裕が出ることが見込まれます。余裕が出た時間でマニュアル以外の印刷物を生産・提供することを考えています。
    • 私は、この実現も十分に可能だと考えています。上記のような機器の利用状況・稼働状況のデータがあれば、既存顧客向けに機器をもっと効果的・効率的に活用するためのアドバイスを提供する資料も提供できますし、新規顧客開拓用の営業用資料にも活用できますから。

Hさんは今、ビジョンや情熱を共有でき、また一緒に本気でそのビジョンの実現・進化に取り組めるパートナーを絶賛募集中です。とても刺激的な取り組みですので、きっとたくさんの会社から素晴らしいご提案があるのでしょうね。

どのようなパートナーを選び、どんな仕組みを実際に構築するのか。また、その仕組みをどのように活用するのでしょうか。とても興味のあるトピックですので、これからの展開もこのブログでご紹介できればと思います。
Stay Tuned

2017年2月20日月曜日

ロックな印刷物:"Love Festival Poster" @ UFO Club

ロンドンで1967年の夏に花開いた "Summer of Love" は、まだ寒い頃から着々とエネルギーを蓄えていました。その苗床のひとつがUFOクラブです。

UFOは1966年12月に開店し1967年10月に閉店した短命のクラブですが、デビュー前のピンク・フロイドソフト・マシーンがライブ&ライトショーを行ったり、ロンドン滞在中のジミ・ヘンドリックスが演奏したという伝説があったりするスゴイところです。

UFOクラブはイベント告知用ポスターのデザインの良さでも群を抜いていて、この "Love Festival" のポスターはその代表的なもののひとつです。2017年2月10日と17日に行われたイベント告知用ポスターで、白地にシルクスクリーンでピンクと赤のインクで印刷された技術的にはシンプルなものです。

しかし、30インチ x 40インチ(約 75cm x 100cm)というサイズと、とてもポップなデザインで、寒くて暗い冬のロンドンの街を華やかに彩ったことは想像に難くありません。こんなポスターが貼られた街角を実際に歩いてみたかったです。もちろん、デビュー前のソフト・マシーンのライブも目の前で楽しみつつ (^ ^)

ところで、ピンク・フロイドのライトショーといえば、2014年にUFOクラブでのショーを再現したイベントがロンドンで開催されました。また、ピンク・フロイド展 @ ヴィクトリア&アルバート博物館(2017年5月13日〜2017年10月1日)でも、カスタムデザインされたレーザーライトショーが行われるようです。

デヴィッド・ボウイ大回顧展も日本に来ましたので、このピンク・フロイド展も同じように日本でも開催されることを期待しましょう!もちろん、その前にロンドンで見る機会があったら見逃さないようにしましょう♪

2017年2月9日木曜日

page2017レビュー(速報板)

2月8日〜10日、サンシャインシティ@東京・池袋で印刷メディアビジネスの総合イベント page2017が開催されています。私も初日(2月8日)に取材をしました。今回は速報版として、page2017のトレンドや見どころのポイントをご紹介します:

  • 注目のトレンド:
    • 生産の各工程(制作・工務・印刷・加工)のさらなる統合化:
      • 生産工程のさらなる自動化・省力化・スキルレス化の進展
      • 生産工程のさらなる柔軟性やきめ細かさの向上
      • 生産キャパシティのさらなる増加
    • 表現力のさらなる向上:
      • 表現でもWebと印刷の連携性向上
      • 印刷でも加工でも加飾
  • 注目の機材:
    • 後加工機
    • 検査機
    • ワークフロー
  • 独断と偏見(笑)での注目の展示:

それほど広い会場スペースではないのですが、じっくりお話をお伺いしながらの取材でしたので、まだ回れていないブースも多々あります・・・引き続き会場で取材して、また注目の展示などを見つけたらお伝えします。皆さんも、「これが面白い!」といった展示がありましたらぜひ教えてください。この記事が、2日目・3日目に会場に行かれる方々のご参考になれば幸いです (^ ^)

2017年2月7日火曜日

2021年以降の国際印刷機材展はどうなるの?

2020年までの動向は見えてきつつあるものの、2021年以降は不透明。これは、国内印刷市場ではなく、国際印刷機材展のお話です。4大国際印刷機材展は、ここしばらく以下のような周期で開催されていました:

  • 夏季オリンピック・パラリンピックイヤーにdrupa@ドイツ
  • その翌年に PRINT@米国
  • その翌年に IPEX@英国
  • その翌年に IGAS@日本

国際印刷機材展は、毎年異なる国で、各国/各地域やそのタイミングでの市場状況を反映した内容で開催されていました。確かに、印刷機などのハードウェアについては各機材展でそれほど違いはありませんでした。しかし、紹介されているソリューションやセミナーはそれぞれ独自性があって、私はそれぞれの機材展を視察するのを楽しみにしています。

しかし、今年(2017年)以降は少し様子が違います。IPEXとIGASが以下のように開催時期を早めたのです:

  • drupa2016@ドイツ・デュッセルドルフ(2016年5月31日〜6月10日)
  • PRINT17@米国・シカゴ(2017年9月10日〜14日)
  • IPEX2017@英国・バーミンガム(2017年10月31日〜11月3日)
  • IGAS2018@東京ビッグサイト(2018年7月26日〜31日)
  • drupa2020@ドイツ・デュッセルドルフ(2020年6月23日〜7月3日)

IPEXとIGASが時期を変更した背景には、drupaが「これからは開催周期を3年に変更し、次回は2019年に開催」と2015年2月に発表したことがあります。これを受けて、「IGASも3年周期に変更する」こと、あわせてJGASの開催をやめることが2015年3月に発表されました。また、2016年3月にIPEXが2017年の開催に関するリリースを出しました。

しかし、drupa2016期間中に「drupaはやはり4年周期で開催し、次回は2020年」との再度変更の発表がありました。IPEXは開催時期を再度変更する時間はなく、IGASも東京オリンピック・パラリンピックとの兼ね合いで、やはり変更は難しい状況です。その結果、2017年に2つの国際印刷機材展が開催される一方、2019年には1つも開催されないというスケジュールになりました。

では、2021年以降はどうなるのでしょう?2016年以前の周期に戻るのでしょうか。定期的・継続的に市場動向をウォッチし、またさまざまな市場の特徴を比較することを楽しみにしている私にとっては、それが望ましいです。しかし、印刷市場を巡る環境の変化は早く、国際印刷機材展の入場者数は減少傾向にあります。2021年以降は、これまでの延長線上で考えるのは難しいかもしれません。

皆さんは、2021年以降の国際印刷機材展はどうなるとお考えでしょうか?そもそも、印刷市場はどうなるでしょう。まだ少し先のことですが、頭の体操がてらいろいろ想像することをオススメします。きっと面白いことが見えてくると思います (^ ^)


2017年2月3日金曜日

ロックな印刷物:IT (International Times) #6, Paul McCartney Cover

今から50年前の1967年、4人のビートル(ビートルズのメンバー)のうち一番アバンギャルドだったのはポール・マッカートニーでした。他の3人がロンドン近郊に居を構えて世間と少し距離を置いている中、ポールはロンドンのど真ん中、アビーロードスタジオ近くに住み、アンダーグラウンドシーンの重要人物達と積極的に交流を深めていました。

その成果のひとつが、こちらの IT (International Times) 第6号(1967年1月発行)です。ITは1966年に創刊されたロンドンの(主にアンダーグラウンドの)イベントを紹介していた新聞です。ロンドンのぴあみたいなもので、Time Out よりも前に創刊されています。

ポールはITの発行者とも懇意にしていたのですが、ある日その人から「お金が無いんだけどどうしたら良いと思う?」と相談されました。まだITは創刊されたばかりで、印刷も編集部の片隅で編集者やデザイナーが自分たちで行っているような頃でした。

「僕のインタビュー記事を載せたらどう?そうすれば、レコード会社から広告も取れるようになるから」。こう答えたポールのインタビュー記事が掲載されたのがこの号でした。その後、1967年6月にビートルズが「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」を発売した時には、IT 14号にこのアルバムの全面広告が出ました。また、このアルバムの発売元 EMI は、その後ピンク・フロイドのデビューアルバム「夜明けの口笛吹き」の広告などもITに出稿しています。

このインタビューの数ヶ月前、ビートルズは武道館で伝説的なコンサートを開いています。そんなスーパースターが創刊したばかりのアングラ新聞/雑誌の広告を取るお手伝いをするなんて、ほとんど例がないと思います。少なくとも、日本では聞いたことがありません。でも、そんな奇跡のようなことが、当時のロンドンでは起こっていました。

スウィンギングロンドン時代の印刷物に魅力的なものが多いのは、こうしたステキな人間関係が背景にあったからかもしれませんね (^ ^)

2017年1月30日月曜日

ブライター・レイター流 page2017の歩き方

印刷メディアビジネスの総合イベント page2017 が2017年2月8日〜10日の3日間開催されます @東京・池袋 サンシャインシティ。drupa2016を受けた今回のpageでは、どのような機材が展示され、どのような提案が行われるか。私もとても楽しみにしています。

ところで、前回の記事(広告主の重点課題と課題解決の取り組みの現状(2016年))で紹介しましたように、広告主(印刷物発注企業)は「ブランド価値向上」「デジタルマーケティングの実践」「広告効果の測定・評価」などを課題として挙げています。また、その課題解決に向けて「ソーシャル化」「より良い顧客体験の提供」「Data Driven化」などの取り組みを進めています。

前回の記事にも書きましたが、印刷会社が成長事業をつくるためには、こうした広告主が抱える課題の解決にフォーカスしたサービスが必要です。また、そうした印刷サービスの提供にあたっては、以下のような取り込みを自社でも進めることが有効です。実践を通じて課題解決のノウハウを蓄積できるからです:
  • 自社・自社サービスのブランド力向上
  • 広告効果の測定・評価
  • 印刷サービスのソーシャル化
  • より良い顧客体験の提供
  • Data Drivenな印刷サービスの提供、など

出展企業の機材・資材や提案は、あなたの会社の(顧客の課題解決に役立つ)知見を深めることにどのように貢献するか?こんな観点から出展内容を評価すると、page2017会場で過ごす時間がさらに有意義なものになると思います。ぜひ、page2017を上手に活用して売上・利益増大を実現しましょう!

2017年1月29日日曜日

広告主の重点課題と課題解決の取り組みの現状(2016年)

国内有力広告主の団体日本アドバタイザーズ協会(JAA)が2016年4月に実施した調査によれば、「2016における広告主の重点課題」として取り組むべき上位5項目は以下となっています:
  1. 製品・サービスブランド価値向上
  2. 企業ブランド価値向上
  3. デジタルマーケティングの実践
  4. 広告予算・媒体間配分の最適化
  5. 広告効果の測定・検証
これに対して、多くの印刷会社が注力する「広告活動に付随するコストの削減や工程短縮化」を重点項目をとして挙げた広告主は、上位5項目と比べてかなり少ないという結果でした。印刷会社が売上・利益を伸ばすためには、上位5項目の課題解決に注目した印刷サービスの企画・提供がポイントになりそうです。

では、どんな印刷サービスを企画すれば良いのでしょう?例えば、上記の課題解決に向けて、企業のマーケティング担当者は以下のような取り組みを進めています:

  • ソーシャル化
  • より良い顧客体験(CX)の提供
  • Data Driven化(データの利活用)
  • リアルとウェブの統合化、など

これらを支援する印刷サービスを通じて、ぜひ成長事業をつくりましょう!

2017年1月24日火曜日

【受賞のご報告】独立メディア塾から優秀賞をいただきました!

独立メディア塾に投稿した拙文が、第3回優秀賞(2017年)をいただきました!独立メディア塾は、君和田正夫塾長(元テレビ朝日会長)と関口宏氏(タレント)が設立・運営しているWebメディアです。今回対象となったのは「りんなとコルタナとホロレンズ 日本マイクロソフトde:code2016より」という記事です。ぜひ、お読みください (^ ^)

今回の受賞を励みに益々精進してまいりますので、引き続きのご指導ご鞭撻何卒よろしくお願いいたします。

なお、他の第3回優秀賞受賞記事・レポートもこちらから読むことができます。どれも読み応え・見応え十分です。また、第1回第2回の受賞記事も刺激的な力作ばかりです。ぜひ、合わせてお読みください!

2017年1月20日金曜日

ロックな印刷物:John Lennon Psychedelic Poster by Richard Avedon

1960年代後半はポスターの魅力が大きく高まった時期です。このサイケデリックなジョン・レノンのポスターもこの時期に印刷・販売されました。アメリカのファッション写真家リチャード・アヴェドンが1967年8月に撮影した写真が使われたこのポスターは、アメリカだけで25万枚以上売れ、その成功を受けてヨーロッパや日本でも販売されました。

このポスターはサイケデリックな色でプリントされた写真をもとに作られていますが、その写真はもともと白黒フィルムで撮影されていました。では、パソコンもない時代にどうやって白黒フィルムからカラフルな紙焼きを作ったのでしょう?

アヴェドンはまず使う写真を選び、その写真の白黒ポジフィルムを作りました。続いて、その白黒ポジフィルムとカラーフイルターなどを組み合わせてカラーポジフィルムを作りました。この段階では、白黒写真をカラーフィルター越しに見ているような状態です。普通のカラー写真とは異なる面白い効果が出ていますが、まだまだサイケデリックさが足りません(笑)。

次に、アヴェドンはカラーポジフィルムのソラリゼーションを行いました。露光の際には、さまざまな色の光を使って実験しました。また、メガネの部分にも白黒とカラー2枚のネガを少しズラして重ねる(版ズレが起こったような状態)という工夫をしています。この段階でかなりサイケデリック度は高まっています。

最後に、ダイトランスファーという手法で紙焼きを作りました。その際、サイケデリックな効果をさらに高めるために、ラボのプリント担当者は特別につくった染料を開発・使用しました。アヴェドンという稀代の写真家と優秀なラボの職人が本気で創った写真をもとにしたポスターが、素晴らしくない訳はありません。

ところで、このポスターはアメリカ・イギリス・ドイツ・オーストリア・スイス・日本で販売されました。国ごとにサイズもまちまちだったりしますし、また当時は大きなポスターを大量に輸出したり輸入したりするのも大変だったでしょうから、各国で印刷されたと考えられます。その場合、それぞれのポスターごとに違った味わいがありそうです。ぜひ一度、各国版を一堂に集めてそれぞれの味をじっくり楽しんでみたいものです (^ ^)


2017年1月16日月曜日

株価と印刷市場の関係は?

皆さんもご存知の通り、2016年11月以降株価は大きく伸び、そのトレンドは今年の年初まで続いていました。では、こうした株式市場の活況は印刷市場にどのような影響を与えるのでしょうか。

これを分析するために、2002年〜2014年における以下データの推移を比較したグラフを作成しました(グラフを見やすくするために、2002年を100として指数化しています):


グラフを見ると、この間日経平均は大きく上下していることが分かります。2006年末には2002年末の2倍になりましたが、2008年末・2011年末には2002年末時点の水準にまで落ち込みました。その後、2012年以降は再び大きく伸び、2014年末には2006年末とほぼ同じ水準になっています。

これに対して、印刷市場はほぼ一本調子で縮小しており、2014年は2002年のおよそ7割の規模となっています。つまり、中長期的に見ると、株価と印刷市場規模には相関関係は無さそうです。もちろん、仕事の内容によっては株価との相関性が高い印刷会社もあるでしょう。また、年末時点ではなく年間平均株価を算出してより詳細に分析すれば、もう少し相関が高まるかもしれません。しかし、全体として見た場合には、相関性は低そうです。

売上・利益の増大を目指す印刷会社には、株価の変動に振り回されることなく、2017年も成長事業をつくる取り組みを希望と勇気を持って着実に進めることが必要不可欠です。デジタル時代の印刷物・印刷サービスを企画・提供して、楽しくて明るく前向きな2017年にしましょう!

2017年1月11日水曜日

ロックな印刷物:"Velvet Underground & Nico" アルバムジャケット

1960年代、アメリカでポップアートが大きく花開きました。その中心人物の一人だったアンディ・ウォーホルはこの時期に、「キャンベル・スープ」「マリリン」「エルヴィス」「フラワーズ」といった代表作を描き、「チェルシー・ガールズ」「エンパイア」「スクリーンテスト」といった映画も製作しました。

ウォーホルはまた、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのデビューアルバム「Velvet Underground & Nico」(1967年)のプロデュースも手掛けました。このアルバムジャケットには、ウォーホルのシルクスクリーン作品「バナナ」とウォーホルの名前スタンプが使われています。

最初に製作されたバージョンではこのバナナはシールになっていて(ちなみに、印刷はシルクスクリーン方式)、貼ったりはがしたりできます。そしてバナナシールをはがすと、その下からはピンク色の新鮮な果肉が現れる仕掛けになっています。しかし、すぐにこのシール式ジャケットは直接バナナを印刷する方式(つまり、シールではないタイプ)に変更されました。

ところで、このバナナシールを使ったジャケットを製作するにあたり、特別な機械が開発されたと言われています。一方、人が手作業で貼っていったという説もあります。私は「手作業説」支持派です。当時の技術では、そこまでの精度を持った加工機を開発するのは難しいと考えられるからです。むしろ、手作業の方が早くて精確にできるかと。

また、もし開発に成功していれば、費用回収のために引き続きさまざまなシール式ジャケットが製作されていても良さそうです。しかし残念なことに、こんな仕様のアルバムは当時他にはなさそうです。加工機の写真や情報も残っていないようですし。

さらに、このアルバムジャケットはゲートフォールド式だったりもします。シールが使われていることもあわせて、ロックバンドのデビューアルバムとしては異例に豪華な仕様です。異例といえば、表(おもて)面にバンド名やアルバムタイトル名の表記がない点もそうです(それらは裏表紙(雑誌的にいうと表4)に書かれています)。

デザイン優先のこのアルバムは、ジャケットの生産コストが嵩んだり、当初の売上がレコード会社の期待に届かなかったりと、短期的には(商業的には)成功しませんでした。ちなみに、発売日(1967年3月12日)から1969年2月14日の約2年間に売れた枚数は58,476枚でした。

ただ、長期的は極めて大きな成功を収めています。この「熟れすぎて一部が黒ずんだバナナ」はヴェルヴェッツのブランディングに重要な役割を果たしています。また、「Velvet Undergound & Nico」は発売以来一度も廃盤になったことがないそうです。もちろん、音楽としての質の高さが主な理由だと思いますが、ジャケットの魅力も無視できません(ロックの世界には「ジャケ買い」という言葉もありますし)。

「Velvet Underground & Nico」の発売50周年となる今年、ジョン・ケイルこのアルバムの全曲を演奏する記念ライブを英国・リバブールで行う計画を発表しています。ゲストを含め、どんなライブになるか楽しみに待ちましょう (^ ^)

2017年1月6日金曜日

drupa2020でデジタル後加工機に期待したいこと

オフセット印刷サービスでは通常、印刷と後加工は別の会社が担当します。しかし、デジタル印刷サービスでは、印刷会社が後加工もあわせて行うケースが大半です。そのため、デジタル印刷サービス向け後加工機は少ない人数でも動かすことができ、かつ職人でなくても品質を保てるよう、自動化・省力化・スキルレス化が進んでいます。

また、デジタル後加工機はデジタル印刷機とセットでの運用が想定されています。drupa2016でも、デジタル印刷機の進化に伴い以下のような動きが見られました:
  • B1サイズ用紙に対応したデジタル後加工機の発表
  • 産業用印刷物向けデジタル後加工機の拡充:
    • 産業用印刷物:パッケージ(紙器・軟包装)、シール、ラベル、など
  • デジタル印刷機との連携性のさらなる向上:
    • 特に、商業印刷市場向けや書籍・雑誌・新聞印刷市場向けなど
    • インライン・ニアラインともに

会場では、以下のような動向も見受けられました:
  • 型・版を使わないデジタル後加工機の増加:
    • レーザーカッター、デジタルニス加工機・箔押し機、など
    • 自動給紙や搬送機能付きで生産性向上も実現
  • 小ロット向け 型・版ありデジタル後加工機の提案:
    • スジ押し加工用
    • 樹脂やプラスチック製スジ押し用テープなどを使ってオンデマンドで型を作成
  • オフセット印刷物にデジタル後加工で加飾するデモ、など

こうしたトレンドを踏まえると、drupa2020では以下のようなデジタル後加工機が期待できそうです:
  • デジタル印刷機の柔軟性に対応できるデジタル後加工機:
    • 特に、パッケージ(紙器・軟包装)など産業用印刷物向け
    • 「型・版なし」「型・版あり」ともに
  • 印刷機の生産性とバランスが取れたデジタル後加工機:
    • 生産性が向上された「型・版なしデジタル後加工機」
  • 印刷機の品質とバランスが取れたデジタル後加工機:
    • UVオフセット印刷機と組み合わせて使える「型・版ありデジタル後加工機」
  • 印刷会社の所有する印刷機や仕事内容に合わせてセミオーダーできるデジタル後加工機、など

私は特に、小ロット対応力の高い「型・版ありデジタル後加工機」の進化に期待しています。印刷の分野では、UVオフセット機といった「小ロット対応力の高い版あり印刷機」が広く使われるようになっています。これと同じことが後加工の分野で起こることは十分に考えられると思いますが、いかがでしょう?

小ロット対応力の高い「型・版ありデジタル後加工機」が登場すれば、柔軟性重視型サービスに加えて品質重視型サービスを実現できることから、印刷会社が提供するサービスの多様性がさらに高まります。そうなれば、過度な価格競争からも脱却しやすくなります。

drupaなど印刷機材展では印刷機の進化に注目しがちですが、drupa2020では後加工機の進化にも注目しましょう!

ところで、添付の写真はdrupa2016のHPブースで紹介されていたSEI Laser社製のデジタル後加工機 PaperOne です。搬送機能付きのレーザーカッターで、プラスチック製テープ(英国 Man Mat社製)を使ったオンデマンドスジ押し機能も付いています。写真は、このスジ押し用の型を取り付けているところです(黄色い部分がスジ押し用プラスチック製テープです)。

2017年1月3日火曜日

ロックな印刷物:14 Hour Technicolor Dream Poster

今から50年前の1967年の夏は "Summer of Love" と呼ばれ、ロックにとって特別な季節でした。ビートルズは「愛こそはすべて(All You Need is Love)」を歌い、ローリング・ストーンズは(iMacのCMにも使われた)「She's a Rainbow」を発表しました。スウィンギング・ロンドン(Swinging London)は、サンフランシスコと並んでその中心でした。

1967年4月29日〜30日にロンドンで開催された "14 Hour Technicolor Dream" も、愛に満ちた夏を彩るイベントのひとつでした。シド・バレット在籍時のピンク・フロイドやオノヨーコ、ソフト・マシーンなどが演奏し、ジョン・レノンやジミ・ヘンドリックスも来場しました。

そのポスターも、とてもロックなものです。シルクスクリーンで印刷されたサイケデリックなポスターは、色使いやグラデーションの出方がすべて異なっています。そもそも、シルクスクリーンでグラデーションを出しているポスターは、おそらくこれが世界で最初のものです。

数年前「ユリシーズ」という音楽雑誌のためにこのポスターをデザイン・製作したマイク・マキナニー氏にインタビューしました。マキナニー氏によれば、このポスターは1,000枚くらい印刷されましたが、同じものは存在しません。ただ、意識的に異なるようにしていたというよりも、「ドラッグをキメながら刷っていたから、同じようにできる訳ないよね(笑)」とのことでした。

印刷は、全く同じものを大量に複製することを得意としています。しかし、バリエーションをつくることで、時代の空気を取り込んだりデザイナーの実験的な試みを表現したりすることもできます。しかも、その際には必ずしもデジタルの力を借りる必要はありません。印刷にはまだまだたくさんの可能性があります (^ ^)

ところで、さまざまな 14 Hour Technicolor Dream のポスターを集めて比べると楽しそうなのですが、2017年時点で残っているものはほとんどありません・・・マキナニー氏も、「テムズ川が溢れたことがあって、手元にあったポスターはその時すべてテムズ川に流されたんだよ」ととても残念そうにおっしゃっていました。ただ、Summer of Love 50周年の今年は、このポスターも含む展覧会がいろいろと開催されそうな気もします。機会をみつけて、このステキなポスターをぜひ見てみてください!